6月7日号紙面:史上最強サイクロン インド・バングラデシュ直撃 避難所での感染拡大懸念 ワールド・ビジョンが緊急報告
史上最強級のサイクロン「アンファン」が5月20日、インド東部に上陸した。国際NGОワールド・ビジョン(WV)は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下・新型コロナ)の危機に対処しようと奮闘していた数千世帯の家屋や生活が破壊され、インドとバングラデシュの子どもたちは、ますますぜい弱な状況に置かれている」と、サイクロン被害拡大により新型コロナの感染リスクが高まっていることを緊急報告した。
ベンガル湾でスーパーサイクロンが発生するのは、1999年にオディシャ州を襲ったスーパーサイクロン以来20年ぶり。「100人以上が命を失い、300万人以上が避難を強いられた。避難所で窮屈なスペースを共有している生存者たちの多くは、新型コロナへの感染を心配している」という。
緊急報告では、12歳の少女ウルミさんのコメントを紹介。「毎年、サイクロンが直撃するたびに私たちは避難所に行っていた。しかし、今回はコロナウイルスの感染が怖かったので行かなかった。避難所は混んでいて、ほとんどの人はマスクをしていなかった。私の家族は学校に避難したが、そのほうが安全だと分かった」
被害が最小限だった地域でも、新型コロナの脅威がぜい弱な農村部の貧困層をさらにぜい弱にする可能性があると警鐘を鳴らす。「バングラデシュ南東部コックスバザールにある世界最大の難民キャンプでは、死者は出なかったが、7千世帯に影響を与え、約千500軒の仮設住宅の一部を破壊した。「コックスバザールは、今回は直接的な被害を免れたが、90万人近くのロヒンギャ難民が、ミャンマーを離れてから3年経った今も、竹とタープの仮設住宅で暮らしている。持続的な解決策が見つからなければ、次は運に恵まれず、多くの命を失うことになるかもしれない」と、WVバングラデシュのロヒンギャ難民支援担当ディレクター、レイチェル・ウルフ氏は話す。
インドとバングラデシュでは感染者が増え続けており、自身や人々をウイルス感染から守りつつ活動しているため、緊急援助が困難な状況だ。そんな中で両国で活動するWVは、食料、衛生キット、家屋の修理用品など、命を救う人道支援物資を子どもたちとその家族に届けている。復興支援として現金給付(キャッシュ・バウチャー)も行う。支援活動はバングラデシュ南西部のサトキラとクルナ、インド西ベンガル州のバサンティとコルカタを中心に行っている。
WV南アジア・太平洋地域担当責任者のチェリアン・トーマス氏は「新型コロナの影響による移動の禁止、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)は最も貧しい人々の生活と命をすでに脅かしていた。多くの家族が1日2回しか食事が取れていない中、サイクロンが事態をさらに悪化させた。洪水が水源を汚染し、死に至る可能性のある下痢などの感染症がまん延する可能性がある」と警鐘を鳴らす。
サイクロンへの緊急人道支援は今後、WVが両国において現在実施している新型コロナウイルス緊急支援の一部して実施する。新型コロナ緊急支援は、すでに110万人の子どもを含む270万人に届けられている。
この件に関する問い合わせはEメールyuka_domichi@worldvision.or.jp(ワールド・ビジョン・ジャパン広報担当・堂道有香)。