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スパイク・リー監督はオバマ大統領の熱烈な支持者だ。その意味で、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で勇敢に戦った黒人部隊「バッファロー・ソルジャー」をクローズアップさせた本作品は、黒人のリー監督が自らの人生をかけて撮りたかった作品といえる。

事件は、1944年8月12日、イタリアのトスカーナ地方の小さな村で起こった。ここで反ナチパルチザンの掃討作戦をしていたドイツ軍兵士三百人が村を襲撃したのだ。
老若男女、その多くが老人と子どもたちだったが、教会前に集められた。村人たちは命ごいをするが聞き入れられず、主の祈りを祈り終えた人々に機関銃がいっせいに火を噴く。
「主よ、彼らをお赦ゆるしください。彼らは何をしているのか分からないのです」。最後の祈りをささげた司祭の頭めがけて拳銃がぶち込まれるシーンはあまりにむごく正視に耐えない。
長く歴史の闇やみに封印されたこの事件が再び耳じ目もくを集めたのは1984年、ニューヨークで起こった不可解な殺人事件がきっかけだった。
その日、ニューヨークの郵便局で、局員が、窓口に切手を買いに来た男を、その顔を見るなり射殺したのだ。日ごろから謹厳実直で知られる局員が、なぜその男を殺したのか?
物語は、その局員が「バッファロー・ソルジャー」の一員として、トスカーナの村に進軍する40年前にさかのぼる。そこで、黒人兵士たちが知ったのは、黒人だからといって差別をしない村人の温かな心だった。
そして、ドイツ軍に追われる少年を自分の命をかけて守ろうとするクリスチャンの黒人兵士。彼は、ナチスの襲撃に倒れるが十字架のペンダントを同じ黒人の戦友に託して息を引き取る。やがて、その十字架のペンダントは子どもの首に、そして40年の月日が過ぎていく。
ラストシーンは、裁判にかけられた郵便局員が、二百万ドルの罰金刑に処せられ釈放される場面だ。なぜ、彼は極刑にならなかったのか、さまざまな謎なぞを含みながら映画は終わるが、彼の首にはあの十字架のペンダントが再びつけられていた。人間の罪の現実のただ中に十字架は静かに立っている。【守部】

スパイク・リー監督 アメリカ=イタリア/ 配給=ショウゲート、7月下旬から東宝シネマズシャンテ、新宿テアトルタイムズスクエアでロードショー公開

公式サイトhttp://www.stanna-kiseki.jp/