特集/PBA 聖書チャンネルBRIDGE 1人でも多くの人に福音を届けるために

〇参加・協力団体 関係者は語る 教会版プラットフォームを

キリスト教界のさまざまなコンテンツを集めたサイト「聖書チャンネルBRIDGE」(https://www.seishobridge.com/)が10月1日公開された。70年にわたって放送伝道を手がけてきた太平洋放送協会(PBA、矢木良雄理事長)が運営するこのサイトには、その呼びかけに応じた日本の宣教団体から提供された、それぞれの持てるコンテンツ、ノウハウが集約され、さらなる展開が期待される。公開に先立ち行われた、参加団体による座談会、放送伝道を全国で進めている放送伝道協力会による座談会、二つの模様と、キリスト教会から寄せられた言葉を掲載する。

参加、協力する団体は現在6団体。座談会には、理事長の矢木良雄、ティモシー・セランダー(PBA常務理事)、岩本信一(いのちのことば社社長)、宇賀飛翔(OneHope日本ディレクター)、田井淳子(デイリーブレッド エグゼクティブ・ディレクター)、山崎龍一(お茶の水クリスチャン・センター常務理事)、各氏が参加、上原友紀氏(はこぶね便代表)、山下正雄氏(RCJメディア・ミニストリー主事)が、文書でコメントを寄せた。

聖書チャンネルのトップページ画面

矢木 「聖書チャンネルBRIDGE」を始めた意図は二つある。「ライフ・ライン」「世の光」には、キリスト教会の証しが凝縮されている。これまでおよそ70年間、番組を制作してきたが、一回見たら終わってしまうのではもったいない。見逃した、もう一度見たい、と考える視聴者のニーズに応えて、その膨大なコンテンツを活用したいと考えた。また、PBAは全国にある31の協力会に支えられ、その地域の放送局で番組を流している。今後の地域宣教を考えると、地域の教会が情報を発信できるよう、どこまで協力できるか。それがこのサイトを構想した動機。情報となるコンテンツは、ネット全体の膨大な情報量を考えると、PBAだけでなく、すでに実績のある宣教団体の協力が不可欠だと考えた。

宇賀 ワンホープでは、「子ども聖書アプリムービー」、そして「LUMO」を提供している。ユーチューブにも上げているが、CMが入ってしまうのがいちばん困る。本来これらは教会の集会の中で使ってもらいたいと考えて制作した。CSの途中でCMが入ってしまうと台無し。「聖書チャンネルBRIDGE」ではそれがない。このサイトにアップすることで、親子で学ぶなど、より実用的に使ってもらえる。

田井 デボーションガイド「デイリーブレッド」はもともと文字のコンテンツ。PBAの協力で音声を提供するようになって10年になるが、一緒に読むより、一緒に聞く人のほうがよほど多いことがわかった。手話を収めた動画をユーチューブにアップしてから視聴者は急増した。ろう者に利用してもらうことを考えていたが、手話を学ぶ人たちにも使ってもらえるもの。広いコミュニティーに届くためにはチャンネルは複数必要で、このサイトが開設されたことは大きい。

ロゴ・マーク

岩本 いのちのことば社は2025年までに人口の10%、千200万人に福音を伝えることを目標にしている。聖書に興味、親しみを持っている〝聖書親派(シンパ)〟を意識している。職員には、福音が伝わる言葉を獲得することと、それを伝える方法の重要性を意識させている。伝える方法はネットしかない。「聖書チャンネルBRIDGE」はそのものだった。それで協力を申し出た。

山崎 PBAは、テレビ、ラジオという、その時代の最前線のメディアを使って伝道してきた。今はネット。広告も「詳しくはウェブで」という時代。そこに誘導するためのものが必要だ。また、公共放送で語れないことが、ネットでは語れる。教会での説教と同じレベルのことは、放送ではやはり語れないだろうが、ネットでは自由に語れる。そこに行けばキリスト教会の情報が得られるという場、ヤフー、グーグルのような、キリスト教版の大きなプラットフォームになればすばらしい。

セランダー 私は39年前に来日して、PBAで働き始めたが、その時驚いたのは、日本の協力の文化。日本の多くの教会はとても小さくて、お金のかかる放送伝道などできないはずなのに、互いに協力することでそれを可能にしている。ばらばらだったら放送伝道などできるわけがない。このサイトで、日本の教会、宣教団体のさらなる協力の場を作りたかった。スタートはPBAが主体で限られた数の協力団体だが、これから増やして、さらに充実させたい。「聖書チャンネルBRIDGE」はPBAのサイトだとは思っていない。一緒に協力して運営することで、すばらしい宣教の道具になると信じている。

