特別許可を得、食料配布に備えるB.F.P.のスタッフら(写真左右)

イスラエルは5月31日現在、新型コロナ感染者1万6千887人、死者数284人。感染拡大のピークは越え、現在1か月以上にわたる厳しい都市封鎖を徐々に解除し、経済活動を段階的に復帰させようとしているという。今のイスラエルの現状について、ブリッジズ・フォー・ピース・ジャパン(B.F.P.Japan)の高田篤美局長に話を聞いた。
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「今は封じ込めに成功して、社会生活が戻ってきている。一時クラスターも起き、3月が感染のピークだったが、4月になって落ち着き始めた。解除されて1週間以上経つ。家の周囲100m以上出てはいけないという時期もあったがそれは乗り越えました」
封じ込めに成功した理由は、感染防止のための厳しい処置を施したことだと語る。「医療崩壊が起こらないよう、いち早くロックダウン(都市封鎖)を行った。国は新型コロナ対策を戦争と位置付け、テロ対策のシステムを使って感染した人の行動を継続的に追跡し、感染経路を徹底的に洗い出し、濃厚接触者を次々に自宅やホテルに隔離しました」
「3月中旬までに日本を含む16か国からの外国人の入国拒否を決定。人と人との距離は2m間隔、生活必需品の買い物以外は100m以上の外出禁止を徹底し、学校や観光施設、シナゴーグなども閉鎖。公共交通は25%まで減らした。10万人分の検査キットを外国から入手し、検査官を各家庭に送って検査をしたり、車の窓越しに検査するドライブスルー方式を導入。重篤な患者のため地下施設を開設しました」
また新型コロナ禍で、思わぬ副産物も生み出したと語る。「イスラエルは検査キットや消毒剤などをパレスチナに提供し、支援している。イスラエルとパレスチナの医療チームは、ユダヤ・サマリア地方でのウイルス拡散防止にに取り組んでいます」
1976年から世界のクリスチャンとユダヤ人との愛の関係を築く働きをしてきたブリッジス・フォー・ピースのスタッフらも外出制限の影響で、その多くが在宅勤務となった。だが、「支援要請は倍になり、支援を通して神様の愛を伝える機会が広がった」と言う。「失業率が25%以上になり、今まで支援してきたユダヤ人の方々から『助けてくれ』という電話が鳴りやまない。スタッフらはエルサレム市とカーミエル市から外出のための特別許可を得、ロックダウン中も買い物に行けない高齢者の方々に食料を届ける活動をしてきた。この活動は今も続いています」
日本から派遣されたB.F.P.Japanのボランティア6人、内帰国が決まっている2人は、ロックダウンのため帰国できない状態だ。2月末に行われたB.F.P.Japan主催のツアーでは、「ツアーグループがホテルに隔離されそうになった。幸い、日本人は観光していいとの許可が下り、ツアーグループは無事に日本に戻ってくることができた」と胸をなでおろす。
イスラエルでは3月、3回の選挙を経て連立政権を樹立したばかり。「やっと政権が定まったが、政府の一致が難しい状況にある。新政府が神様からの知恵をいただいて、聖書に立った国の運営ができるようぜひ祈ってほしい」と要請した。