フリアン(右)を気遣い、カナダから訪ねてきたトマス (C)IMPOSIBLE FILMS, S.L. /TRUMANFILM A.I.E./BD CINE S.R.L. 2015

主人公のフリアン(リカルド・ダリン)は末期がんを宣告され自分の最期を覚悟している。その彼を無二の親友トマス(ハビエル・カマラ)が遠くカナダから4日間の休暇を取って訪ねてきた。フリアンの身辺整理を手伝いながら過ごす二人の心情と関係が、ときにはコミカルな出来事を交えながら清々しく描かれている。“生と死”を見つめ諦観の境地にあるフリアンに寄り添うトマス。彼らの過ごし方を見つめていると、生きとし生けるものの日々の出来事を素直に受け止め、愛おしく味わえることの大切さが滋味豊かに伝わってくる。

【あらすじ】
スペインで俳優として活躍しているフリアンは、妻と離婚し息子ニコ(オリオル・プラ)はアムステルダムの大学で学んでいて、ブルマスティフ種の年老いた愛犬トルーマンと暮らしている。フリアンが末期がんであることを彼のいとこパウラ(ドロレス・フォンシ)から教えられた親友トマスが、教鞭をとるカナダから突然フリアンを訪ねてきた。4日間の休暇をフリアンと一緒に過ごすという。

フリアンはトマスを客人扱いせずトマスと共に普段通りに行動する。主治医のところでは化学療法の再開を勧められても断るフリアン。自分が死んだ後の愛犬トルーマンことが心配で、獣医師に犬の感情面について質問したり里親探しに奔走する。役者関係には、自分の末期症状について知らせてあり、レストランで出会う役者仲間と和解したり、逆に苛立ったり…。

トマスは、フリアンが息子のニコには自分の末期症状と決断について伝えていないことを知る。躊躇するフリアンに、「息子には知る権利がある」と説得し日帰りでアムステルダムへ向かうフリアンとトマス。突然、父親とトマスが大学に来て戸惑うニコ。近くのレストランで待ち合わせたニコは、付き合っている彼女をフリアンに紹介し食事をしながら何気ない会話で時が流れていく。

(C)IMPOSIBLE FILMS, S.L. /TRUMANFILM A.I.E./BD CINE S.R.L. 2015

【見どころ・エピソード】
余命わずかな男の“生と死”を見つめる、親友、家族、愛犬そして彼を取り巻く役者や町の人々。重たいテーマだが、お涙に誘うことなくウィットとコミカルな味付けで生きていることの大切さを気づかせてくれる。フリアンとトマスの友情を繊細に描き、パウラやニコたちの個性をしっかり浮き彫りにしていく観察眼とストーリー展開。コメディ=ドラマにジャンル分けされているが、散歩や食事などさり気ない日常の営みの会話に人生への大切な励ましが語られている脚本が何とも清々しい。 【遠山清一】

脚本・監督:セスク・ゲイ 2015年/スペイン=アルゼンチン/スペイン語、英語/108分/映倫:R15+/原題:Truman 配給:ファインフィルムズ 2017年7月1日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
公式サイト http://www.finefilms.co.jp/shiawase/
Facebook https://www.facebook.com/映画しあわせな人生の選択-405758913128105/

*AWARD*
2016年:第30回ゴヤ賞作品賞・監督賞・主演男優賞(リカルド・ダリン)・助演男優賞(ハビエル・カマラ)・脚本賞の5部門受賞。第63回サン・セバスティアン国際映画祭男優賞(シルバー・シェル)・Feroz Zinemaldia Award受賞。第8回ガウディ賞作品賞(カタロニア語以外)・監督賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞(ドロレス・フォンシ)・脚本賞受賞。第3回フェロス賞主演男優賞・脚本賞受賞。第3回プラティノ賞オーディエンス・アワード主演男優賞受賞ほか多数受賞作品。