2018年10月28日号 01面

アサワニセンター校の音楽バンドと小西小百合コンフィタル診療所チーム、FH同労者のエドワルドさんと
毎年10月16日は、世界の食料問題を考えて行動する日として国連が制定した「世界食料デー」。この日に合わせてハンガーゼロ=清家弘久理事長=は各地域の実行委員会と協力し、10月4日から11月11日日まで、「2018世界食料デー大会」を開催している。テーマは「わたしから始める 世界が変わる」で、飢餓や貧困に苦しむ国に駐在し支援活動をするハンガーゼロ・スタッフや現地の国際飢餓対策機構(FH)の代表、スタッフたちの現地報告、講演などを通し、世界の飢餓・貧困の現状とそれをなくすための方策について考えるひと時をもっている。【中田 朗】

13日、千葉県柏市のアミュゼ柏プラザで開かれた「世界食料デー 第5回千葉北大会」(同実行委員会主催)では、田村治郎氏(ハンガーゼロスタッフ)が講演を、小西小百合氏(同ボリビア駐在スタッフ)が現地報告をした。
田村氏は、世界の飢餓人口は8億2千100万人で、民族紛争などの影響で昨年から600万人増えていると指摘。「世界人口の9人に1人が慢性的、長期的に食料を得ることができず、1日1食でさえ食べることができない現実の中にいる」と話す。DSC_0003
一方、「日本で無駄になっている食物が年間632万トン。食料が足りない地域への援助物資は年間320万トンだが、その2倍が日本で捨てられている」とし、「私たちがどれだけ無駄な消費をしているのかを認識し、まず自分自身の食に対する認識を変えていかなければいけない。無駄を省くことと、『もっと、もっと』から『これで十分』と満ちたりて生きることを実践するのが大切だ」と語った。
力を持っている人だけでなく普通の生活をしている私たちの日常が変わっていく時に世界は変わっていく一歩になるとも言う。「世界にある飢餓と貧困の現実が、他人事ではなく自分事へと変えることができる。飢餓の現実と私たちの日常が、食の問題などを通じてつながっていることが分かってくると、何もできないなという思いから一歩抜け出すことができる」と、自身、コンゴに行って見聞きした体験を通して話した。
子どもたちへの教育支援の大切さも強調。「小学校に通えない子どもたちが世界に約6千100万人いる。読み書き、計算ができなければ雇ってくれない。稼げないので貧困に陥る。その貧困の連鎖を断ち切るには、子どもの教育支援が必要だ。教育支援を通じて村全体の底上げにつながっていく」と語った。DSC_0013
小西氏は2006年から南米のボリビア多民族国(以下ボリビア)で、地域の人々への衛生指導や地域リーダーの育成などを行ってきた。
ボリビアは、南米大陸で最も貧しい国で、乳幼児死亡率が千人中31人、5歳未満の死亡率が千人中39人と南米で最悪の状態。ハンガーゼロはFHボリビアと協力し、高地にあるアサワニ地区千人中150人、リオカイネ地区70人を支援。5歳以下の慢性栄養不良の割合が50%近くに達する地域でもある。「男尊女卑の因習が強く残っており、家畜と子どもが両方病気になったら家畜を優先するなど、子どもを大切にしない習慣がある。泥レンガにわらぶき屋根の家は台所と寝室が同じ空間にあり、黒いすすがこびり付いて健康に悪い」
特に必要を覚え行っている支援は、地域の子どもたちに教育と生きる希望を与えるチャイルドサポーターの働きだ。「地域のリーダーや人々、家族との協働で、子どもたちが全人的に働くことができ、将来の地域リーダーになるよう関わっていくのが目的。栄養改善プロジェクト、保健衛生プログラムなどで、特に人づくりに力を入れています」DSC_0043
小西氏の教育支援を通じて変えられ、今は同労者として働いているエドワルドさんの映像を紹介。「一人の青年が変わっていく時、この地域に希望が生まれることを、エドワルドさんを見て確信した」。「田村さんも言っていたように、この一人の子どもが自分の子どもだったらどう感じるか。一人の子どものために、まず自分でできることから考え、実行してほしい」と語りかけた。
講演、現地報告の合間には、6人の音楽家による演奏も披露された。

「誰かのために」行動を 「@きりたん大会」で清家氏

10月4日には、幕開けとなる「@きりたん大会」の第2回が、大阪市阿倍野区の大阪キリスト教短期大学で行われた。会場には学生、一般参加者併せて230人が参加。最初に音楽ゲストのジャズピアニストMalicoさんが出演し、児童向けの曲をジャズ風にアレンジしたメドレーや軽快なジャズナンバーなどを演奏。最後はMalicoさんの伴奏に合わせ全員で合唱するなど、会場を盛り上げた。演奏の合間のトークでは、同校の卒業生でもあるMalicoさんから、幼児教育を学ぶ学生たちに向けての応援メッセージや「世界で飢餓に苦しむ人々を支援するために自分にできることやっていきたい」と思いを語った。@きりたん03
講演では、清家弘久氏が世界の飢餓の現状や先進国での食料廃棄の問題を語り、飢餓問題解決のためには、私たちが「誰かのために」行動を起こし、より一層力を合わせていくことが大切であると語った。
また、コンゴ民主共和国で撮影したハンガーゼロの活動を紹介する映像が紹介され、実際の支援地の様子が報告された。会場内では今年の食料デー募金の支援国を紹介する写真パネルコーナーも設置。「一食分募金」の協力をアピールした。