©2010 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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‘他人に成り代わって、文章や作品を代作する人’――ゴーストライター。著者名に載る人のメッセージを、読みやすく分かりやすくインパクトのある表現で言葉を紡いでいく仕事。時には、読者から間違いを指摘されないよう時代考証のようなチェックも必要になる。そのプロセスの中では、知らなくともよいことを知ってしまうこともあろう。元首相の自叙伝を完成するためゴーストライターを務めることになった男が、知りすぎてしまうことになっていくサスペンスの渦に思わず引き込まれていく知的なエンターテイメントだ。

ファーストシーンからこの世の闇の無気味さを予感させられる。雨の強い夜、フェリーが静かに浮かび着岸する。次々に下船する車。だが、一台だけ運転手がいなくて動かない。やがて暗闇の浜辺に、その車の持ち主の遺体が打ち上げられた。元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の補佐官を務め、ラングの自叙伝を書き進めていたマイク・マカラだった。

ゴーストライターの僕(ユアン・マクレガー)は、前任者ラングの後任者として出版社からゴーストライティングの仕事を依頼された。政治に興味がない上に、ラングがアメリカで講演している1か月のうちにアメリカで書き上げるという厳しい条件。だが、報酬は破格に良い条件でもある。なにやかやと説得され、引き受けてアメリカに行くことになった僕。

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その夜、僕の部屋は何者かに荒らされていた。そしてアメリカに立つ日、ラングの就任時期に起きたイスラム過激派のテロ容疑者に対する不当な拷問事件に、なんとラングが加担したという疑惑が報道された。

アメリカに僕が着くと、その釈明の原稿が僕の最初の仕事になった。てきぱきと仕事をこなし魅力的な秘書アメリア(キム・キャトラル)。物静かに物事を見つめ知性美にあふれるラングの妻ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)。そして、ラングに対する疑惑を元外相のリチャード・ライカート(ロバート・パフ)が国際裁判所に調査を依頼する。何を知っているのか、不気味な思惑を感じさせる人物たちと出会っていかざるを得ない僕。やがて僕は、ラングの疑惑の秘密を解く鍵がマカラの下書き原稿に隠されていることを掴んでいく。。。

長年、政治ジャーナリスト・コラムニストとして活躍したロバート・ハリスの同名の小説が原作。そのロバート・ハリスとロマン・ポランスキー監督が脚本を協働で手掛け、原作の持ち味を活かしながらサスペンス映画としての魅力を最大限に引き出している。このような作品が、ある意味’完全映画化’と表現されるものなのかもしれない。登場人物たちの個性的な表情と演技。イギリス人とアメリカ人の異なる文化とセンスを会話のアクセントや台詞の言いまわしなど軽妙洒脱さに魅せらせていくインテリジェンスあふれる組み立てと展開。

作品を通して感じさせられる、この世の権力の世界にはびこる闇の力。その怖さを見せつけられているのに、次に何が起こるのか、あえて知ろうとしなくとも、その闇の力のテンポは妙に軽快で気付くと次の危ない扉を開いてしまっている。それは、現代の政治構造の見えない糸を覗かせているようでもあり、引き込まれていく。

監督:ロマン・ポランスキー 2010年/フランス・ドイツ・イギリス/128分/原題:THE GHOST WRITER 2010年ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)受賞作品。配給:日活。8月27日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷、109シネマズMM横浜ほか全国順次ロードショー。

公式サイト http://ghost-writer.jp