第10回OCC宣教セミナー KGK総主事大嶋夫妻講演 信仰継承ー日本宣教の課題として⑦ 信仰継承にノウハウなどない

「家庭の信仰継承」「教会の信仰継承」をテーマに3月28日開催された2015年度第10回OCC宣教セミナー(お茶の水クリスチャン・センター宣教部主催)。講師はキリスト者学生会(KGK)総主事の大嶋重徳氏と夫人の大嶋裕香氏。今回は、午後に行われた「教会の信仰継承」の第4回。(4月10日号に一部既報)

教会と中高生とのかかわりについての話の後、裕香氏が、中高生や青年たちと個人的にどのようにかかわってきたか、自らの証しを交えて語った。

家族の中で最初に母親が救われたという裕香氏は、小3から教会学校(CS)に通うようになった。しかし楽しかったCSも、思春期に差し掛かり、足が遠のくようになる。6年生の頃には、それまでいた女の子たちが教会に来なくなった。キャンプに行っても一緒に話す友達がいない。中学校の分級では、女子は自分ひとり。スタッフも男性で、気遣って話しかけてくれるのだが、その年頃の女の子としては、男性と話すことに抵抗がある。しだいに心を閉ざし、教会から離れた。

教会に戻ろうと思ったのは高校3年生。大学受験を前に極度の不安から不眠になり、心に浮かんだ暗誦聖句を頼りに、わらをもつかむような気持ちで教会に行った。大学1年で信仰を持ったが、離れていた間、家族や教会の人が祈っていてくれたことを、後で知った。

その経験から「小学校高学年以降の時期と、その時期の同性の友達、同性のスタッフの存在はとても大事」だと言う。以来、多感な時期の女の子と交わり、一緒に祈ることを大切にしている。10代から20代の彼女たちの、恋愛、結婚、進路の話を聞き、悩みを受け止める。「今まで誰にも話せなかったことを、ようやく大人の女の人に聞いてもらって安心した」と言ってくれた子もいた。

結婚してからは、青年たちを自宅に招き、ありのままの家庭を見せるようにしている。具体的に見せることが、彼らに結婚、家庭という将来像を描かせ、信仰のリアリティーにつながると考える。青年会の役員たちを招いて、打ち合わせと鍋パーティー。奉仕を始めたばかりの大学生や社会人たちには、奉仕が負担になっていないか、寄り添い、ねぎらい、話を聴く。「教会ではなく、あえて自宅でやります。そのほうが、特別に扱われている、という意識を持ってもらえるでしょうし、そこで奉仕に感謝していることを伝え、何かあればいつでも相談して、と声をかけることで彼らも育っていくのではないでしょうか」

その話を継いで、重徳氏は語る。「信仰継承には、こうやったらうまくいくというようなノウハウなどはない。誰がそこにいてくれるか、彼らとともにいようと心を決めた人がいるかどうかが問われている」。年を取ったら若い人の相手はできない、ということはない。

「ご飯を食べにおいで」なら、いくつになっても言える。自分の中にある青年期の教会の光景といえば、自分を招いてくれた牧師、長老、役員の家庭の食卓。そういう場では、教会の立ち話では聞けない話が聞ける。罪の話かもしれない。性、結婚の悩みかもしれない。そこでなら話せる、という場を彼らに提供すること。それを聞く側が、どれだけ至らない信仰であったとしても、今まで守られてきたという姿を見せることで、彼らは「自分もなんとかあの年まで信仰を持っていけるかもしれない」と思うことができる。「仕事で行き詰まった彼らを食事に招く。結婚問題で悩む彼女たちとともに祈る。祈り続けていてくれる大人がいるということが、青年たちにとっては希望になるだろう」

最後に、青年たちに寄り添い、ともに祈ってくれる存在として、ユースパスター(青年担当伝道者)の可能性について言及した。ユースパスターは従来の副牧師ではない。若者に特化し、彼らとともに生き、奉仕する。若者がその姿を見て、「自分もあのようになりたい」と思えるなら、次世代が育ち、献身者も生まれる。しかし、一教会では経済的に困難。複数の教会が協力し、順番に巡回してもらうような形態は考えられるかもしれない。ただ、若い人対象に伝道、牧会するには、それなりの技術と資質が求められる。また、不要な問題が生じないよう、主任牧師との緊密な連携の下になされなければならない。

「若者とともに生きるとは、激しいスピードで変わる今の世の中にあって、教会がどこに予算を使い何をしようとするのか、教会の判断が問われることでもある。今突き付けられている信仰継承の問題を突破するなら、日本の教会は何代にも及ぶ祝福を受け取ることができると信じている」と講演を結んだ。 (おわり)