4月4日キング牧師没後50年にちなみ、3日にわたり3者の寄稿をオンラインで掲載します(本紙4月8日号に掲載)。

〈昨日までは〉
キング牧師没後50年①:キング牧師の“孤独”を慰めたゴスペル 塩谷達也(ゴスペル・シンガー)2018年4月2日
キング牧師没後50年②:正義を見分け傍観せず 渡辺 聡(東京バプテスト教会牧師) 2018年4月3日
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私は昨年の夏までロサンゼルスにあるフラー神学校で学んでいました。そこで受けたたくさんの恵みの一つが、キング牧師の神学を専門とするHak Joon Lee教授と出会えたことです。

 彼の講義を聴き、キングの著作や説教集、キングについて書かれた文献を読み、世界中から集った神学生たちと語り合うことを通して、私はキングを深く尊敬するようになりました。

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 私がキングから学んだ1つ目のことは、人種差別・戦争・貧富の格差などいわゆる社会的な問題を、霊的な問題として深く分析すべきであるということです。

 キングはその説教のなかで何度も「恐れ」という感情に着目しています。自分たちがかつて不利益を与えた他の人種から、他の国から、他の階層の人々から復讐されるのではないか、自分たちが今持っている力を、財産を、命を失うのではないかという「恐れ」が、人種差別を、戦争を、そして貧富の格差を生み出していくのであり、そのままこの状況を放置するならば、人類に待っているのは滅びでしかないのだと主張します。また、そのような「恐れ」をクリスチャンが持つならば、それは神の愛と全能の力を、心の奥底では信じていないゆえであるとも語っています。

 2つ目は、悪を悪だと指摘するときに生まれる「恐れ」に、どのように打ち勝つかということです。キングは、人種差別政策を非難したことで、何度も脅迫を受けました。

 少なくないヨーロッパ系アメリカ人のクリスチャンたちが、権威に逆らうべきではない、意見が分かれることに口を出すべきではないと彼を非難したり、無関心であったりしました。彼がベトナム戦争に真っ向から反対したとき、これまで彼を支えてきた人々が離れていきました。

 それでも、彼が語り続け、行動し続けることができた背景には、賛美と祈りと御言葉がありました。公民権運動の集会は、賛美が歌われ、聖書が読まれ、さながら礼拝のようであったと言われています。また、彼はいくつかの説教のなかで、眠ることができないほどに恐れていたとき、正直に「私は恐れています」と祈るなかで、神の臨在を経験したこと、聖書、特に詩篇46篇に励まされたことなどを分かち合っています。黒人霊歌を歌う形で説教を終えることもしばしばありました。

 3つ目は、共同体の形成をゴールとするということです。キングにとっては、悪しき政策や制度が非難され、是正されるだけでは不十分であり、神の愛によって、神の力を祈り求めることによって、人の内面が造り変えられ、加害者には悔い改めが、被害者には赦しが生まれ、新しい共同体が形成されることがゴールでした。

 だからこそ、キングは非暴力を主張し続けました。悪を指摘し、抗議はする。デモをし、座り込みをする。しかし、どこまでも非暴力で。さらに、ただ形だけ、暴力を使わなければ良いのではなく、悪を行う人々を愛することによって、赦すことによって、祈ることによって、敵を友に変えることによって、敵を滅ぼそうとしたのです。

 当然のことですが、キングは完全な人間ではありません。造り出されたスキャンダルであるという説もありますが、性的な罪を犯していたとも言われます。それは、休むことをせず、超人的なスケジュールをこなしていたことで、霊的に飢え渇いていたからではないかとも言われています。また、当然のことながら、彼の思想のすべてに同意できるわけではありません。

 しかし、そのような限界があるとしても、キングのことばと行動から、現代の私たちが学べることは非常に多くあります。ぜひYouTubeなどでキングの説教を聴いてみてください。説教集や評伝を手に取ってみてください。キングを動かした聖霊さまが、あなたの心をも動かすはずです。
写真=Wikimedia Commons

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