福音功労賞に阿部氏、下稲葉氏、横田氏 社会福祉、全人的医療、超教派宣教

前列左から阿部氏、下稲葉氏、横田氏と夫人の千代子氏

 第25回日本福音功労賞顕彰式(日本福音振興会[村上宣道会長]主催)が11月11日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開かれた。横須賀基督教社会館会長の阿部志郎(93)、栄光病院名誉ホスピス長の下稲葉康之(81)、油山シャローム教会名誉牧師の横田武幸(85)の3氏が顕彰された。【髙橋昌彦】

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 阿部氏は、日本の社会福祉事業を牽引し、横須賀基督教社会館、横須賀刑務所ボランティア、在日韓国人老人ホーム設立など、福祉の現場でキリスト教精神を証しした、として顕彰された。1926年、東京に生まれる。東京商科大学(現一橋大学)において社会福祉への道を選び、卒業後米国ユニオン神学大学大学院に学ぶ。明治学院大学助教授を経て、57年社会福祉法人横須賀基督教社会館で現業に従事し、50年間館長を務める。現在同館会長。2003年神奈川県立保健福祉大学の初代学長として勤務、現在同大学名誉学長。日本ソーシャルワーカー協会会長、社会福祉学会会長、日本キリスト教社会事業同盟理事長、東京女子大学理事長を歴任。日本社会事業大学、青山学院大学名誉博士、朝日福祉賞、石井十次賞受章。04年には日本キリスト教文化協会から「キリスト教功労者」として顕彰された。

 挨拶の中で阿部氏は「受洗後のYMCAの大会で説教者から『どんな時でも教会にしがみつけ』と言われた。軍隊に入隊した時も、一度取り上げられたポケット聖書が返された。これからも教会につながっていたい。教会につながっていればこそ、今の自分がある」と語った。

 下稲葉氏は、末期医療の現場に携わり、緩和ケアの啓発、普及に取り組み、牧師として福音宣教に従事した、として顕彰された。1938年、鹿児島県に生まれる。九州大学医学部在学中にクリスチャンとなる。67年、病院勤務をしつつ福岡市に香住丘キリスト福音教会を創設し、伝道者として奉仕。80年、県内の亀山病院(後の栄光病院)勤務となり、末期医療(ホスピス)を担当。末期患者のQOL(生活と命の質)の向上を目指して緩和ケアの現場に関わるとともに、その啓発、普及に取り組んだ。現在、栄光会グループ会長、社会医療法人栄光会、栄光病院名誉ホスピス長、社会福祉法人栄光会理事長、NPO法人栄光ホスピスセンター 理事長、香住丘キリスト福音教会協力牧師。

 挨拶の中で下稲葉氏は「栄光病院のホスピス抜きに自分の人生を語ることはできない。今まで関わった1万人近い患者に『こちらこそありがとうございました』と言いたい。自分の知らない死を経験した患者は人生の先輩。これからの人生も、イエス様に、患者に仕えていきたい」と述べた。

 横田氏は、福岡教会を牧会するとともに、九州地区の超教派宣教活動を導き、韓国教会とも連携して牧会者の養成に努めた、として顕彰された。1934年、香川県に生まれる。信徒の路傍伝道を通して救われ、関西聖書神学校で学ぶ。63年に日本イエス・キリスト教団より九州伝道の任を受け派遣され、九州全県に教団の教会を設立するビジョンに邁進し、2008年に実現した。韓国釜山の水営路教会との親交から生まれた牧会者セミナーを通して、多くの牧会者に祝福と成長をもたらした。教団委員長、関西聖書神学校理事長として奉職、超教派の働きでは日本福音連盟理事長、九州宣教協力会会長、九州ケズイック・コンベンション委員長、九州聖会委員長などを勤めた。現在、福岡教会名誉牧師、教団顧問。

 横田氏は挨拶で、故本田弘慈氏から九州伝道に推し出された経緯に触れ、「結婚するなら、信仰の人と結婚した方がよい」と夫人とともに伝道してきた歩みを振り返り、「主の福音伝道は生半可なことでは出来ない。しかし主の働き。主がその内にいまして奇跡を行う。自分はこの賞にふさわしい者ではないが、このことで主の御名があがめられるなら、私の愚かさも役立つだろう」と語った。