『賢者の生活リズム』のケン・シゲマツ氏 不安・ストレスを超える「新しい生活様式」語る  九キ災が新型コロナ禍支援でインタビュー動画を公開

2016年の熊本地震以来、キリストの愛の精神に基づいて被災者への支援を続けているNPO法人・九州キリスト災害支援センター(九キ災=本部・福岡市)が、新型コロナウイルスにより影響を受けている人々への「オンライン支援」の一環として、カナダ・バンクーバーで全人的な教会形成が注目されているテンス教会のケン・シゲマツ牧師へのインタビューを、同ホームページに公開した。https://kyusyuchristdrc.wixsite.com/kumamoto/blank-15

シゲマツ氏は、日本語にも訳されたベストセラー『忙しい人を支える賢者の生活リズム』の著者で、様々なストレスや重圧を抱えて生きる現代人に、聖書の霊性に根差したライフスタイルを提言している。九キ災理事長の横田法路氏(油山シャローム教会牧師)によるインタビューでは、新型コロナウイルス禍で求められる「新しい生活様式」について、不安やストレスをどうやって乗り越えていくかを語った。

バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州では新型コロナによる死者がこれまでに約170人、カナダ全土では7000人を超え、多くの人たちがテレワークを余儀なくされるなど日本と同様に制限された生活が続いている。そうした中で、ストレスやプレッシャーとどう付き合うか……。

—カンダの現状から、まず教えてください。

「新型コロナウイルスが原因で人々は普段より多くのストレスを感じています。初め3月頃、人々の感情は恐れだったと思いますが、今ではイライラし、怒りを感じています。家庭内暴力やアルコール摂取量が増加し、ある研究によると前年同期比55%増とのことです。ポルノを見る人が増え、ネガティブなストレスが多くなっています。」

「そのような中で、私にとって本当に役立ったことの一つは、朝、少し体を動かして過ごすことです。北米では、コロナウイルスの影響前ですら、20代では23%が深刻な不安やうつ病を経験しています。その研究によると、幸福感を得るための最も効果的な方法の一つに、運動があるそうです。運動は私の生活リズムの重要な一部です。」

「また、私は毎日、黙想をします。私は気が散りやすい性格で、いつも頭の中に115匹の猿が飛び回っているように感じます。そこで携帯で黙想の祈りのアプリを開き、タイマーを20分にセットします。そうすると、時間を気にしなくてよくなります。目を閉じ、深呼吸をします。気が散ったら、『静まってわたしこそ神であることを知れ』という聖書の一節を心に思い起こすのです。あるいはイザヤ書40章の『主を待ち望む者は新しく力を得』の一節を思い浮かべます。神の臨在を深く味わいながら、呼吸を続けるのです。時間が来るとチャイムが鳴ります。そして目をあけると、いつもよりリラックスして、穏やかになり、一日を通して神の存在を意識するようになります。」

「正直にお伝えすると、コロナの時期にストレスを感じながら目覚める日があり、時には落ち込んでしまうこともあります。コロナウイルスにかかった人を知っているからです。指導者としての責任の重さをこれまで以上に肩に背負っていますが、このような運動や個人的黙想といった簡単な習慣が、私の気分を持ち上げ、良い変化をもたらしているのです。」

—私たちは新しい生活様式について考える必要があると思います。以前と同じような生活に戻ることはできないでしょう。むしろ、新しい生活様式や「新基準」を探さなければなりません。しかし、それがどういうものかはっきりしていません。コロナウイルスの広がりを抑える必要だけでなく、人々はより有意義な生活様式を模索しています。

「私が自分の人生をコントロールしていると思いたいのですが、コロナの状況は、私たちは人生をコントロールしていないことを思い出させました。毎日祈り、歓迎の祈りをささげます。聖霊を自分の人生の中で働いてくださるようにお招きし、安全への欲求を手放すのです。他人への影響や人からの尊敬を手放すのです。権力と支配への欲望を手放すのです。このコロナの影響の中で、私たちは、神への完全な依存をより意識するようになるでしょう。私はまたこの時を通して、私たちが人生で最も大切なことをもっと意識するようになることを願い、祈ります。この期間、教会に物理的に集まることはできませんでした。以前は大勢で集まったり、(講演のために)旅行ができたりしたことは、私にとって有意義だったと思います。しかし、おそらくもっと大切なのは、人間関係の質でしょう。家族と今まで以上に多くの時間を家で過ごしました。家にいてZoomを使って何かを教えたりインタビューに答えたりしています。そこから教えられるのは、少なくとも私には、神は私が何をすることに召しているのかを思い出すことが必要であるということでした。その第一は神さまを愛することであり、それから私のすぐ隣にいる人々を深く愛するということです。私の人生の意味は、大きな集まりの中で何を成し遂げたかによって決まるよりも、私と神さまの関係、また周りの人との関係で決まるということです。」

—クリスチャンでない方々へのアドバイスはありますか。

「この機会を通して、人生において最も重要なことは何かをはっきりさせるのが良いと思います。パンデミックやあるいは、誰かが危篤だったり、孤独の中で過ごしたりという危機に直面するときに、一番大切なことがはっきりしてきます。日本のような場所では、多くの人にとって最も大切なのは、教育であったり、仕事の成功、会社の働きでうまくやれたりすることでしょうか。周りの人からどのように思われているかが重要なのです。そんな中でパンデミックは、これらのことが人生で最も大切なことなのか、最も重要な価値なのか自問する機会を与えてくれると思います。最も重要な価値あるものが何なのか祈り深く考え、それらを理解し、それらに基づいて生活を始めるのです。このことが、本当に重要なカギだと思います。」

インタビューのYouTubeは、

カナダと全米で発売と同時にベストセラーになったケン・シゲマツ氏の2冊目の著書“Survival Guide for the Soul” が今秋、『魂のサバイバルガイド』の邦題でいのちのことば社から出版される。同書では「魂がいのちを保ち続けるための習慣」について、著者自身の経験と聖書やキリスト教の霊性の伝統から具体的に詳述している。