説教の後、黙祷の時をもった

戦後75年目の8月15日早朝、今年も東京・千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑で「8・15平和祈祷会」(同実行委員会主催)を開催。比企敦子氏(日本キリスト教協議会〔NCC〕教育部総主事)が説教した。
比企氏は1年前、在日大韓基督教会(KCCJ)訪朝団とNCC訪朝団が、朝鮮民主主義人民共和国の朝鮮基督教連盟(KCF)への謝罪と交流を目的に平壌を訪問した体験を話した。「私は金在済(キム・ソンジェ)NCC総幹事ら8人で、謝罪と和解を願って平壌に行ってきた。発端は、『日本の教会は戦前の植民地支配に対する謝罪を、韓国の教会にはたびたび行ってきたが、北朝鮮の教会に対しては不十分である』との関田寛雄氏(日本基督教団教師)のひと言からだった。私たちは鳳岫(ポンス)教会の聖日礼拝に出席。礼拝の後半でKCCJの会長が挨拶をし、その後日本人3人が分担して謝罪文を読み上げ、金総幹事が通訳をしてくださった。謝罪文では、1910年の朝鮮併合以来、弾圧、搾取、差別の限りを尽くしてきたこと、これに対し日本のキリスト者がそのことに反対せず、国策に協力し保身を図ったことを心からおわびした。この謝罪の言葉が受け入れられるか本当に不安だったが、通訳が終わった時、会場から盛大な拍手が沸き起こった。礼拝には300人ほどが出席していたが、少なくとも出席者には私たち日本人としての謝罪が伝わったと思い、訪問団としての責任を果たせたと神様に感謝した」
「このコロナ危機の状況を思うと、日韓のキリスト者がKCFを一緒に訪問し、謝罪を述べることが許されたことは、本当に神様が備えてくださったのだと改めて思う」と比企氏。「私たちは東アジアの和解と平和を果たすために、それぞれの団体、教会で活動しているが、点ではなく線としてつながり、宗教もキリスト教だけでなく仏教や他宗教ともつながって、政府や市民に働きかけ、私たちの思いを広げていきたい。今年、藤沢市と横浜市で、公立学校における育鵬社の歴史・公民教科書が不採択になった。これは、大変問題が多いこの歴史教科書に対し、市民や教育関係者などが10年近く抗議を続けてきた結果だ。私も力を得、希望をもらった。粘り強く継続して行けば少しずつ変革することができる」と結んだ。
今年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、「速やかに収束させてください。ウイルスによって残念ながら死を迎えた人の家族に深い慰めを与えてください」と、収束を願う祈りも参加者一同で唱和。説教の後は感染防止に配慮し、例年行っているグループごとに別れての祈りは止め、参加者一同で黙祷をささげた。

説教に聞き入る参加者
比企敦子氏