Movie「学校をつくろう」――近代法治国家への黎明と気概描く青春群像
専修大学を創設した相馬永胤(三浦貴大)、目賀田種太郎(橋本一郎)、田尻稲次郎(池上リョオマ)、駒井重格(柄本時生)ら4人が、その青春をかけた人生の使命と情熱を史実的に描いている。
明治維新への幕開け、戊辰戦争で討幕側で闘った相馬永胤は、これからは軍備強兵とばかり陸軍兵学校への入学を目指すが持病持ちのため不許可。西郷隆盛の助言を受けて、彦根藩の藩費留学生として1871年(明治4)に渡米しウェストポイント陸軍士官学校を目指す。だが外国籍であるため許可されず、農学校からコロンビア大学、エール大学大学院へと進み法律を修める。
同じころ、第一回国費留学生としてハーバード大学に学んでいた目賀田種太郎、新政府の留学生帰国命令を拒否し自費でエール大学で経済を学ぶ田尻稲次郎、旧藩主の子・松平定教と共に渡米し、ラトガース大学で経済を学ぶ駒井重格らと知己を得る相馬は、武士の時代が終わり、学問と法律で国際社会に立っていく国づくりと教育の大切さに目が開かれていく。
留学時代に、国際的な法律知識を持った人材育成のため日本語で学べる学校づくり目指した彼らは、帰国してまず相馬と三浦和夫が「日本法律会社」を設立し、外国商社との実務に取り組む。その会社を拠点に、校舎捜し、学生募集へと準備を進め、ついに1880年(明治13)開講入学式の日が迫ってくる。
外国人嫌いで英語を学んでいなかった相馬が、ヘボン「和英語林集成」一冊を懐にして渡米し、大学入学レベルの知識を修めていく気概。帰国命令を拒み国から助成費が途絶えた中で、キリスト教会の給費生として援助と励ましを受けながらエール大・大学院へと進学し、駒井とも篤い友情を交わした田尻。彼らが留学している間に、廃藩置県、徴兵制、学校教育制度、台湾出兵そして西南戦争など激動する明治初期。国が国際社会に参加していく、その黎明期に、法律・経済を学び、人材づくりに夢と情熱を傾け、努力していく人生。
明治の黎明期と現代の国際社会の環境を短絡的に比べることはできないが、専修大学創立130周年記念事業として製作された本作品は、個の中にだけ納まる夢の枠を、創設者ら先達の気概へと拡がることを願ってのメッセージでもあろう。
三浦貴大、柄本時生ら2世俳優や若手俳優陣を起用したキャスティングにも明日を感じさせられる。 【遠山清一】
監督:神山征二郎、日本/2010年/109分。製作:学校法人専修大学、配給:ゴー・シネマ。2月19日より有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー。
公式サイト http://gakko-movie.com