【献堂】湖北パークサイドチャペルーー樹々の緑に映える街のオアシス(2017年9月3日号8面掲載)
利根川と手賀沼の中間を走るJR成田線「湖北台」駅。常磐線「我孫子」駅から2駅目だが、単線の味わいは都心への通勤圏住宅街ながら田園気分を盛り上げる。湖北台中央公園に面した閑静な住宅街に、樹々の緑に映える瀟洒な木造建ての新会堂が完成し、地域の人たちの衆目を集めている。聖書キリスト教会・我孫子教会(愛称:湖北パークサイドチャペル=宋 均鎬(ソン・キュンホ)主任牧師、黒川知文協力牧師)の献堂式が行われたのは7月17日、「地域に根差し、地域に開かれた新会堂に」と語り合い、祈ってきた新会堂の設計思想と教会形成などについて話を聞いた。【遠山清一】
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湖北台駅南口ロータリー右側の商店街FLOWERPOT Ave.を通り抜けて、道なりに湖北台中央公園の常緑樹の歩道に沿って歩けば駅から7分ほどの住宅街に、壁一面のガラス張りを十字架の柱と梁で仕切った我孫子教会が左手に見えてくる。運動公園の機能も併せ持つ市民の憩いの緑地を目の前にた教会堂は、湖北パークサイドチャペルの愛称がぴったり合う街のオアシスのように魂の休息へと誘う。
旧会堂への愛着か
ほとんどが反対
我孫子教会の旧会堂がこの場所に建ったのは1988年(昭和63)6月。2回ほどリフォームしたが、築年数はまだ30年にも満たないため「まだ使える」という信徒の声は多かった。
だが、狭い敷地に2階の礼拝堂へは外階段。隣家から騒音の苦情が寄せられ、駐車スペースもないなど、懸案問題もあった。切実な駐車場の問題を改善するため2007年に隣の土地を購入するなど会堂の返済を終えても経済的負担は続いた。
また、騒音の問題などいくつか懸案があり、宋牧師と荒木照雄長老は、変形な土地ながら広がった敷地での新会堂基本設計を宋牧師の親戚でもある建築家の木下正昭さんに依頼した。
荒木さんは、「実際、踏みみ出す転機は、7年後」と言う。14年に宋牧師夫妻と親しい米国籍の韓国人牧師が、我孫子教会を見て百歳の紀寿感謝として新会堂建築のため10万ドルの献金があった。その献金で道路側にあった隣家を購入。07年の土地購入から宋牧師の新会堂へのビジョンを打ち明けられてきた荒木長老と木下さんは、教会の人たちにそのビジョンを公表するときと判断した。
だが、教会員が10人ほどの時代に土地を買って献堂された旧会堂への愛着や経済的チャレンジが大きいこともあって、ほとんどの信徒は反対意見だった。
地域の人々と共に御前に憩う教会
反対意見が多い中で、なぜ新会堂を建築するのかを丁寧に説明し話し合いから7つ要点に整理されていった。
①高齢者への配慮:車椅子でも入れるよう礼拝堂は一階に設けるべき。
②子連れの親たちへの配慮:赤ちゃんの授乳や子どもたちのためにも母子室は必要。
③若い世代への配慮:元気よく賛美できる礼拝堂、居場所になる小部屋は大切。
④近隣への騒音問題:礼拝堂位置の配慮や防音設備は必要。
⑤駐車場の問題:2007年に隣接の土地を購入したが、出入り口の狭さと駐車スペースの狭さが課題。
⑥ゲストルームが必要:宣教チームや来客が増えている。
⑦魅力的な教会堂:入ってみたい教会、教会の存在がよく分かる、魅力ある教会を造りたい。
旧会堂を献堂した先達の信仰の一致と奉仕への敬愛を受け継いで、新たな会堂へのビジョンが共有されていった。
地域の人たちの共感が
地域に根差す教会生む
木下さんは教会堂の建築設計は初めてだが、「日本の伝統的な構法での木造建築で、招いた地域の人たちが安らぎを感じる教会を造りたい」という教会建築への夢があった。
伝統的な構法での木造建築は、神社仏閣を建造し高い技術が評価されている岩瀬繁社長(岩瀬建築有限会社)が、厳しい予算だが相談に乗ってくれた。
柱・梁・床などは国産の杉、檜をふんだんに使った木造2階建て。1階の礼拝堂は吹き抜けで木組みの技巧が存在感を放つ。道路に面した講壇後部はガラス張りで18センチ角の杉材の十字架が仕口で組まれ強度を保っている。歩道から見ればガラス張りの十字架は教会のシンボルであり、礼拝堂からの眺望は山荘の趣もあって好評だ。
当初5千万円の予算だったが、条例による雨水槽工事など予想外の出来事が次々に起こり、総工費は8,200万円に膨らんだ。宋牧師は「眠れない日々もありましたが、夢を与えられた神さまは必ず完成させてくださるという思いと、祈りが一番の力になりました」。荒木さんと木下さんも、「神さまに導かれてきたということを実感する」と異口同音に語っていた。
聖書キリスト・我孫子教会(湖北パークサイドチャペル):千葉県我孫子市湖北台4-7-23
URL https://abiko-church.jimdo.com/