自首するため警察暑がある町へ向かうマルリナ (C)2017 CINESURYA – KANINGA PICTURES – SHASHA & CO PRODUCTION – ASTRO SHAW ALL RIGHTS RESERVED

フライヤーのキャッチコピーは「インドネシアの荒野から放つ 痛快“ナシゴレン・ウエスタン”」。ナシゴレンとは、インドネシアやマレーシアの焼き飯料理のこと。イタリア製西部劇・マカロニ・ウエスタンはいわば時代劇だったが、インドネシア製ウエスタンは、現代のお話し。マカロニ・ウエスタンのヒーローは、クリント・イーストウッドやジュリアーノ・ジェンマらガンマンだったが、“ナシゴレン・ウエスタン”は未亡人マルリナ役のマーティ・ティモシー演じるヒロイン。颯爽とした早打ちで悪漢どもを撃ち殺すガンマンではないが、インドネシア鉈で身を護る凛とした女性像は小気味よい。原題はMarlina the Murderer in Four Acts(殺人者マルリナの4つの行為)だが、邦題の「マルリナの明日」は、詩的な表現の中にマルリナのとった行動が殺人にとどまらず女性を正当に扱ってほしいと願うメッセージが伝わってきて好感が持てる。

マリアナの行動を
意味づける4つの章

物語は4つの章で構成され、それぞれのクレジットが表記され物語が進展する。「第一幕 強盗団」、「第二幕 旅」、「第三幕 自首」、「第四幕 出産」。

インドネシアの辺鄙な荒野の村に建つ一軒家。夫と子どもを亡くしたマルリナ(マーティ・ティモシー)が独り暮らしている。ある日、強盗団の首領マルクス(エギ・フェドリー)がマルリナの家にやって来た。居間の片隅に座している夫のミイラを一瞥し、料理を作れとマルリナに命じる。それだけでなく、後から仲間が6人来る、今夜は祭りの夜のようにみんなでお前の相手をしてやるとレイプをほのめかす。家畜も全部奪うと脅す。夕餉時、強盗団の4人の男たちがやって来た。食事に毒を盛り男たちを殺害して身を護ろうと考えたマルリナ。だが、マルクスだけは食事よりもマルリナに襲いかかる。暴行を受けながらもインドネシア鉈でマルクスの首を刎ねたマルリナ…。

翌朝、マルリナは警察に自首して正当防衛を主張しようと決心する。マルクスの首を手に提げて丘陵地のバス停に行くと身重の友人ノヴィ(パネンドラ・ララサティ)と出会う。ノヴィは臨月を迎えても夫が帰ってこないので仕事先まで会いに行くという。マルクスの生首を見て乗車拒否するバスの運転手を鉈で脅して出発させたマルリナ。だが、遅れてやって来た強盗団の2人がマルクスの首を取り返そうとマルリナの跡を追う…

マルリナは警察で事情説明するが… (C)2017 CINESURYA – KANINGA PICTURES – SHASHA & CO PRODUCTION – ASTRO SHAW ALL RIGHTS RESERVED

自力で窮地を乗り越えよう
とするマリアナと女性たち

モーリー・スリヤ監督は、本作の演出を“西部劇”スタイルにすることをかなり意識したと第18回東京フィルメックスでのインタビューで答えている。銃撃戦の欧米風西部劇ではなく、現代のアジア映画の西部劇は“荒野”とぽつんと一軒建つマルリナの家が印象に残る。じっさい、一軒家で襲われたら何ともし難い。いまも女の居場所は厨房という感性の男社会のなかでマルリナもノヴィも、男たちに虐げられた情況が描かれていく。その情況のなかで智恵を働かせ自力で窮地を乗り越えていく女性たち。国際化する社会情況のなかで自立へと歩みつつある都市の女性ではなく、“西部劇”スタイルで描かれる命をかけて明日を切り拓こうとする女性の在り様が伝わってくる作品。マルリナとノヴィ、そして新しいいのちの誕生が旅立つラストシーンが美しい。 【遠山清一

監督・脚本:モーリー・スリヤ 2017年/インドネシア=フランス=マレーシア=タイ/インドネシア語/95分/原題:Marlina the Murderer in Four Acts 配給:パンドラ 2019年5月18日(土)よりユーロスペースにてロードショーほか全国順次公開。
公式サイト https://marlina-film.com
Facebook https://www.facebook.com/marlina.ashita/

*AWARD*
2017年:カンヌ映画国際映画祭監督週間正式出品。第18回東京フィルメックス最優秀作品賞受賞。 2018年:第90回アカデミー賞外国語映画賞インドネシア代表作品。