病気の子どもたちが伝える愛 こどもホスピス応援プロジェクト

淀川キリスト教病院(以下・淀キリ)の「こどもホスピス応援プロジェクト」(こどもホスピス応援団主催)が2月15日、兵庫県神戸市東灘区の母の家ベテルで開かれ、支援者や関係者らが集まった。2012年に日本で初めて開設されたこどもホスピスは、小児がんや難病の子どもたちが家庭的な環境の中で体と魂のケアを受け、家族も手厚くサポートする施設。淀キリを通してこの働きの意義と必要性に注目した各地の病院で、こどもホスピス設立が進んでいる。
「今日のテーマは“みんなで生きる”です」。初めに小児科部長・副院長の鍋谷まことさんが、こどもホスピスの進捗状況について説明。こどもホスピスが日本に紹介された当時、どこの病院も多額の赤字を予想して及び腰だったが、「黒字にならなくてもいいからやらないといけないんだ」という使命感を抱いて設立に踏み切ったと振り返った。「これは神様のミッションだな」と、運営を任された鍋谷さんは考えたという。多くの人の応援を得て、現在経営も順調だ。何より多くの子どもたちと家族が平安に過ごせるよりどころとして、淀キリのこどもホスピスの信頼は絶大だ。
鍋谷さんは患者の少年から誕生日にプレゼントされた紙製の手作りケーキを、スクリーンで紹介した。病気を受け止めてから最期まで前向きに生きた少年の姿に励まされたという。「闘っている子どもたちと、僕たちが思いや時間を共有して手をつなぐことで、その子に何かしてあげる、というより、こちらが何かもらっているなというのが実感です」
淀キリで低体重児として生まれて以来ケアを受けてきた輪野水葵さんが、自らの病気を通して大きく成長できたことを手作り絵本で表現していると発表。「『私は自分のことが大好き。あなたも自分のことを好きになって』、これを伝えたくて絵本を作り続けています」
チャプレン室スタッフの久保のどかさんは「病棟の子どもと共に」というタイトルで、子どもたちと家族の魂のケアに尽力する日々を語った。「あるお母さんが、ここはキリスト教で、息子の死について、天国について話せるところなのがうれしいと言われました。天国に連なるいのちと希望に立ち続けることの大切さを教えられました。これからも子どもたちやご両親と良い関係を築きながら、たくさんの方々と共に子どもたちを見守っていきたいです」
京都大学医学部付属病院でチャイルド・ライフ・スペシャリストとして働く上山美津穂さんが体験を話した。病気の子どもたちと家族に寄り添う、日本で45人しかいない専門職の一人だ。「学生時代、その子のために何かするより、一緒にいることが大事だと教わりました。不安な子どもたちを、そのままでいいんだよと受け止めながら、ご家族の相談にも乗りながら、子どもたちのためにより良い環境を整え、寄り添っていければと願っています」
応援団の一人でピアニストの田中恵子さんが、ユーモアあふれるトークと音楽で会場をさらにホットに。「私たちができることでお母さんたちを励ませたら」と、話していた。住吉山手キリスト教会の子どもたちの歌とダンスに会場も唱和して、温かな拍手が湧き起こった。