日中韓と「神の国」の“架け橋”に 第10回を開催 東アジア青年キリスト者大会

 2011年の東京開催を皮切りに、韓国、中国(香港)、と開催されてきた東アジア青年キリスト者大会が第10回(2月12〜15日、千葉県立手賀の丘少年自然の家、2月23日号で一部既報)を迎えた。毎回、日中韓の政治情勢は険しい局面にあったが、青年たちは国籍、民族を超えて共に学び、賛美し、祈ってきた。第10回では10年を振り返りつつ、今後が展望された。【高橋良知】

 会場への送迎バスの待合所に、スーツケースを引いた青年たちが集まっていた。挨拶をすると、片言の日本語が返ってきた。宣教チームとしてやってきた香港人、日本在住の中国人留学生、日本人など。韓国は、コロナウイルスの影響で海外渡航の制限があったが、少人数ながら参加者がいた。中国方面からの欠航が相次ぎ、遅れて来場する人たちもいた。消毒液を手に擦り付けて会場のホールに座ると、半数近くはマスク姿だった。

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 集会の司会を担当した神田篤さん(単立・綾瀬東部教会)は、「どんな困難があっても、必ず日本に来て大会に参加したいという皆さんの声があった」と話した。「日中韓の間には過去から現在まで様々な痛みがあり、それぞれの国内外で新たな痛みが生じている。無意識、あるいは意識的に心に蓋をしていないか。今回の大会に大いに期待し、楽しく深い交わりをしたい。一人ひとりをここに集めたのは主なる神様。皆さんが、より神様の視点でものごとを見られるように。神様に触れられるように」と勧めた。

 オープニング・メッセージは同大会発案者のイ・スンジャンさん(韓国アルム村教会主任牧師)。「日中韓の兄弟姉妹が水を注ぎ、最初は小さかった集まりが、今はこれほどまで大きな集まりになった」と感謝した。

 10年間で同大会が大切にしてきたこととして、①福音主義の信仰、②青年の自発性、③神の国のビジョンの共有を挙げた。「聖書を神の言葉として信じ、そのまま生きる。福音主義は悔い改めを重要視した。御心に従って敬虔に生きたい。また全世界の人々に福音を述べ伝える使命がある」と述べた。

 神の国のビジョンについては、「福音派は、個人の救いを強調してきたが、神の国のビジョンも大事にしたい。『主の祈り』では、御国がこの地に来ますようにと祈る。『私だけ』『私の教会だけ』という視点になっていないか。神の国のビジョンをもつクリスチャンのスケールは大きい。神様の支配は教会だけだろうか。職場や社会でも、神様は王ではないだろうか。生活の隠されているようなところも光の中に出して、すべてささげていきたい」と励ました。

 「歴史の傷が癒やされること、互いの歴史を理解すること、民族、言語、文化の壁を超え、友となることも重視してきた。イザヤ書19章では、エジプト、アッシリア、イスラエルが共に礼拝し、全世界の祝福となる。日中韓も友となったとき、全世界の祝福となります」

 また「ローザンヌ誓約などにより福音派が社会的責任への目が開かれてきた」と触れ、「福音派の教会は孤児や外国人のための社会奉仕はしてきたが、社会の変革までは考えていなかった。社会の腐敗や経済問題、自然環境問題には無関心だった。社会にも良い影響を与え、全世界の祝福となりたい」と語った。

 同大会発足時からかかわる朴樹民(パク・スミン)さん(GP宣教会宣教師)は、「天国と地上、国と国、民族と民族、文化と文化、過去と現在が分断している。架け橋が必要。ある日本の神学者は『橋は踏みつけられるもの』と話した。踏みつけられる覚悟が必要。この大会で神様の様々な声を聞き、神様を喜ばせる橋の役割をできるよう祈りたい」と励ました。

霊的覚醒、正義、新型肺炎のため

 最終日前夜となった2月14日は、日中韓それぞれのために祈る時間があった。それぞれの地域の青年たちを囲み祈り合った。各国の痛みを覚えながら涙ぐみ、叫ぶように祈る姿もあった。各国の祈祷課題は以下のとおり。

【日本】

 1日本の霊的覚醒、リバイバルのため

 2キリスト者が伝道できるように

 3若い働き人が起きるように

【中国】

 1コロナウイルスが一刻も早く収まるように

 2中国の教会の一致、悔い改めのために。

 3苦難の中でもリバイバルが起こるように

【韓国】

 1神様の公義と愛を回復し、実行できるように

 2南北分断70年となる中、主にあって和解と平和に尽くせるように

 3韓国の社会が絶望の中で希望を持てるように

 日本からは「クリスチャン人口は1%以下、福音派は0・3%以下。人に伝えるとき、どう思われるだろうかと怖くなる。福音を恥としない勇気をもてるように。日本は少子高齢化が進む。人数は関係ないが、若い人の中から福音を伝える人起こるように」

 中国からは「右も左も分からない人がたくさんいる。あわれんでください。コロナウイルスに対して中国の教会が一つとなって祈れるように。中国の教会では2030年までに世界に2万人の宣教師を送る計画がある。2万人はかつて中国で殉教した宣教師の数。苦難の中で中国のリバイバルがあるように」

 韓国からは「主の恵みで豊かになった教会が貪欲の道に走った。世の人が教会を信用しなくなった。今年朝鮮戦争から70年となる。最近融和の流れがあるが、平和の道はまだ遠い。南北の平和は東アジアの平和でもある。韓国の社会には、高齢化や格差などの絶望がある。互いを尊重し合えるように、希望、正義、愛をもって神を慕い求めるように」と語った。

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 クロージングメッセージで、永井敏夫さん(J.Clay Mission Network代表)は、大会10年間で様々な人が、参加、運営者としてかかわってきたことに触れ、「長い距離、短い距離、それぞれだが共に走ってきた。このバトンをぜひ皆さんに受け取ってほしい。大会をつくる喜びをつらさも含め味わってほしい」と次世代に呼びかけた。

 同大会では、講義、メッセージ、多様な分科会(宣教、ディアスポラ、国際結婚、仕事、スポーツ、賛美、災害)、都内で歴史や宣教を考えるツアー(お茶の水、浅草、皇居、両国)などが催された。(詳細は次号以降で連載予定)