今年9月から全国12都市で開催される「2019ラグビーワールドカップ」の伝道に向け「ナショナル・キックオフ大会」が2月18日から20日まで、神奈川県三浦市の三浦YMCAで開催された。2日目のセッションでは、スポーツ宣教師のトム・ティコ氏が「世界規模スポーツイベントと伝道活動」の題で講演した。(3月3日号で一部既報) 【中田 朗】
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最初に北京オリンピックの時のハイライト映像を紹介。「大きな世界規模のスポーツイベントは、開催国の人々に興奮をもたらす。大きなことを成し遂げたという達成感、勇気、自信を与える。地球規模で自分たちがつながっているという感覚は、人々に喜びをあたえます」と語った。
「開催国の教会の一致のためにも非常にいい機会になる」と言う。「2011年にニューカレドニアでサウスパシフィックスポーツ大会があった。それまでニューカレドニアの教会は一度も一緒に宣教活動をしたことがなかったが、20の教会が一致して宣教活動した。そして宣教協力が広がり今に至っている」
スポーツイベントには①ホストシティーの働き、②パートナーシティーのプログラム、の2つがあると言う。「今年はラグビーワールドカップのホストシティーのプログラムに集中される。来年は、東京以外の方々にパートナーシティーとしてのプログラムを考えていただくことになる。『東京でしか開催されない』ではなく、自分の町でどんなことができるのか、ワールドカップの活動をしながら思いをめぐらせてほしい」
伝道活動においては、コピーライトや肖像権について気をつける必要があると注意を促す。「オリジナルのものを勝手に使わないということは、私たちは注意しなければならない。もし使用したいなら、許可を取って使用する。ポスターやチラシを作る時は注意してほしい」
安全配慮についても考える必要があると語る。「例えばテロ対策。メジャースポーツイベントはテロの対象になる危険性がある。地元行政のテロ対策の情報を得ながら、安心できる形のプログラムを考える必要がある」
「活動中にけが人が出た時に、すぐに対応できるよう配慮しておく必要がある」と、救急の必要性も強調した。
また、過去の反省から、避けるべき点も分かち合った。「スタジアム周辺での活動に集中し過ぎてしまったことがあった。スタジアムに近過ぎると、制約が多くなるという問題がある。スタジアム周辺でなく、もっと地域に密着した活動のほうが評価が大きい場合もある。スタジアムから離れた所でやることも意味がある」
「イベント中心にならないように」とも注意を促した。「私たちは、ワールドカップ、オリンピックが終わった後に何が残っているかをいつも考えて活動している。もし、イベントだけに集中してしまったなら、終わった後何も残らないということが起こりかねない。イベント後に続くものが持続可能なものであり、弟子訓練、教会成長につながる大事なポイントになる」
その他、▽海外からの宣教チームの受け入れにエネルギーが取られすぎないように。彼らの働きが地域の教会、地域の人々のサポートになるように、▽たくさんのプログラムをし過ぎてアップアップしないように、などの注意点を挙げた。
「ラグビーワールドカップが9、10月に行われるなら、その数か月前に、地域をターゲットにしたプログラムをやってみてほしい。良い、悪いをチェックして本番に臨むと、安心してプログラムを実践できる」とアドバイスもした。
質疑応答では、東北の被災地で牧会する牧師から、「ワールドカップ、東京オリンピックに反対する地域の人々がいるが、そういう人にどうやって説明していけばいいか」との質問があった。それに対しトム氏は「2006年のインドネシアでのスマトラ島沖地震の時、キッズゲームというスポーツミニストリーの一分野を実践するインドネシアのチームが、被災地で子ども対象のプログラムを実践した。スポーツは物理的な復興支援はできないが、イベントを通して子どもたちの心を励ますことはできる。スポーツイベントと被災地支援は、実は対極ではなくて、とても親和性が高くて、世界のスポーツミニストリーには必ず被災地支援というセクションがある。今回のワールドカップでは神戸でプログラムを考えている。また、岡山の真備町でもフェスティバルをしてほしい、という話が出ており、準備をしている」と答えた。