「ラグビーワールドカップ2019」が開幕し、各地で熱戦が繰り広げられる中、元オールブラックス代表と元全日本代表が顔を合わせた。2019ラグビーワールド杯応援企画「ティモ・タガロア氏&桜庭吉彦氏レジェンド対談」(日本国際スポーツパートナーシップ〔JiSP〕、ENGAGE2019FCA、桜庭吉彦プレゼンツ主催)が9月27日、東京・千代田区神田駿河台のお茶の水クリスチャン・センター4階東京プレヤーセンターで開かれた。テーマは「ネバーギブアップ〜レガシーを受け継ぐ者〜」。

ティモ氏はニュージーランド出身。ポジションはスリークォーターバックス(WTB)の左ウイングで、オールブラックスと西サモア代表で活躍。1991年のワールドカップ・イングランド大会では、アルゼンチン戦で二つのトライを決めた。日本プロリーグ「トヨタ自動車ヴェルブリッツ」でも活躍。熱心なクリスチャンで、引退後はラグビーと福音の素晴らしさを多くの人々に伝えている。
桜庭氏は87年、95年、99年とワールドカップに3回出場した元全日本代表のフォワード・ロック(LO)。現在は釜石シーウェイブス・ゼネラルマネージャー、2019年ワールドカップ・アンバサダーを務める。以下は対談の要約。
○日本での開催の思いについて。
桜庭 95年の大会で日本はニュージーランドに17対145で大敗。20年後の2015年イングランド大会で日本は南アフリカを破るという出来事が起こり、今、日本でのワールドカップ開催へとつながっている。この大会を機に、ラグビーが国民のスポーツとして育っていく契機になればと願っている。
ティモ 日本人の、ワールドカップを開催できた喜び、活気が好きだ。世界が日本に注目し、世界からいろんなラグビー選手が来て日本を体験し、日本が他国から来ている人たちと一緒に一つのことを体験できるいい機会になる。
○ラグビーの底上げには子どもの教育が大切。教育で大事なことは。
桜庭 ラグビーはたくさんポジションがあり、それぞれ特徴がある。子どもたちにも個性というのがあり、それぞれの個性を認め、伸ばしていくことが大切だ。自分の強い部分に気づくと、弱い、足りない部分を補いたくなってくる。まずは個性を伸ばして教育することが大事だと思う。
ティモ ラグビーで大事なのはキャラクターだ。キャラクターはチーム一丸でやることで生かされていく。いろいろな体格の選手が関わっていることがラグビーの面白いところで、その中でキャラクターが発揮される。正直であることも大事。壁にぶつかった時も自分の悪いところを認め、さらけ出すこと。互いに信頼し合い、赦しをもらうことが大切だ。
○ラグビーをする上で何が大切か。
ティモ 私にとって大切なのは、ゲームを楽しむこと。楽しむことはスポーツに取り組む姿勢につながる。もう一つ大事なのは信仰だ。フィールド内でも外でも、信仰が大事だ。
桜庭 ラグビーは、人に思い切りぶつかれるのが魅力だ。楕円のボールを持って思い切りぶつかれる。ラグビーによって自分の体格、強さが役に立つ。ラグビーには自分の居場所がある。認められることで成長もし、モチベーションにもなる。気が付いてみたら、そういうことを考えながらラグビーをする習慣ができていた。
○選手時代でつらかったことは。
桜庭 頑張っているつもりだけれど、なかなか結果が出ない時。でも振り返ってみると、頑張ったつもりであって、やり切れてなかったと思う。そういう自分の足りないところに気づかせてくれたのは、仲間、先輩だった。ラグビーを通じて仲間ができ、仲間のアドバイス、励ましで自分も成長していった。
ティモ 私はけがが多かったので、けがで選ばれないのがつらかった。またメディアからのプレッシャー。メディアは本当でないことを伝えることがある。活躍している時は『いい選手だ』と持ち上げ、よくない結果を出すと、『何て選手なんだ』とたたかれた。
○自分の中で支えになっているものは。
桜庭 できないことを割り切ること。自分でコントロールできないことは考えても仕方がない。コントロールできることを中心に行動し、考える。そういう心構え、考え方を、いろんな経験を経ながら持つことができた。
ティモ 信仰だ。私の場合、考え過ぎることがよくあった。新聞に書かれていることに影響され、その状態で試合に出てよくない結果になる。大事な試合に負けて、立ち直るのに時間がかかる。そんな時、友だち、家族のサポートも助けになったが、乗り越える手助けとなったのは、やはり信仰です。
○明日の日本対アイルランド戦について。
桜庭 ティモさん、日本代表は勝てますか?
ティモ (しばらく考えてから確信をもってはっきりと)イエス。すごくいい試合になる。今まで積み上げてきたものをそのまま出せば、相手にプレッシャーをかけられ進んでいけます。
桜庭 私もティモさんの言うように、信じることが結果につながると思います。*翌日の日本対アイルランド戦では、日本が19対12でアイルランドに歴史的勝利を収めた。