9月9日号紙面:[レビュー4]『神がいるなら、なぜ悪があるのか』『向こう半分の人々の暮らし』ほか
世界の様々な不条理に現代人は問いかける。『神がいるなら、なぜ悪があるのか 現代の神義論』(クラウス・V・シュトッシュ著、加納和寛訳、関西学院大学出版会、2千808円税込、A5判)神、自然、人間の側面から悪の問題を考える。伝統的な神学の「神義論」を確認しながら、自由意思論については、カントなどの近代哲学、脳科学や現代哲学、現代神学の議論も引用。不可知論による思考停止にならず、問いへの応答に取り組むことを勧める。
「人の強欲しか見えない地域で神の愛を知れるか」。19世紀末の米国。急速な経済発展の一方、夢を抱き、入国した移民たちは、貧困、病気、犯罪の温床に追いやられた。これをルポし、改善に動かしたのが『向こう半分の人々の暮らし 19世紀末ニューヨークの移民下層社会』(ジェイコブ・リース著、千葉喜久枝訳、教文館、千404円税込、創元社、四六判)。悪の連鎖の中で、教会の試行錯誤も記す。現代的課題として本邦初訳。
『もしも人生に戦争が起こったら ヒロシマを知るある夫婦の願い』(居森公照著、いのちのことば社、千512円税込 、四六判)の著者の妻清子さんは原爆症の不安を抱えながら戦後を過ごした。その思いを理解しながら著者は結婚。だが1980年代から清子さんは原爆症を発症した。それをきっかけに証言、平和活動に取り組む。同時に出合ったのがキリスト教信仰だった。2013年に逝去した清子さんの思いを著者は受け継ぐ。時代を理解できる写真、図、コラムが豊富。
悲嘆を希望に変える言葉がある。『エレミヤ書を読もう 悲嘆からいのちへ』(左近豊著、日本キリスト教団出版局、千512円税込、四六判)の著者は聖書学者で、9・11を米国で過ごし、日本で3・11を経験。現実の悲嘆の中でエレミヤ書を読み続けた。テキストの構造、語句も緻密に整理し、時事にも応答する。
競争や格差、孤独にさらされる社会の中で、小さなものの存在に目を向けたのが『都会に咲く小さな草花さえも』(市川五月写真・文、いのちのことば社、千404円税込、A6変型)。写真、エッセイ、聖書の言葉を添える。
「安心して絶望する」。生きづらさを抱える精神障害の人々と「べてるの家」が生み出した言葉の数々。『日めくり まいにちべてる』(向谷地生良編、いのちのことば社、千80円税込)はそれらの言葉とその解説を日めくりにした。
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