10・21緊急記者会見 〝違憲状態〟の天皇の即位儀式に抗議 〝国事行為で既成事実化〟警鐘

天皇の即位儀式「即位礼正殿の儀」が10月22日、国事行為として行われた。11月14、15日には「大嘗祭」が公的行事として行われる。それを受け、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(星出卓也委員長)は「即位礼正殿の儀」が行われる前日の21日、違憲状態の天皇即位儀式に抗議する「10・21緊急記者会見」を、東京・新宿区西早稲田の日本キリスト教会館のNCCで開かれた。会見に臨んだのは、岡田武夫(カトリック名誉大司教)、金性済(キム・ソンジェ、NCC総幹事)、上中栄(日本福音同盟〔JEA〕社会委員長)の3氏。

岡田氏は昨年2月22日付けで日本カトリック司教協議会が発表した「天皇の退位と即位に際しての政教分離に関する要望書」を読み上げた。その要望とは、「天皇の退位と即位に関する一連の行事にあたって、日本国憲法が定める政教分離原則を厳守し、国事行為と皇室の私的宗教行事である皇室祭祀の区別を明確にすること」というもの。岡田氏は「国家神道の担い手として、皇室が天皇という重要な立場に就任する時、国家神道の伝統、大嘗祭という行事を国家が行うことは、明白に日本国憲法第20条、89条に違反している」と指摘。太平洋戦争時、「この戦争は東アジアに恒久の平和を建設するための聖なる戦争であるから積極的に協力するように」と奨励した教会指導者がいたことにも触れ、「こういう教会の過ちを二度と繰り返さないという決意のもと、世界に誇れる宝である憲法9条、20条を断固守るためにも、この曖昧な天皇の退位、即位のあり方に異議を唱える。天皇が神道儀式で即位することは、すべての人の基本的人権である信教の自由を侵犯する恐れがあると考える」と語った。
金氏は、10月9日のNCC第40回総会期第7回常議員会で発表した「天皇代替わりに関するNCC2019年宣言」を読み上げた。宣言は①皇室神道に基づく宗教的儀式に国が関与することは、「国家神道」の復活を意味し、私たちの信仰と良心の自由を脅かします、②私たちは天皇を神として参拝し、戦争協力した教会の罪責を告白します、③イエスのみを主とする信仰の告白に、私たちは立ち続けます、という三つの宣言をまとめたもの。
金氏は「1945年より前、国家神道は諸宗教を超える政(まつりごと)であり『政』の世界であるから、国民儀礼として受け入れるという形で日本独特の政教分離を実施した。キリスト教会もそれを受け入れてしまった。今、宗教性の高い国家神道儀式が、国の勝手な解釈で習俗伝統とされ、全国民に強いられるという事態がまた復活してきているという危機感を覚える」と指摘。「私たちがこのことに目を閉ざしてしまうなら、キリスト教会は45年以降に罪責告白した過ちを未来にわたり繰り返していくことになる。天皇教の中のキリスト派ということにならないよう、神の前に悔い、否は否と言っていくキリスト教会でないといけない」。また、「戦後74年間、韓国、北朝鮮、台湾、中国という東アジアにおける平和がいまだに成立しないことの根底には、国家神道の歴史を戦後根本から問い直し克服できなかった日本の政治の有り様と無関係ではない」とも語った。
上中氏は8月5日に発表した「天皇代替わりに際してのJEA社会委員会声明」を読み上げた。声明では「殊に大嘗祭は、新天皇が天照大神を迎え寝食を共にして、天皇霊を受けて神になるとされる、純然たる宗教儀式です。宗教的要素を含む儀式の多くが国事行為として行われることは、憲法の政教分離原則違反です」と指摘。「天皇代替わりの諸儀式に国が関与することは、皇室の宗教儀式は宗教ではなく、日本の伝統文化と言い換えるに等しく、なし崩し的に政教分離原則違反を既成事実化すること」と警鐘を鳴らす。
上中氏は「日本国憲法が保障する自由は、日本国民が自分たちで勝ち取ったわけではない。ならば勝ち取り続ける努力が必要だ」とし、「日本人が諸外国にみられる市民運動に冷ややかなのは、自由を勝ち取った経験がないから。またそれをしようという意欲や問題意識もない。平和や信教の自由、政教分離原則は、長い歴史をかけ、また多くの犠牲を払って、キリスト教社会の中で勝ち取られてきた価値観。我々日本のキリスト者が、それを日本社会でどう守り、表明していくのか。天皇の代替わりに際して、こうしたことを自分自身の課題にすると共に、自由を広く訴える者でありたいと願っている」と述べた。