7月8日号紙面:“敵意超える”ビジョン共有 NCCKが「朝鮮半島平和条約キャンペーン」を実施 米朝首脳会談の最中、各国から代表団が来日
南北首脳会談から米朝首脳会談と続く中、韓国基督教教会協議会(NCCK)は6月10〜20日に「朝鮮半島平和条約キャンペーン」を日本と韓国で実施。NCCK代表団21人に加え、米国、カナダ、ドイツなど海外の教派・教団から総勢30人が来日した。日本では国会議員面談、広島訪問、第6回9条世界宗教者会議への参加。その後韓国では朝鮮半島の軍事境界線付近を訪問し、国会議員や青瓦台秘書官と面談した。
同キャンペーンは、平和条約の啓発、そのための北東アジアでの教会の連帯、平和つくりのための神学的ビジョン、次世代形成を目標とする。NCCKは1988年に 「民族の統一と平和に対する韓国キリスト教会宣言」いわゆる「88宣言」を発表し、南北の統一のために尽力してきた。釜山で世界教会協議会総会が開催された2013年を契機として、15年には1万4千の署名を集めて韓国大統領に提出。16年には米国大統領にも署名を提出した。17年にはヨーロッパの教会代表者、政治家らを訪問し、18年は北東アジアでのキャンペーンとなった。
6月11日午後には日本キリスト教協議会(NCCJ)代表者らと共に南北の平和統一と東アジアの平和構築に対する協議会を開催した。
NCCK総務の李鴻政氏は、12日に開かれた米朝首脳会談の直前に同キャンペーンを実施できたことの意義、9条を北東アジア全体で同時に考えるべきことを勧めた。NCCK和解統一委員会からは委員長の羅核集氏がが「朝鮮半島の情勢と平和条約の必要性」について、NCCJからは元幹事、現YWCA業務執行理事の西原美香子氏が「平和憲法」について話した。
羅氏は、朝鮮半島の歴史を解説し、「朝鮮半島の分断の原因は世界大戦の結果物であり、半島の分断は世界の問題」と述べた。南北だけではなく日本を含む周辺の列強が平和体制に関わることを促す必要性を話した。韓国で平和条約への期待が高まっていることを伝え、この平和条約を東北アジアの平和につなげることを勧めた。「これまでの同盟体制から、多数者による安保時代、 共同の安保時代へと、国際関係を再構成」、さらに「安保が、単純な軍事的安保の次元を超えて、人間の安全保障、生態系の安全保障、ひいては、われわれ人類の脅威である気候変化や多元的な問題を、同時に解決していく共同の家を構築していけるはず」とも述べ、歴史学者の和田春樹氏が提唱した「東北アジア共同の家」を紹介した。
西原氏は湾岸戦争以降の憲法問題と市民運動の経緯を説明。平和を実現するキリスト者ネットや宗教者の草の根のネットワークを紹介し、宗教者が市民運動間の違いを超えて人々をつなぐ接着剤になれたと意義を語った。「聖書を抽象的に語ったり、『祈ってます』で終わらせるのではなく、現場に立ち、現実を直視し、ビジョンを描き、あきらめずに行動する姿こそが信仰の証し。イエス・キリストが私たちの苦しみや痛みに共感し、解決の道へと導く確信があるからこそ、希望を持てる」と語った。
憲法9条からは「戦争放棄だけではなく、紛争の予防、人権の回復、持続可能な環境や経済の安定」を見出せるとして、「9条的な考え方」が世界の平和に役立つと勧めた。9条は「聖書の教えをきわめて具体的に憲法に記した『祈り』とも言える」と述べ、日本国憲法全体についても「自らを絶対化せず、少数者の意見、声にならない声に耳を傾けてその尊厳を守り、愛しむこと」から「イエス・キリストの生き方を見る」と語った。
会場では、韓国の民主化と日本の民主主義の危機、市民の役割、教会における政治的立場の違いや政治的な議論・行動についてなどが各国・地域の状況とともに議論された。最後にNCCJ総幹事の金性済氏が挨拶し、祈った。
金氏は日本国憲法について、「『国民』の範囲の限界があるが、全体として敵意を超える精神が込められており、韓国や在日コリアンにも手を差し伸べ、共に生きる普遍的な国民の精神がある」と話した。
インタビューの中で、教会の使命について、「福音派か社会派かの二項対立ではない。魂の慰めとともに政治的な問題についても共感を体験し、学ばないといけない。『日本の教会は弱っているから、建て直しが先』と言われるような現実はある。だが今教会に問われていることをなおざりにし、沈黙や中立に止まるならば、結果的に政治に流されてしまうかもしれない。戦中の過ちを繰り返してはいけない。NCCJだけでなく日本福音同盟など様々な教派がともに交流できる機運がある。共にできることをしていきたい」と話した。
第6回9条世界宗教者会議が声明
広島市で各国の宗教者が集った第6回9条世界宗教者会議は6月15日に共同声明を発表した。東アジアにおける平和誓約でもある日本国憲法第9条を変える動きに反対し、9条による平和の拡大を促した。ヘイトスピーチやナショナリズム、非核化、核廃絶、米軍基地問題についても言及した