注目の米大統領選挙は11月6日投開票が行われ現職のバラク・オバマ氏が再選されたが、この選挙期間中、著名な伝道者ビリー・グラハム氏と息子のフランクリン氏が共和党のミット・ロムニー候補を支援していると受け取られた動きが波紋を呼んでいる。日本では〝異端〟とされ、ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)も〝カルト〟扱いしてきたモルモン教徒の候補者を、福音派を代表する伝道者がなぜ支持するのかとの疑問である。
 特に、来年フランクリン氏を招いて伝道大会を計画中の関係者らは戸惑いを隠せない。BGEAアジア地区ディレクターのチャド・ハモンド氏が説明に追われているが、背景には信仰と政治に関する日米の違いや誤解を避けようして取った行動が裏目に出た面もあるようだ。

 事の発端は10月11日、グラハム氏父子がロムニー氏の訪問を受け、「結婚に関する聖書の教えを支持し、生命の尊厳を保護し、信教の自由を守る候補に投票するように願う」と表明したこと。
 グラハム氏は共和党であれ民主党であれ、歴代の大統領や候補者の訪問を丁重に受け入れ牧師として祈ってきたのであり、特定の候補者を支援したことはない、というのがBGEAの公式見解。だが今回、オバマ氏は中絶の権利を支持し同性婚を認める立場、ロムニー氏は妊娠中絶や同性婚に反対の立場。後者は従前から福音派が主張してきたことでもあるが、グラハム氏が事実上ロムニー氏支持を明らかにしたと見られたことは否めない。

 BGEAがウェブサイト上からモルモンを含む〝カルトリスト〟を削除したと報じられ、疑念はさらに膨らんだ。BGEAはモルモン教を〝カルト〟としてきた判断を大統領選で変えたのか、と。
「判断を変えたのでも妥協したのでもない」とハモンド氏は言う。「BGEAが牧師・指導者や電話カウンセラーの指針として出版した書籍『クリスチャンワーカーズハンドブック』にはカルトとは何かという項目があり、世界の主要なカルトと共にモルモン教もその中に分類されています。神・聖書・罪・救いなど主要な教えについて、聖句の裏付けと共にキリスト教とモルモン教の違いを比較して掲載してある」
 そして〝ウェブ上からカルトリストを削除〟は誤報だと主張する。「もともとウェブ上に〝カルトリスト〟などなかった」というのだ。聖書的な倫理に基づき妊娠中絶や同性婚を認めない候補に投票するよう呼びかけるキャンペーンにあたり、サイトの過去の記事中に今回のキャンペーンとの矛盾を指摘される恐れがある記事がないか点検したところ、担当者が質問に答えてカルトについて説明した中にモルモン教も含まれている記事が一つあった。削除したのはその記事で、それを目ざとく見つけた勢力が突いてきたのが真相だという。

 それにしてもモルモン教徒の候補を支持することに違和感はな