10月6日号紙面:横浜・寿町 横浜カナンキリスト教会 困窮者に生きる根本伝える
横浜・寿町 横浜カナンキリスト教会 困窮者に生きる根本伝える
横浜市のJR石川町駅で下車し、港側を見れば、にぎやかな横浜中華街、華やかな元町、閑静な山手がある。一方西側はまったくちがった景色。多くの野宿者(ホームレス)が身を寄せてきた寿町がある。しかし近年この町には、新しいケア施設、交流センター、宿泊施設、賃貸住宅などが立ち並ぶようになり、「福祉の町」とも言われるようになっている。9月、記者は数年ぶりにこの町を訪ねた。
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所在なさげにゆっくりと歩く住民たちの姿は以前と同じだ。一方で、町行く人に声かけや挨拶をする女性や、車椅子を押すケアワーカーの姿も目立つ。明るさ、賑やかさが増したように感じた。外国人向け宿泊所もあるらしく、海外のグループの姿も見かけた。
しかし、まだまだ生きづらさ、実際的な生活の困難、孤独を抱えている人々の様子もうかがえた。この町で伝道活動をする横浜カナンキリスト教会の佐藤敏牧師は、「自分で生きようとしてもできない人が多い。教会のスタッフが一緒に年金や生活保護の窓口まで連れ添うこともある。福音を語ること、実際の生活を助けること両方が教会の大切な働き」と語る。
場所は変わったものの、炊き出し(路傍福音給食伝道集会)の様子は、数年前と同様だった。まだまだ日差しの強い9月初旬の昼間。公園の日陰に、即席のダンボール座布団を敷いて、50人ほどの人たちが、佐藤牧師を待っていた。
賛美、証し、メッセージ、その後に食事だ。「皆さんにとって食事は死活問題。様々な団体の炊き出しで、なんとか食いつないでいるという状況の人も多い」。
「朝から何もたべていない」と漏らす人もいた。それでも、メッセージ抜きで食事だけに来るという人はほとんどいなかった。「集会が定着した。食事だけでなく、感謝な話を聴きたいという人もいると思います」
メッセージ中、人々は静かに耳を傾けていた。
−人間は様々な、思想、哲学を生んだが、それは人間の側の考えであり、救いはない。天地を創造された神様に本当の真理がある。
−人間には罪がある。それは実際に盗んだり、殺したりするだけではなく、心に思うだけでも罪。その罪の根本は神無き状態にある。霊という神意識を持つことが根本的解決であり、イエス様を私の神、私の救い主と信じて従う(すがる)ことが
罪からの救いです・・・ 「エピソードや末節のことよりも根本の生きる課題、意味を語ります」
食事をみな黙々と食べていた。中にはいろんな人と話そうとしている人もいたが、話題があちこちに飛んでしまい、続かない。新しい人も加わっている。「30代くらいで、入れ墨をした人など、どこかから流れ着いたのでしょう」。それぞれが生きづらさを抱えていた。
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可能性ゼロでなければ何でもやる
かつて寿町で野宿者だった田村隆さんは、現在は信徒伝道者として教会で奉仕するほか、日夜町に出て様々な人と関わっている。町を案内してもらったが、行き交う人々、福祉関係の人たちとも顔なじみのようで、挨拶や会話をしていた。
教会に通う車椅子の二人と日常的にも関わっている。「彼らは担当のケアワーカーのほかは、ほとんど人と関わりがない。礼拝では私が出迎えもしています。これも私にとって聖書の『良きサマリア人』を実践する働きです」
道端にポツリと座る人にも声かけをしていた。「挨拶だけではなく少し会話もする。毎回声かけをすれば、顔なじみになる。困っていることがあれば相談もできる。何かあったときの助けになる。解決できないことがあれば、『神様がいる。祈ってみよう』と勧めることもある。教会の集会や礼拝につながる人もいる。可能性がゼロでなければなんでもやっていきたい」と語った。
ほかにも教会の信徒スタッフたちは、日中のお茶会などを主導したり、デボーションなどで、個人伝道に励んでいる。
同教会では近年、より市内中心部の桜木町駅前でも集会をしている。ここでも野宿している人たちがいるのだ。
同教会の徐蓮熙(ソ・ヨンヒ)牧師は「もともとは、寿町で支援をしていた逃亡癖のある女性を探して桜木町を回ったことがきっかけ」と経緯を話す。桜木町の様子をみて、「寿だけでなく、ここでもやるべき」と思った。
逃亡癖のあった女性は、知的障がいを抱えつつ、万引きや売春などを繰り返していた。佐藤牧師は「何度悔い改めても、繰り返す。それでも何度も赦していく。ここに集まる人たちの間では、喧嘩やさまざまなトラブルも起きる。普通の教会では受け入れるのが難しいと思われる人が多い。これらをできたのは私たちの力ではなく、イエス様、聖霊様が働いたから。何度も奇跡を体験している。毎日ハラハラするが、多くのドラマをみせてもらっている」と語った。
「みな困窮者なので、私たちの教会だけで働きはできない。様々な教会のクリスチャンの捧げものによって支えられている」と感謝する。
佐藤牧師は、5月から1か月入院を経験した。「弱さを実感した。しかしスタッフは立ち上がり、毎日祈りなんとか教会の働きが守られた。ほかの人にゆだねることを学んだ。入院中は神様と向き合う時でもあった。信じるという言葉は、信じると共に従う(すがる)、ということである。物質的な事だけでなく、イエス様、聖霊様が内住し、何をすべきか教えてもらう。神様に求めてすがることが大事」
牧師夫妻を含め、スタッフの高齢化も心配だ。「まだ子どもも中学生。スタッフたちは病気や障害も抱えている。人間的なことではなく、イエス様によって生まれ変わり、『受けるよりも与える方が幸い』(使徒20・35)とキリストの弟子となった。この教会での恵みは、野宿生活者だけではなく、多くの人にとって生きるヒントになるのではと思う。様々な教会で証しや説教の機会があれば奉仕していきたい。ぜひお祈りください」
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