AI時代を議論する 青学シンギュラリティ研究所で展示、トークイベント

 人工知能(AI)や情報科学技術の社会的な影響について、キリスト教系の大学などでも取り組みが進む。2018年に開所した青山学院大学シンギュラリティ研究所では、11月から「来るべき世界:科学技術、AIと人間性」と題した現代アート展示(8組出品)および、連続トークイベント、ワークショップなどを学生、一般に公開した。日頃同研究所が取り組むテーマを様々な角度で知らせる機会になった。

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 学生食堂の真ん中に現れた巨大なトラの頭、奇妙なオブジェが動き回るアニメーション、中庭に浮遊した謎の物体、一面コラージュ模様の壁…。展示初日、キャンパスを行き交う学生たちも驚いたように振り返ったり、立ち止まって意味を考えるなどしていた。

 主会場に入ると、中央にソファ、カーペット、テレビを置いたリビングルームのようなエリアがあった。テレビ画面には、チャットのような会話のやりとり。ネット上の攻撃的な言葉を検索して拾ったり、マイクで周囲の発話を集めて文字化したり、キーワード検索した結果などが表示されている。それらを複数台のスマートスピーカーが音声化していた。「ネットだと攻撃的な発言を平気でできる。それを音声にしたとき、そのひどさが実感される」と作者のノガミカツキは語った。タイトルは「Monologues」。一人ひとりの発言が、独り言(モノローグ)のようになり、会話が成立しないネット状況が表される。リビングルームという日常的な場でディストピア(望ましくない未来)的なことが起きていることも表現されているようだ。「どれもすでに日常にあることだが、作品にまとめると滑稽になるということがせめてもの救い」と話した。

 ほかにも、今年役割を終えたスーパーコンピューター「京」やその継承機「富岳」(作品では「富嶽」)の墓場を想定した「計算塚」、パソコンのマウスポインターをモチーフにした作品などがあった。五感の拡張をテーマにしたワークショップなども実施された。

 展示オープニングで同研究所のマクレディー・エリン所長は、同研究所が情報科学、ロボット工学などと関わりつつ、人文学の視点でAIを研究しているという特徴を語った。「主に三つの方向でプロジェクトを進めている。一つ目はAIと社会。AIがどのような不公平さをもたらすか、バイアスを考える。二つ目はAIと人間。AIと人間はどう違うのかだ。三つ目はAIと表現。AIは、新しい道具であり、考え方であり、人間の能力の拡張でもある。これらを踏まえてこの展示を企画しました」

 展示は12月15日まで東京・渋谷区の青山学院大学青山キャンパスで開催。時間は午前11時〜午後5時。最終日をのぞく会期中の日曜日、祝日は展休日。

 トークイベントはAIの自律性、EUのAI倫理方針、クリエイティビティ、地図などのテーマで開催。12月7日は自主ゼミによる学生企画で企業の担当者を招き、AIサービスの戦略を聞く、13日はAI倫理、14日アースブックプロジェクト、近未来の図書館などについて扱う。詳細はウェブサイトhttps://www.agusi.jp/

 本紙新年号で「人工知能特集」予定。【高橋良知