3月18日号紙面:「摂理」教祖出所で全国弁連が声明、注意喚起 勧誘巧妙に、さらに活発化 日本脱カルト協会も声明
2018年03月18日号 02面
再臨のメシアを自称し、強姦致傷・準強姦罪で服役していた、韓国異端「摂理(JMS)」(正式名称「キリスト教福音宣教会」)の教祖、鄭明析氏が、2月18日韓国大田刑務所を満期出所した。それにあたり、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、連絡会)が翌19日に記者会見を開催。「声明(『摂理』教祖鄭明析の出所にあたって)」を発表して、活発化する勧誘活動により人権侵害問題が生じる懸念を表明、注意を喚起した。同会見では、日本脱カルト協会も同問題に関し「声明と注意喚起」を公表した。
「摂理」は、鄭氏が1982年ごろに統一協会を模倣した内容を教義として韓国で設立した宗教団体で、日本では87年ごろから韓国人信者が留学先の大学で伝道を開始し、勢力を広げた。「常緑樹」と呼ばれる、教祖好みの女性信者を本部に送り、性的暴行を加えるなどの実態が韓国のマスコミで報じられると、鄭氏は国外に逃亡し、2007年に北京で逮捕、09年に韓国の最高裁判所で強姦及び準強姦罪で懲役10年の刑が確定、服役していた。団体は冤罪と釈明している。出所後、鄭氏は居住場所を性犯罪者リストに掲載され、7年間性犯罪防止用のGPS機能付き電子足輪の装着が義務付けられた。
連絡会の渡辺博弁護士は、摂理の現状を以下のように報告、懸念を表明した。一時期減少傾向にあった信者数が、大学生だけでなく高校生にまで及ぶ活発な伝道活動で、むしろ増加傾向にあること。学生時代に入信した信者が社会人になり、教員、医者、弁護士の他、大手企業、外資系企業の中枢で活躍し、社会に入り込んでいること。高校の教師が生徒を誘う相談事例もあること。
「10年前に韓国で行った調査では、信者が出身校に出向いてイベントを開催し、高校生を勧誘していた。日本でも、大学での対策が進み勧誘がしにくくなったため、中高生がねらわれることを危惧している」
摂理は、ツイッターやユーチューブなど、若者に親しみやすいツールを使って接触を図っている。また、有名大学を志望する受験生向けのサイトや、医学界、法曹界を志望する学生のための交流サイト、就職セミナー、自己啓発セミナーなども用い、正体を隠して学生を集めている。
日本脱カルト協会の西田公昭代表理事は「声明と注意喚起」を発表し、新たな被害が懸念されるとして、脱会者への支援の必要性を表明した。その上で「教団による人権侵害、性的虐待はカルトに見られる現象で、表面化されにくいだけ深刻。春から活動が活発化する。常に警鐘を鳴らさなければ」と語った。
カルト信者の救出活動に携わってきた愛澤豊重氏(日基教団・横浜菊名教会牧師)は、「鄭明析は冤罪を主張し、迫害を受けるのはイエスと同様で、それこそ再臨のキリストの証拠と、信者は語る。教祖の出所で活動は活発化するだろう。性的な虐待は韓国の本部で行われており、電子足輪はその抑制力にならない」と述べた。
大学間の対策ネットワーク作りに携わった川島堅二氏(恵泉女学園大学名誉教授)は、最近の摂理の傾向として、ネット上で摂理を名乗って発信を始めており、摂理の問題を知らない若い人には違和感がないとし、その一方で、教会では多くのサークル活動を紹介するなど、摂理の教会でありながらその名前を出さず、正体隠しが巧妙になっている、と指摘した。
30代の元信者の男性も証言。日本でも信者は減っておらず、二世が育ってきている。対策としては、予防と早期発見が大事だとし、彼らの勧誘するサークルの特徴として、「飲酒喫煙恋愛をしない」「名称や活動場所を頻繁に変える」「名字ではなく下の名前で呼び合う」などを挙げて、注意を呼びかけた。
全国霊感商法対策弁護士連絡会への問い合せはTel 03・3358・6179。