「和解」テーマに東アジア各国から社会人364人 「新しい“私たち”」となる旅へ EAGC 東京で開催

写真=閉会式で。スクリーン中央で抱き合うのは、韓国学生団代KIVF代表のキム・ジョンホ氏(左)とEAGC実行委員長

写真=閉会式では各国の民族衣装などを着て集まり、共に賛美し、祈り合った

 出口の見えない争いがあるとき、性急な解決を求め対立を深めるか。あるいはあきらめて目をそむけるか。「和解(Reconciliation)」をテーマに開催されたIFES(国際福音主義学生連盟)東アジア卒業生大会(EAGC、8月9〜13日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センター)では、このような問題を東アジアの社会人364人が共に考え、聖書と実践から学んだ。聖書講解を菅家庄一郎氏(OMF北東アジア地区国際主事)、主題講演をクリス・ライス氏(米国・デューク大学東アジア大使、メノナイト中央委員会アメリカ共同代表)が担当。各国・地域の報告、証しのほか、様々なテーマの分科会やツアーなどが実施された。【高橋良知

IFESは学生伝道団体キリスト者学生会(KGK)が加盟する国際組織。EAGCは各国の卒業生会が主催し、1985年から3年に1度開かれてきた。日本での開催は2001年大阪大会以来18年ぶりだ。

 従来は職場や日常生活に関わるテーマが扱われてきたが、今回は個人や社会、国家にある「破れ」「争い」を直視しつつ、イエス・キリストにある和解の希望に目を向ける内容となった。準備委員長は「東アジアの現実の中で何をすべきか考えたとき、『和解の務め』(Ⅱコリント5章18節)ではないかと考えるに至った」と語った。実際EAGC直前には、日韓関係をはじめ、東アジアの国家間、あるいは国内の対立、分断が次々と起こっていた。EAGCでは、個人と神、職場、家庭、教会、社会、国家間の和解に同時に取り組み、「嘆き」や共に歩む「旅」を大切にし、国や民族を超えて神によって贖われた「新しい“私たち”」を目指した。

 初日、2日目は創造から堕落、十字架の贖い、和解、神の国の完成への全体像を確認しながら、地上にある「破れ」と「争い」の現実を見つめた。

 開会のメッセージでKGK総主事の大嶋重徳氏は、「人間は神との交わりを断ち、働くことは苦痛となり、神の国建設という生きる目的を見失った。神の国の代わりに自分の国を求めるようになり、争いが生まれた」と述べた。だがイエス・キリストによって神と人の和解が完成し、「破れの現実がある地上で、もう一度神の国建設の使命に参加する」という視点を示した。山上の説教の「平和をつくる者」に注目し、武器を取るのではなく、「第3の道」を祈り求める姿勢を語った。和解のために必要なこととして、相手を理解し学ぶこと、神の家族として集まること、続けることを勧めた。

 2日目午前は菅家氏が、神が創造された完全な世界という出発点を確認し、堕落と和解の土台を述べ、「神の家族、社会、すべての領域にシャローム、希望をもたらす」ビジョンを示した。

 OMFでは、かつて言葉で伝道することを強調していたが、2015年以降のミッションステートメントで、より包括的な視点で「人々にイエス・キリストのよき知らせの豊かさを、あますところなく分かち合」うという表現をするようになったことを紹介。相手の文化、状況を理解すること、環境問題など被造物全体のケアをすること、教会の中にある痛みと悔い改めの必要にも触れ、「神様は一人ひとりをこの和解の務めに召す」と励ました。

 夜はライス氏が、神のもたらす新しい現実を示しながら、「嘆き」への取り組みを勧めた。

 3日目のツアーは日曜日。日本の光と影、「嘆き」に焦点を当てる旅と位置づけ、グループごとに、各地の教会で礼拝をし、選んだ各地域を訪ねた。歴史的政治的課題が目立つ靖国神社や国会議事堂のみならず、一見華やかな秋葉原、渋谷などでも社会分断や人々の心の渇きに注目した。これらを受けて、大会後半では、和解への希望、和解の大使となることへの励ましが語られた。(ライス氏の主題講演やEAGCの一部の詳細は次号以降に