【新型コロナ関連】隔離処置のフィリピン 外出も自由にできず 困窮する牧師たち レポート・豊田常喜 ウェスレアン聖書大学講師 イムマヌエル綜合伝道団派遣
5月14日現在、感染者数1万1千618人、死者数772人で、感染者数はASEAN10か国の中でインドネシアに次いで多いフィリピン。ドゥテルテ大統領は3月13日、「マニラ封鎖」を宣言し、マニラ首都圏への出入りを制限。各自治体で強化されたコミュニティー隔離処置(ロックダウン)が今も続いている。イムマヌエル綜合伝道団から派遣され、ルソン島中部に位置するパンガシナン州ロサリスにあるウェスレアン聖書大学で教える豊田常喜氏に、現地の様子をレポートしてもらった。
3月15日、マニラ首都圏に夜間外出禁止令が施行され、公共交通は停止、高速道路も封鎖された。17日にはルソン島全域に「より強化されたコミュニティー隔離」の措置が取られ、ロサリス市も夜間外出禁止(午後8時から翌朝5時まで)が徹底され、各家庭に一部ずつ外出許可証が配布されて、各家庭一人限定で生活必需品の入手、通院のための外出が許可された。さらに隣のバランガイ(自治体)から新型コロナによる死者1人、感染者1人が確認され、濃厚接触者の健康観察に伴い、2つの自治体が完全隔離されることとなった。そこからの外出は許可されず、代わりに政府から食料や必需品が支給された。外出がより厳重化され、外出許可証を確認する要所が増えた。
24日以降、マニラの幾つかの主要病院で立て続けに感染爆発が発生。政府は医療崩壊の危機に瀕していることを公式発表した。こうした医療機関の脆弱性が、いち早く各地域の封鎖を決断させた要因では、と思った。
私が働く聖書大学は休校にし、学生たちを帰省させることにし、休校中は各教師と学生たちがSNSを通じて連絡を取り合い、課題をこなすことで授業の埋め合わせをすることになった。子どもたちも学校が期末テスト前に休校となり、後日持ち帰りテストとなって、親の監督下でテストを受け提出。終業式、卒業式は封鎖期間が終わってから行うことになった。
ルソン島北部のバギオにあるアッセンブリー神学校には6人(うち1人は4人の子どものいる家族)の日本人留学生が学んでおり、3月の期末試験が終了次第帰国予定だったが、6人のうち5人は取り残されてしまった。マニラにあるナザレンの神学校にも2人(うち1人は妻と2人の子どもがいる家族)の日本人学生が学びの最中にある。
4月に入り、14日が隔離処置解除の日だったが、30日まで延長することが大統領府長官から発表された。それに伴い、教育機関においても5月の卒業式の自粛が各学校に要請され、ウェスレアン聖書大学もやむを得ず卒業式を中止。帰省している学生も戻れなくなった。8月に新学期が開始できるかが悩みの種だ。
日本と同様、礼拝自粛に追い込まれているウェスレアン教会の牧師たちは、SNSを使って礼拝を配信している。とは言え、フィリピン全体で経済活動が停滞し、献金も滞り、牧師とその家庭は困窮してきている。とりわけマニラは物価が高いため、貧しい人々、経済力のない地域の牧師家庭は逼迫(ひっぱく)した状況に追い込まれている。この中には私たちの教え子もいるため、祈らざるを得ない。
私たちは大学の敷地内に住んでいるので、敷地内なら比較的自由に出入りができる。夕方、涼しくなる頃にそれぞれ外出し、散歩や運動をしている。
【祈祷課題】▽非常事態によって帰省中の学生たちの学び、健康、霊性のために、▽封鎖されたフィリピン各地で衣食住に困っている人たちのために、▽家族が事故、事件、怪我、過ち、災害、疫病から守られるように。
写真左上=ウェスレアン聖書大学の教師らと。右端が豊田さん
写真右上=ウェスレアン聖書大学のキャンパス内
写真下=フィリピンの町の様子