牧師の会 特定秘密保護法施行の閣議決定にあたっての声明
特定秘密保護法施行の閣議決定にあたっての声明
2014年10月14日
特定秘密保護法に反対する牧師の会
共同代表 朝岡勝 安海和宣
安倍内閣は本日14日、多くの国民の反対や懸念、不安の声、また政府与党内からの慎重審議の声をよそに、特定秘密保護法の運用基準を定め、同法を12月10日に施行すると閣議決定しました。ここに私たち「特定秘密保護法に反対する牧師の会」は、今回の閣議決定と法施行の動きに強く抗議します。
同法は昨年12月、十分な議論も経ないままに強行採決を繰り返し、12月6日、民主主義のプロセスを無視して決定されました。その際も多くの国民が、主権 者である私たち国民の知る権利、表現の自由、思想・信条・信仰の自由、結社の自由など基本的人権を制限しようとするこの法を問題視し、反対の意志を表してきました。国外からも報道の自由や知る権利という民主主義国家が基本的に有している自由や権利が制限されることに対し、重大な懸念が寄せられて来ました。
今年7月に入って、政府が募集した運用基準・施行令へのパブリックコメントには、2万3,820通もの意見が寄せられ、その多くは同法の運用に対する懸念 や反対、また法そのものの廃止を求める声でした。しかしそれらの貴重な国民の声に真摯に耳を傾けることなく、形式的な手続きによって運用基準が定められ、 同法が施行へ進むことを主権者である私たちは到底認めることができません。
そもそも特定秘密保護法は、安倍内閣が推し進める「戦争する国づくり」の流れの中にあり、国家安全保障会議の設置、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権 行使容認の閣議決定、日米ガイドライン見直しなどと密接に結びついています。事実、先日の国会衆院予算委員会の質疑において安倍首相は、「今後、集団的自 衛権を行使する事態が起こった場合、武力行使の新三要件を満たしたと政府が判断する際の根拠となる情報が、特定秘密保護法に基づく特定秘密に指定される可能性がある」と答弁しました。
すでに私たちはこの法律が「安全保障」の名の下に国民の自由を制限し、互いに疑心暗鬼を深めさせる秘密国家を出現させ、戦争をする国へと人々を駆り立て、人々の良心を踏みにじり、特定の思想や信仰を持つ人々を排除する道を開くものだと指摘しました。その懸念は払拭されるどころか、「共謀罪」法案再提出の動きなどをみるとますます深まっていると言わざるを得ません。
かつて治安維持法下において宗教弾圧を経験した歴史を継承する私たちは、今またかつてのような時代が再来しつつあることに重大な不安と危惧を抱いています。政府は虚心坦懐に国民の声に耳を傾け、この法の施行に踏み切ることのないようここに強く要望し、抗議の意をあらわします。