01川崎

「川崎って罪深い街なんで、聖書がよく合うんですけど、それ以上にラップが合う…」。大韓基督・川崎教会で育ったラッパー、FUNIの言葉だ。聖書を過小評価するものではないだろう。むしろ良い聖書の聴き手は、良いラップ(=川崎=社会)の聴き手になれることを示しているのではないか。

 以前本紙に登場した鈴木健さん(川崎市ふれあい館スタッフ)が、複雑な家庭環境にある子どもたちに体当たりで接する姿は印象的だった。企画した音楽イベント「桜フェス」について、「川崎は日本のラップの聖地。少年たちが複雑な思いをラップに乗せて表現する作業になっている」という言葉が記憶に残った。ほどなくして①が刊行された。鈴木さんもキーパーソンとして取材されている。

 発端は2015年に全国を騒然とさせた、川崎の中一死体遺棄事件、ヘイトスピーチデモ、簡易宿泊所火災だ。それらは「特別なことではない」と地元住民は語る。川崎のヤクザ、非行、貧困、人種、南北格差問題。これらは「日本社会の縮図」だというのが著者の主張だ。その中で明るさを見せるのはラップをはじめとしたヒップホップ、ストリート文化だった。若者たちが表現し、新たなつながりを見つけ、しがらみを抜け出す。さらに川崎を愛すべき故郷として再発見する。
02日本語ラップ

 空前の「日本語ラップブーム」なのだそうだ。②は米国発のラップがどのように日本に導入され、展開されたのか。日米のねじれた関係や、格差が顕在化してきた現代での展開がある。

03ラップ何
米国での展開は③。公民権運動ではゴスペルやソ ウルが心情を代弁していた。それ以後(ポストソウル)に、黒人たちの新たな声として誕生したのがラップだった。その政治性と非政治性、オバマ政権からトランプ政権への移行時の反応が語られる。

①『ルポ 川崎』磯部涼著 サイゾー 1,728円税込 四六判

②『日本語ラップインタビューズ』いとうせいこう、Zeebraほか共著 青土社 1,728円税込 四六判

③『ラップは何を映しているのか—「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで大和田俊之、磯部涼、吉田雅史共著 毎日新聞出版 1,296円税込 新書判

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○NCC宣教会議プレ集会より① 「悔い改め」とやり直せる社会へ 吉高叶氏(日本バプテスト連盟主事)/鈴木健氏(川崎市ふれあい館)2017年11月12日号 07面(有料版)
○「復活信仰」を深める名著 『新版 キリストの復活』 メリル・C・テニイ著2018年3月24日
○『受難と復活の説教』『被災後の日常から 歳時記で綴るメッセージ』『ヨブ記に見る 試練の意味』2018年3月26日
3月4日号紙面:「言葉」生む旅を共に ヤンシー氏来日 記念出版2018年2月23日

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