和解の働きに信仰者として取り組む 参議院議員 藤田幸久さん

「損得抜きで仕事をするのが政治家」。藤田幸久さんはそう語る。20代で国際NGOに参加したのは「政治に幻滅したため」だが、専従スタッフとしてボランティア活動を通して海外援助に携わる中、神様と出会った。1996年に初当選して衆議院議員を2期、2007年からは参議院議員を2期務める。NGO時代から政治家としての今に至るまで、信仰者としての変わらない思いを藤田さんに聞いた。【髙橋昌彦】

困難の中にあるアジアの青年
平和な日本に暮らす負い目

政治の世界に触れたのは、大学時代にした選挙の手伝い。それがきっかけで、自民党議員の事務所でアルバイトをするようになった。国会議員会館にいる議員のもとには地元の業者や後援者が陳情にきた。「ガソリンスタンドを開設したいので、今の規制をなんとかして欲しい」「娘をなんとか私立の学校に入学させて欲しい」。法律を作るのが政治家の仕事なのに、そんな無理を聞いてやる政治家。「おかしい」と思った。その議員の友人からは「そあんなところにいつまでもいるものではない」と言われた。
「世界にはどんな問題があり、どう解決しているのかを見たい」と考えていた藤田さんは、Moral Re-Armament(道徳再武装 MRA)という国際NGOを紹介され、そのプログラムを通し2年間でアジアの青年約50人と約100の家庭にホームステイをしながら世界14か国を歴訪した。彼らアジアの青年たちは多くが紛争や差別の中にあり、みな苦しい中で頑張っていた。日本人である自分だけが平和の中で暮らしていることに負い目を感じた。ヨーロッパのホストファミリーは、なぜアジア人をこれほどに迎え入れてくれるのか。みな信仰を持っていることに感動した。その中で聖書に導かれ、彼らの信仰に触れていった。
帰国後の1977年、MRAの日本事務局で専従スタッフとして働くことになり、国際ボランティア活動を本格的に始めた。NGOやボランティアといった言葉がまだ知られていなかった頃である。MRA時代には様々な国際会議を主催し、政治家や経済人などが参加するようコーディネートした。様々な分野での争いの仲裁、和解に取り組んできた。それらの活動を通して多くのクリスチャンに出会った。政治家の父親に反発して刑務所にまで入った青年がキリストに出会って父親と和解し、それが後にその国の人種間の和解につながったケース。ドイツとフランスの和解の立役者になったフランスの元議員。「多くのクリスチャンの証しに触れるのとともに、どうしても問題が解決できない時に、クリスチャンがお祈りをして道が開かれる、という経験も目の当たりにしてきました。だんだんと人間の考えを超えた存在が確認できるようになっていったんです」。80年にリトリートでローマに行った際、友人のオーストラリア人の牧師から、現地の長老教会で洗礼を受けた。30歳だった。
84年には国際MRA日本協会の専務理事に就任した。その年のアフリカ支援のための募金がきっかけで、アフリカで井戸掘りプロジェクトを開始、図書館への書籍の寄贈も行った。同じ時期に、そのキャンプの近くに日本政府のODA(政府開発援助)で小学校が建てられた。電動黒板と水洗トイレ付きの学校だった。「水が無いから井戸掘りをし、電気もない地域なのになぜと思いましたが、外務省の答えは、予算消化のため、でした。これは税金のムダ使いの話です。NGOの活動で満足しているだけでなく、政治行政そのものを変えないと、と思いました」

NGOも国会議員も現場が原点
困っている人の役に立つ

96年に鳩山由紀夫氏が新党を結成する際、「NGO経験のある人も選挙に歓迎する」と言われ、それに応じた。以前から親交があり、永田町を改革しようとしている鳩山氏を手伝いたかった。衆議院選挙3週間前の急な出馬だったが、比例区で当選した。国際経験を買われ、外国訪問のアレンジをした。中国の訪問では、あえて残留孤児の養父母が暮らす大連から始め、彼らを慰問した。「対人地雷全面禁止条約」は、当時防衛庁は反対していたが、議員連盟事務局長として働きかけを行い、1年間で386人の議員の支持を得、小渕恵三外務大臣(当時)らとともに、条約調印を実現した。
「NGOと議員の働きは一致しています。両者ともに損得抜きで仕事をする人。困っている人の役に立つ。私は政治活動もNGOの延長でやっている。国会にいるが故に行政もチェックできるし、情報も得られる。野党であっても政策立案を与党に働きかけることができます」「仕事の種類、働き方の規模は大きくなっているが、原点はあくまでも現場です。現場に行かなければ分からないことがある。現場の匂いや地面のでこぼこの感覚。直接話を聞かないと。議員だから行ける現場もありますし」
「クリスチャンに政治にどうかかわってほしいか」という質問には次のように答えてくれた。「“政治に無関心であっても無関係ではありえない”という言葉があります。おそらく今は政治に対する信頼が低くなっているのでしょうが、議員は法律を作ります、行政をチェックします。国民の代表でそれを行っているのが議員です。そこを理解していただいて、政治家を動かして欲しいですね。特に和解の働きは、クリスチャンがやるべきことです。民族間の和解、宗教間の和解、私もクリスチャン議員として取り組んでいきたいと思っています」