憎しみ・自責を超えて 舞台「赦し」公演に2,300人来場


戦後名古屋市などで活動した米国人宣教師ジェイコブ・ディシェイザーを題材にした舞台「赦し」(伊藤敬企画・構成・脚本・演出、戦争を語り継ぐ演劇公演実行員会主催)が8月22日から25日まで、名古屋市東区の東文化小劇場で公演された(8月11日号参照)。全8公演は満席の回も多く、のべ2千300人が来場した。
舞台で中心になったのは、戦後米進駐軍のジープに父親をひき殺されたその娘千枝とその家族だ。家族の米国への憎しみは深かった。ところがその家族の隣にディシェイザー一家がやってきた。千枝にとって殺意を抱くほどの葛藤が始まるが、様々な人の出会いで、和らいでいく。
明るく見えたディシェイザーにも深い重荷があった。彼は真珠湾攻撃への報復としてドゥリトル隊に参加し、名古屋を空襲。その後、日本軍の捕虜となり、収容所で聖書に出合い、赦しと献身を経験。だが舞台後半では、かつて自分が空襲した名古屋で片手が不自由になった青年と出会い、自責の念に駆られる。様々な人々の戦後の姿と内面を深く堀り下げる舞台だった。終始登場する聖書の言葉、賛美歌、クリスチャンの祈りは、「赦し」と希望を伝えていた。
原案・原資料担当の加瀬豊司さんは、「役者の皆さんも『赦し』のテーマを深く受け止めて演技をしてくれた。近郊の教会関係の皆さんも来ていただき、中には『自分の献身の思いと重なる』と涙ぐむ先生もいました」と語った。