映画「一粒の麦」今秋全国順次公開 日本初の女性医師荻野吟子の生涯描く

 今日と比べて女性の社会的地位がはるかに低かった時代、荻野吟子は日本で初めて女性として医師になり、生涯をかけて女性の地位向上に尽力した。この吟子の生涯を描いた映画「一粒の麦 荻野吟子の生涯」がこの秋、東京を皮切りに全国で順次公開される。
製作は、長年にわたって平和や命の大切さをテーマに映画を作り続けてきた「(株)現代ぷろだくしょん」。近年の代表作「筆子その愛」「大地の詩」「母」などに続き、今作も山田火砂子監督がメガホンを握った。配役は、主演の吟子役には若村麻由美、夫・志方之善(しかたゆきよし)役に山本耕史。その他、柄本明、佐野史郎、賀来千香子ど、豪華俳優陣が顔をそろえる。
近年、大学の医学部で女性の合格者数が不正に操作されていたというニュースが、「一粒の麦」製作のきっかけとなったと話す山田監督。「いまだに明治の価値観なのかと驚いた。男尊女卑著しい時代に女性解放のために立ち上がった人がいたことをどうしても伝えたかった。吟子は生涯子どもを産めなかったが、彼女に続いて多くの女医が誕生した。〝一粒の麦〟が、今日も多くの人の心の糧になりますように」と期待を込める。

荻野吟子とは
1851(嘉永4)年、現在の埼玉県熊谷市生まれ。最初の結婚で夫を介して病気に罹患し、子どもが産めなくなったため協議離婚となる。この療養の際、男性医師の診察を拒んで命を落とす女性の多いことに胸を痛め、医師となる決意をしたと言われる。
男女平等を謳うキリスト教に傾倒して受洗し、廃娼運動や、二番めの夫・志方之善と共にキリスト教徒による理想郷建設も試みた。1913年、63歳で死去。吟子の愛唱聖句は「人その友のために己の命を棄つる、之より大いなる愛はなし」(ヨハネ15・13、文語訳)であり、〝一粒の麦〟となった吟子の生涯は、まさにこのことばを体現したかのようであった。
現代ぷろだくしょんでは、映画制作費の一部となる「制作協力券」を一枚千200円で販売し、協力を募っている。協力券は一回分の映画鑑賞券として使用できる。詳細、試写会予定、公開情報等問い合わせは同社ホームページURL http://www.gendaipro.jp/まで。