3月27日号紙面:対談/この人 この天職 レイコ・キーファートさん(アーク・ホールディングス CEO) VS. 中野雄一郎さん(伝道者)
レイコ・キーファート:1987年よりハワイ在住。ハワイ初の成婚サポート会社「マッチメイキング・ハワイ」を94年に設立。結婚業界初の『カウンセリング・心理学・エゴグラム』を取り入れた独自のシステムで、800組以上のマッチングを成功させたマッチメーカーのパイオニア。実業家一家に生まれた天性の経営者としての才能を発揮し、ハワイで数多くの観光関連事業、レストラン経営を成功させ、ビジネス開拓、起業、海外投資、国際ビジネス展開のプロとしての手腕でも知られている。2015年日本人女性が「世界で輝く」ためのHow toをサポートするための総合プロジェクトとして、アーク・ホールディングス(ARK Holdings Inc.)を設立。最高経営責任者(CEO)として、敏腕を振るっている。
「一人の女性としてこの世に生を受けたなば、一人の女性として幸せになる権利がある」。ハワイ最大手の結婚紹介ビジネスを構築した、レイコ・キーファートさんの信念だ。20年間で800組以上を結婚へと導き、さらに海外へもビジネス展開を図るカリスマ経営者を、ここまで支えたものは何だったのか。その華やかな経歴の内側に秘められた、確固たる信念と、真の強さに、中野牧師が鋭く迫った。
中野 レイコさんはハワイで結婚紹介のお仕事を20年以上なさっていらっしゃいますが、いわば人間関係のプロとも言っていいかと思います。その方が今回本をお出しになるということですが、どのような本をお考えですか。
レイコ 人は何かをするとしたら、5年で一区切り、何かを悟るには10年はかかると思います。今までハワイで20年以上ビジネスをしてきましたが、ここまでやってきて、やっと何かが分かってきたかなと思えるようになりました。今まで私が蓄積してきたものを、ある意味社会貢献ということで、世の中に還元していきたいと考えて、本を出すことを計画しています。
中野 内容的にはどのようなものになりそうですか。
レイコ 私は岐阜の田舎で生まれ育ちました。しかし、田舎にそぐわない、ある意味「みにくいアヒルの子」として生まれました。その私が、白鳥になるためにどのように人生を歩み、白鳥になっていったか、その過程を書ければな、と思っています。海外に来て、実際波瀾万丈の人生でしたけれども、それを振り返るのと、これからはどんなことをしていきたいのかを書きたいと思っています。でも、まだ企画の段階ですから、形になるにしても、1年くらいはかかるのではないでしょうか。
中野 人間関係ということで言えば、昔は人と知り合うチャンスも限られていて、実際会える人も少なかった。それに比べて、今はいろいろな機会があり、簡単に多くの人と知り合うことができるようにもなりましたが、それだけ昔に比べて人間関係が複雑困難な時代だとも言えると思います。より心素直に、美しく自分を伝えるということは、ますます重要だろうと思いますね。
レイコ 海外に出ると日本のことがいろいろ見えてくると言います。私もハワイに暮らし生きてきて思わされるのは、外見の美しさはもちろん大事なのですが、それと同時に、女性として輝く、女性として自信を持って生きる、ということがとても大切だということです。日本の女性は謙虚です。それはとても良いことなのですが、ただ、謙虚になる仕方、謙虚の使い方を間違っていないか。「私はもう35歳だから」「私はシングルマザーだから」と、否定的に自分を減点するのではなく、「私はまだ35歳だ」「私は1人で子どもを育てているのだ」と肯定的に、自分に自信を持ってほしいのです。物事は見方ですから。そうすれば日本の女性はもっと輝けるはず。世界一素晴らしい女性になれるはずです。
中野 日本の女性にもっと自信を持ってもらいたい、ということなのですね。そういう発言は、外国の人が書いたものならばありますが、日本人の、しかもクリスチャンの女性からしてくれる人はあまりいませんよね。とても大事ではないですか。
レイコ 私はハワイに来て、初めて自分が心落ち着くことができました。ビジネスも成功しましたが、そこに至るまではいろいろつらい経験もしました。個人的には離婚も経験し、忍耐も与えられました。そして大恋愛をし、再び結婚をして、今は第2の人生です。このような経験をさせられたのは、これから始めようとすることの備えとして、神様が用意してくれたご計画だろうと思っています。困難もずいぶんありましたが、それが自分にとっては成長の時でした。その事もお伝えしたい。
中野雄一郎:伝道者。マウント・オリーブ・ミニストリーズ代表。ハワイ在住。前JTJ宣教神学校国際学長。著書に『聖書力』『必笑ジョーク202』『天声妻語』『必ず儲かる聖書のビジネス』など。
