福島第一原発から3キロ、双葉町商店街の看板。 ©2012 Office Four Production.Ltd.
福島第一原発から3キロ、双葉町商店街の看板。 ©2012 Office Four Production.Ltd.

2011年3月12日。東日本大震災での地震と大津波は、福島第一原発事故を引き起こし大量の放射能が放出された。四ノ宮監督らは、5月に40キロ地域の飯館村に入り川俣町、相馬市、南相馬市、浪江町二本松市などを1年半ルポ取材し、放射能汚染被災者の苦境をとおして農村・酪農事業の実情をも追うドキュメンタリー。

日本一美しい村と言われていた飯館村。全村避難の政府命令。建設作業の仕事をしている男性とフィリピン妻の一家6人は、川俣町に避難した。だが、学校に通う娘2人のクラスメイトたちは、さらに遠くへと避難していく。フィリピン妻の知り合いで、相馬市の酪農家の夫が6月に自死。その時知り合いの妻は、子どもとフィリピンに一時帰っていた。30頭の牛は餓死し、牛舎の壁には「原発さえなければ」の落書きが遺されていた。

8月に飯館村の取材許可が下りた。ある牛舎に行くと、牛舎につながれたまま餓死した牛たちの死骸に石灰が掛けられていた。近所の酪農家は、それでも牛を飼い続けている。厳しい状況にあっても浪江町のある酪農家は300頭の牛を飼育し続けている。飼育し続けることが畜産家としての意地だと、不断の努力で東京電力と賠償金の交渉を続ける。

©2012 Office Four Production.Ltd.
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東北地方の農業・畜産関係の在り様も、農水行政の減反行政、保護政策の変遷と共に大きな変化を強いられてきた。国際結婚の家族も共同体の暮らしに馴染んできた人たちの絆が分断され、それぞれの心に持って行き場のない思いがしまい込まれていく’ふくしま’。鈴木雅明氏の音楽、エンドロールに流れるこいずみゆりの歌「虹」が、雨上がりの希望のしるしへとしなやかに強く、思いを向けさせてくれる。 【遠山清一】

監督:四ノ宮 浩 2013年/日本/96分/ 配給:オフィス・フォー、トラヴィス 2013年3月2日(土)より東京都写真美術館ほか全国順次公開。
公式サイト:http://wasurenai-fukushima.com