吉田氏「『ハイデルベルク』が伝えようとしているものとは」 「レンブラントの絵が何度も浮かんだ」 出版記念座談会「『ハイデルベルク信仰問答』と日本の教会」①

『ただ一つの慰め ~「ハイデルベルク信仰問答」によるキリスト教入門~』(教文館)=写真左下=の出版記念会が7月22日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開かれた。
座談会「『ハイデルベルク信仰問答』と日本の教会」では、著者の吉田隆氏(神戸改革派神学校校長)と朝岡勝氏(同盟基督・徳丸町教会牧師)が、山下正雄氏(日本キリスト改革派教会大会メディア伝道局〔RCJメディア・ミニストリー〕主事)の司会のもと語り合った。
同書は、RCJメディア・ミニストリーの前身CRCメディアミニストリーが発行していた月刊誌「ふくいんのなみ」に連載していた文章を加筆訂正したもの。「キリスト教に興味を持ち始めた人に向けても分かりやすく、深みのある内容であることを意識した」と言う。連載はウェブでも公開されていたが、書籍化するとたちまち重版に至った。
こだわりは、表紙に使用したレンブラントの絵画「放蕩息子の帰還」と吉田氏。「ハイデルベルク信仰問答」(以下「ハイデルベルク」)を解説している間、何度もレンブラントの絵が浮かんだという。「『ハイデルベルク』が伝えようとしているのはこういうことではないかと思わされた」と話す。求道中の両親に同書を見せたところ、特に表紙を気に入ってくれたと話す。
同書の編集を担当した高木誠一氏(教文館)は、「『ハイデルベルク』は竹森満佐一氏の翻訳が使用され、加藤常昭氏の講話など、信仰問答と解説が親しまれてきた。竹森氏に代わり吉田氏の翻訳が新教出版社で刊行されたが、この翻訳に基づく解説は朝岡氏の著作のみ。さらに出てほしいという思いがあった」と話す。
吉田氏は、「ハイデルベルク」の翻訳は、神学校の授業の一環として訳したのがきっかけと明かした。「宣教師が出版を勧めた。竹森氏の翻訳には古い日本語もあり、宣教師にとって難しかったようだ。私はできる限り平易な日本語に訳しました」
朝岡氏は、牧会を始めて数年たった時、説教者として行き詰まりを感じ、教理、カテキズムを学び直した。竹森氏や吉田氏の訳した「ハイデルベルク」を書き写すなどしていた。神戸改革派神学校でも学び、「これを伝えればいいのだと確信した」と話す。その後赴任した現教会でも教理の学びを始めた。
吉田氏は「信徒からどのような反応があったか」と質問。「歴代の牧師が整えた土壌があり、信徒は学びに前向きだった」と朝岡氏は応答した。一方、「様々な教会では、『お勉強はいい』『聖書以外のものを学ぶ必要があるのですか』といった否定的な反応が多いという。学ぶ喜びを味わう手前で阻まれる現状がある」と懸念を表した。
朝岡氏が工夫したのは少人数の週日の祈祷会で学びを始めたこと。さらに日曜の夕拝で「ハイデルベルク」の名は出さず、主の祈り、使徒信条、十戒について「ハイデルベルク」の内容を学ぶようにした。「信仰がクリアになる体験を通して、聖書と教理が別物ではないことが分かってきます」(つづく)【高橋良知】