中野 私は牧師として今までのレイコさんを見てきたけれども、海外で、女性1人で事業をし、子どもを育てるというのは大変だったと思います。でも、そういう困難さというものを、見せませんでしたよね。よくなさったなと思います。聞くところによると、ご親戚はみな何かしら事業をなさっているという。生まれつきの事業家の血と、信仰の力が支えだったのですかね。
レイコ 確かにそういう環境で育ったことは大きいと思います。それとやっぱり神様を知ったことですね。私は今まで、神様が一緒にいてくださるので、苦しいと思ったことがないのです。一つは、教会の牧師から「苦しみが成長のとき」と教えられたことです。中野先生も、いつも「エンジョイしなさい」と言われました。その言葉はいつも頭の中にありました。私は苦しみもエンジョイしたのです。
子育ても楽しかったです。私は両親から本当に愛情を受けて、多くのものを与えられて育ちました。それを次の世代に返したいと考えていました。教育もしつけも愛情も、子どもには妥協したくなかった。高校も大学もできうる限りのことをしましたし、就職も本人が望む世界的なIT企業に実現しました。私の仕事が忙しかったので、一緒に過ごせる時間は限られていましたが、時間は量ではなくて質です。ほんとに小さかったときには、お客様と事務所で話しているときに、デスクの下で娘が私の足をなでながら遊んでいた、なんてこともありました。子どもと接している時間は本当に楽しかった。同じように事業もすごく楽しかったです。
目標に向かって頑張れるのがうれしかった。得るものが多かったです。つらい時も何度もありました。そのとき「苦しみが成長のとき」という牧師の言葉はとても響きましたね。
中野 ご主人も熱心なクリスチャンでいらっしゃいますが、レイコさんのお仕事を手伝ったりということは無いのですか。
レイコ それはないです。主人はリゾート関係の仕事で30年、10年以上トップセールスとして表彰されており、やはり自分のキャリアを極めている人です。私は彼を尊敬していますし、その仕事を尊重しています。
彼も同じように私が自分でビジネスをすることを尊重してくれています。実際のところ、平日はそれぞれの仕事がありますから、まったくのすれ違いです。でもその分、週末はベッタリです。私たちがこれだけお互いを尊重し認め合えるのは、やはり2人とも神様を信じているからなのです。神様がいて主人と私がいるという、三角形の関係があるのでぶれないのだと思います。私が輝いているときは、彼も一緒に輝いてくれます。逆もそう。それは信仰があるからですね。
中野 会社は今いくつお持ちなのですか。
レイコ 現在私の会社は5つです。その5つを合わせて「アーク・ホールディングス」という事業体になっています。今後さらに3つは増えるでしょう。最初に始めたのは、「マッチメイキング・ハワイ」という、結婚紹介の会社です。その事業を進めていく中で、いいマッチングをしつらえても、ご本人たちに恋愛のスキルがないと、なかなか結婚までたどり着かないということがわかりました。そこで「恋愛アカデミー」を作りました。そして女性が恋愛をする中で必要になる英会話を学ぶために「アロハ・グローバル・コミュニケーションズ」を、ヘアメイクや立ち居振る舞いを磨くための学校として「ビーファーストクラス・インターナショナル」を立ち上げました。「アドバンテージ・コンサルトUSA」という会社は、留学や結婚、移住のためのビザ取得、書類作り、ハワイに移住や起業を考えている方たちのお手伝い、コンサルティングをします。インターネットにはたくさんの情報がありますが間違いだらけで、なかには悪いコンサルタントにだまされる日本人の方もいらっしゃるのです。
中野 すべての会社の経営を見るというのは大変ですね。
レイコ それぞれの会社には事業責任者がいて、実際の業務は彼らがします。私は今まで後継者となる人材を育ててきましたので、そのポストをすべて彼らに引き継ぎました。その上に立ってそれらすべてを束ねるのが「アーク・ホールディングス」で、私はそのCEO(最高経営責任者)として全体を統括します。
中野 その立場で何をしようと考えているのですか。
レイコ 私の目標は、妻として母として女性としていかに幸せに生きていくか、ということです。そのことを日本で日本の女性に伝えたい。そのために日本に行きます。これは社会貢献です。結婚だけでなく、社会進出したいならそのためのお手伝いもしたいと考えています。海外に出よう、と呼びかけたいです。必要なら技術もノウハウも、日本の女性が自分を磨くためのあらゆるものを提供したいと考えています。個人だけでなく、日本の女性で企業経営をしている人ともタイアップしたり、ハワイでビジネスをしている人を日本に送り込むことなどもあると思います。
中野 今の時代、海外に行くことは何も特別な事ではなくなりましたし、アメリカ人との結婚やハワイに居住することを望んだりすることも、もう不思議なことではないですね。
レイコ 今はネットの時代ですから、ホームページを見てメールを下されば、即座に資料を送ることができます。メールで相談も受け付けますし、スカイプでカウンセリングもできます。英会話だけでなく、すべてのレッスンがスカイプで可能です。
