トルコ社会が揺れている。大統領が3月23日に、イスタンブール市長を逮捕し、これに対する連日デモを続けた市民を大量に拘束するという事態を各種報道が伝える。トルコ宣教に従事してきたアブラハム S 宣教師(仮名)が28日に本紙に寄稿し、トルコ社会の背景、宣教課題、などを解説し、祈りを要請した。

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メディアで「トルコ(Türkiye)」を検索すると、さまざまな言語で情報を得ることができます。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、総理の時代から22年間にわたり独裁政権を維持し、憲法改正や早期選挙を利用して政権を維持し続けてきました。2028年の大統領選挙までまだ3年もありますが、30年にわたる独裁政権、さらには終身統治を試みる可能性が高いとメディアは言っています。

 

「トルコ民族主義」、「イスラム教」、「政敵の排除と粛清」、「政治的策略」、「現代のスルタン」、「独裁者」など、彼を表す言葉は多くあります。トルコ南東部の地震、通貨価値の下落、為替レートの打撃、経済の悪化、外国投資の流出、物価の上昇、国際政治の圧力など、数々の危機に直面しながらも、優れた統治術によって政権を維持してきました。

 

エルドアン大統領が率いる正義開発党(AKP)に反対するフェトフッラー・ギュレンなどの政治勢力や、クルド民族主義の自治野党の反政府勢力を国家転覆を企むテロリストとして弾圧し、粛清を進めて刑務所に入れてきました。その過程で、トルコの教会、宣教師、東方正教会、ギリシャ正教会、アルメニア正教会、ユダヤ教に対する弾圧や制裁も強化され、入国拒否、ビザ延長の条件引き上げ、トルコ人牧師と結婚した宣教師の国外追放、アメリカ宣教師投獄など、キリスト教活動に対する迫害が特に続いています。私自身もその影響を受けたりして、現在も弾圧の状況は進行中です。

 

第一野党である共和人民党(CHP)の有力な大統領候補であり、イスタンブール市長のエクレム・イマモールが拘束されたことで、大都市を中心に市民がデモを行い、政府はこれを強権的に抑え込もうとしています。政治家たちは一斉にエルドアン支持を表明し、イマモールを政界から排除する粛清作戦(牢獄)が進められています。彼は終身刑に処されるか、フェトフッラー・ギュレンのように亡命する道しか残されていませんでしたが、すでにその機会を逃してしまったようです。釈放されるのでしょうか。

 

エルドアンは、巧みに民族主義とイスラム教を利用し、「金権政治」を行ってきたカリスマ的な大衆扇動者のようです。トルコの知識層や都市部の発展した市民は民主主義を望んでいますが、農村部の人々はエルドアンが提供する生活支援に依存し続け慣れています。今回は野党も一般市民も立ち上がっていますが、これまで数々の危機を乗り越えてきたエルドアンとAKPが、今回どのように動くのか注視する必要があります。

 

国のために涙を流し、祈り、犠牲を払う多くのクリスチャンと教会を通じて、神さまが働いておられることに感謝します。トルコにも教会があるし、色々な人種の教会もあります。クリスチャンは、福音的な聖書観に基づいて、政治と社会を祈りつつ、批判もし、時には断罪する必要があります。そして、キリスト教的価値観を土台として、救済と社会改革の姿勢を持たなければなりません。神さまに背く個人・民族・国家は、必ずさばきを受けるということを、私たちは歴史からよく学び知っています。

トルコのための祈りの課題

  1. トルコに民主主義国家が確立されるように  
  2. トルコの教会が困難な状況の中で信仰のレースを走り抜けることができるように  
  3. 宣教師の家族が守られ、宣教を通じて福音が前進するように  

写真= teamK https://www.photo-ac.com/main/detail/31511891/

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