©2011『あぜ道のダンディ』製作委員会
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‘おじさんのチェック度’によく出る項目、「周囲の反応に気づかず、おしゃべりが止まらない」「最近の若い奴は、という言い方が多い」「独り言や『どっこいしょ』という」…など、どうも周囲に気配りできなくなると’おじさん’のイメージが付いて回るのだろうか。

だが、’おじさん’は心の内ではカッコつけたい、ダンディでいたいと思っている。ただ不器用なだけなのだ。’おじさん’の一人としてそう実感する。この映画も、そのように描いている。だが、若手監督からの「それでいいんじゃないですか」と言っているような出来栄えが、どこかうれしい。

宮田淳一(光石 研)と真田(田口トモロヲ)は幼馴染みの友人。中学の時、自転車であぜ道を走り、学校の不良にもイジメられた。そんな時には「カッコいい男になりたい」と涙をこぼしながら誓うように口走る宮田。

そんな二人も50歳になった。宮田は妻(西田尚美)に先立たれ、運送会社で運転手をしながら大学浪人中の俊也(森岡 龍)と高校3年の桃子(吉永 淳)の二人の子らを育ててきた。会社では後輩から挨拶されても無愛想で無口を気取る。家でも子どもたちと上手く絡めない。気兼ねなく過ごせるのは、幼馴染みの真田と飲み屋で過ごす時間くらいだ。

©2011『あぜ道のダンディ』製作委員会
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ある日、体調に異変を感じて、医者の診察を受けた。どうも症状は、がんで他界した妻の時と似ている。どことなくすっきりしない医者の表情と言い方。宮田は自分もがんで死ぬのだと思い込む。そんなことを子どもたちには言えない。妻が子どもたちに遺したテープを聴く、なぜか突然歌いだした「「兎のダンス」。宮田には子どもたちとどんな思い出があるのだろうか。子どもたちとの思い出づくりをしたい。これからのことも、できるだけのことはしておいてやりたい。そんなことを相談できるのは、真田しかいない。人生の最期を’ダンディにカッコよく決めたい’。宮田は、真田を巻き込み一所懸命に突き進んでいくのだが。

映画の冒頭で、自転車に乗って出勤する間、競走馬の騎手気分で実況シーンをつぶやく宮田。ユーモラスで分からなくもないが、「う―ん、そうだろうか。そこまで子どもかな」とも思ってしまう。いま50代と言えば、青少年時代にカーペンターズとかアース&ファイアーのポップスやR&B、それらをカバーしていたキャンディーズなどの音楽を聴いていた世代。映画にしても「フーテンの寅さん」シリーズや「トラック野郎」シリーズもあった。それなりにカッコいい時代を生きてきた。いや今も当時のカッコよさのイメージに生きている部分もあるだろうに。宮田の’カッコよさ’がどんなルーツなのか少し見たい思いにもかられる。それは、おじさんのやっかみなのだろうか。   【遠山清一】

脚本・監督:石井裕也。2011年/日本/110分。配給:ビターズ・エンド。6月18日(土)よりテアトル新宿、ユナイテッド・シネマ前橋ほか全国順次公開。

公式サイト http://www.bitters.co.jp/azemichi/