私は今まで800組以上のカップルを結婚までお世話してきました。男性はすべてアメリカ国籍で、女性は4割が現地のアメリカ人、6割は日本人です。これからは、生涯のパートナーとなる人は、人種や国籍にとらわれず、価値観の合う人を世界中から探すべきだと思います。アメリカに限らず外国の方と交流するなら、英語ができるに越したことはありません。でも、だからといって英語ができるから結婚できる、というわけではありません。どれだけコミュニケーション能力があるか、どれだけ恋愛スキルがあるか、が大事です。そしてそれ以上に、どういうマインドで生きているか、ということです。これはすべて相手に伝わることなのです。
私の土台は聖書です。すべてそこにありますし、すべて神様から教えられたことです。常に隣人を愛すること、下着を取ろうとする者には上着も与えること。そして何よりもマタイ7章7節の「たたきなさい。そうすれば開かれます」です。この言葉は、毎朝鏡に向かって見る言葉ですし、事務所にも飾られていて、私の一番の支えになっています。
中野 神様を知るようになったのは。
レイコ 教会に初めて行ったのは知人に連れられてです。私は子どものころから、何かをすればすぐに成果を出すことができました。能力があったのです。ですから、宗教など神に頼るのは、その人が弱いからだと思っていました。そんな人間だったのですが、初めて教会に行ったその日その時に、鐘が鳴ったのです。心に響いたというか。でも、そのことを認めませんでした。いい話だ、ためになる、いいことを言っているようだから聞こう、という姿勢でした。それでも不思議なことに毎週通っていましたが、認めなかった。5年後くらいでしょうか、なぜ自分は教会に通っているのか、やっとその事実を認めざるを得なくなって、中野牧師に洗礼をお願いしました。
中野 教会に初めて行った日、心に響いたものとは何だったのでしょう。
レイコ 牧師の説教を聞いて、「そのとおりだ、認めます」と頭では言えたのだと思います。でも、分かっているのに拒否していた。認めているのに、拒否している時間が長かったのは、それを認めてしまうと自分が自分でなくなるように思えたのではないでしょうか。プライドもあったのでしょう。神に頼るなど弱い人間、と思っていたのですから。でも、受洗して信仰を公にしたことで、みんなに自分は神様を信じている、と言えるようになりました。洗礼がどれほど素晴らしいものかということを、身をもって知りました。
中野 教会に行くようになってから、ご自分は変わりましたか。もともと積極的肯定的な生き方をされてきたようにも見えますが。
レイコ 信仰を認めていないにもかかわらず、教会には行っていましたが、正直なところ教会に行くたびに心が満たされました。普段の仕事は、言うなれば戦場です。傷も負うし血も流す。でも教会に行くとすべての傷の手当をされて、癒されて、また元気になって出ていくことができた。
中野 それは、教会に行く前は、仕事をする中で、傷ついたままだったということですか。
レイコ そうですね。そしてそれを私は認めていなかったのです。プライドがすごく高かったので。それが教会に行くようになってから認められるようになった。つらい時には「助けて」とも言えるようになった。昔は「困っている」とさえ言えなかったのに。でも神様を知ってから、自分は弱い人間だと認められるようになりました。その違いは大きいです。それから仕事も家庭も人間関係もすべてがうまく行くようになりました。
中野 ご主人との出会いも聞かせていただけますか。
レイコ お互いにクリスチャンだとは知りませんでした。初めて会ってデートに行きましたが、その時はお互いに絶対に相手がクリスチャンだとは思わなかったのです。私は、今度結婚するならクリスチャン、と思っていましたから、そうでなければ結婚は考えられませんでした。それで、3回目のデートの時に私のほうから「あなたは何か信じているようなものはあるの」とそれとなく信仰のことを聞いてみました。クリスチャンでなければ、彼とはこのまま友達のまま、と思って。彼はその時、自分がクリスチャンだと言ったらこの女性は去るだろう、と考えたそうです。でもいずれわかるなら言ってしまった方がいいと考えて、「実は自分はクリスチャンだ」と言って、これで終わったな、と思ったそうです。でもその言葉を聞いた私は、目をきらきら輝かせてうなずいていました。もちろん違う教会でしたが、お互いの教会に行って牧師に挨拶して、最終的に彼が私の教会に来ることになりました。
中野 すてきな話ですね。映画の1シーンのようだ。あなたは、娘を愛しご主人を愛し、そして毅然としてビジネスも手がけている。朝ドラの「あさが来た」の広岡浅子のよう。日本の女性の持っている凛としてゆずらないところを感じるね。これから、ご自身を良い見本として、日本の女性を励ましていってほしいと思いますね。