聖書と祈りを土台に、環境問題への警鐘を鳴らす全世界規模のキャンペーン「創造の季節」(Season of Creation、https://seasonofcreation.org/)が9月1日から10月4日まで実施される。環境意識や持続可能性のテーマに日本の教会でどのように取り組めるか。連載で考える。
前回に続き、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)戦略的定量分析センター研究員の有野洋輔さんの講演(志学会主催)の内容から紹介する。

緩和策と適応策の両立を
有野洋輔さん(地球環境戦略研究機関 戦略的定量分析センター研究員)
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気候変動対策には、主に三つある。一つ目は排出削減策としての「緩和策」、二つ目は防災・減災とも共通する「適応策」、三つ目は地球環境に人為的に介入する「気候工学」だ。「21世紀になり、アジアでのCO2排出量が急増している。何もしなければ平均気温が5℃以上上がる。パリ協定が示すように、最大限努力して、2℃か1・5℃の上昇にとどまるかどうかです」
その推定ではCO2排出が2050年にはマイナスにならないといけない。そのためには米国の面積ほどの植林が必要だ。「では大規模技術でCO2を回収して、パイプラインを引き、地下に埋めればそれでいいかというと、その議論は危ないと思う。根本的に考えるべきはグローバリゼーションの節度ではないか。ヒト、モノ、カネ、情報のグローバル化に依存しすぎてはいけない」と強調した。
「地球環境についての知識・実感・危機意識の広がりが必要。日本だけではこの問題は解決できない。アジアをはじめとする諸外国の人々の未来の生活の質・あり方も共に検討したい。専門家だけでなく、地域・市民レベルで議論も重要だ。補助金に頼って、山を切り開き、ソーラーパネルを設置するのはどうなのかなども議論しないといけない。人工知能やIoTなどの技術は必須だが、社会の倫理的検証に耐えうる科学・技術の進展が必要です」
「適応策」では、防災と関連して、温暖化を前提に、インフラ整備や移住の検討、農業における作物種変更、品種改良などの対応が進められている。
「気候工学」については、「最後の手段」と注意を払う。太陽光を反射するなどの太陽放射管理や、空気中から直接CO2を除去するなどの方法が研究されているが、「前者の気候工学は雨の降り方を変えてしまうなどの副作用が懸念される。今は専門家のコンピューター実験が許されているのみです」
このようなことから、「目指すべきは、緩和策と適応策が両立するところ」と言う。「気候工学に頼らずに、CO2を減らしながら、適応策を進め、私たちが暮らす社会、生態系を守っていきたい」
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最後に「破れ」について、個人、研究、世界の視点でまとめた。前職の研究機関から辞職する前に様々な葛藤があった経験を分かち合った。「アイデアが受け入れられなかった。研究の力が足りなかったり、目指すべきテーマが合わなかったのかもしれない。しかし考えたのはこの研究所のために人生をさげるのか、ということだった」と話す。
やがて「『自分が』ではなく、、、、、、

2020年8月16日号掲載記事