山崎 学生伝道の働きをする中で宣教団体同士の協力の大切さは痛感していた。それがウェブ上でできたらいいと思っている。

矢木 そこで「宣教プラットフォーム」という名前を考えた。総合的なサイトがキリスト教会にないのは、今の時代、社会的に責任を果たしていないことになるのではないか。そこまで広がりを持った支持が得られるかは、これから。PBAは羽鳥明先生以来、全国に実績も信頼も築いている。それに今回参加してくれた団体のブランド力が生かされれば、「このサイトは安心だ」と言ってもらえる。

山崎 「安心」はとても必要。今は何か分からない言葉があれば、ネットで検索する。有益で面白い情報もあるが、異端の団体のサイトだったりする。分かっている者は必要な情報だけ切り取って見るが、聖書の基本的な知識がない人にそれは無理。

宇賀 この「安心」はキリスト教書店に似ている。入るのに、一般書店とは違う感覚。ここなら神様に関する、聖書についての本がそろっている、という安心感と緊張感。このサイトに来る時は、ユーチューブを見るときの意識と違うのではないか。

田井 何が「安心」かは、利用する人の立場によって違うのではないか。あまり他教会との交わりを持たない教会の信徒にとって、求道者にとって、JEAとNCCでも違うだろう。そのあたりの整理が一つの課題か。

山崎 この「安心」の枠が決まると、視聴者も支援教会の枠も決まってくるだろう。異端問題だけで安心を考えてはいけない。あえて定義を緩やかにしてリスクをとることも考えられる。すこしずつ学び、考えていくべき。

岩本 安心かどうかと考えるのは、教会の牧師や信徒。しかし、ネットに上げるということは、教会とは接点のない人が見に来るということ。彼らは、安心かどうかではなく、面白いかどうかでやって来る。今まで教会が届かないでいた人たちに、届く可能性があるのだから、その点も意識したサイト作りが重要なのではないか。

矢木 クリスチャンだけでなく、世の中に語りかけるのだから、魅力あるものにしないと。不安を抱えて生きている人たちに、聖書の言葉や、証しなど、何か心に残るものが見つかるコンテンツが、これからもこのサイトに増えていくことを期待している

上原(コメント)私たちはこぶね便は、「クリスチャンのつながりは力になる」をモットーにしております。今回多くの祈りと願いが形となった「聖書チャンネルBRIDGE」は、その「つながり」そのもの、キリストにあって一 つになることです。このチャンネルから、良質なコンテンツが提供され、福音が広がることを、スタッフ一同お祈りいたします。
山下(コメント)検索サイトは便利ですが、結果が膨大すぎて、ほんとうに必要なものが出てこないということもあります。リンク先のサイトが異端的な場合もあります。「聖書チャンネル BRIDGE 」では、そうした検索サイトの弱点が克服されるものと期待しています。

 

〇各地の協力会 関係者は語る 安心できるコンテンツが重要

現在、全国には31の放送伝道協力会があり、PBAの放送伝道を支えている。座談会には、小泉創(「世の光」宮城放送伝道協力会代表)、木田恵嗣(福島県放送伝道を支える会代表)、茂木幸雄(長野県福音放送を支える会代表)、羽鳥頼和(東海福音放送協力会/「世の光」メッセンジャー)の4氏が参加、羽鳥氏の司会により進められた。

 

羽鳥 今回PBAが新しいインターネットサイト「聖書チャンネルBRIDGE」を開設しました。先生方は、ネットそのものをどのように捉えていらっしゃいますか。

小泉 今回のコロナの影響で、礼拝をユーチューブで流しました。動画配信された賛美に励まされたという声もありました。ただ、ネット礼拝は視聴者の一人というか、見ても受身。気をつけないと、礼拝というコンテンツを消費することになってしまう。ネットがなくても礼拝できる準備は必要でしょう。ネットにあふれている情報そのものは、玉石混交で、注意が必要です。極端な、異端的な終末論などもありますから、危険性を伝えることも大事です。

木田 礼拝をライブ中継するようになって、未信者の家族もいっしょに見ている、という声はよく聞きます。中高生などに届く可能性も感じます。でも、自分の教会の礼拝を見終わると、すぐその下に他の教会の配信が出ていて、見比べるようなこともあるでしょうね。それに、ネットで交わりができるかと言えば、やはり実際に集まることの代わりにはならないでしょう。

茂木 コミュニケーションツールとしては可能性を感じます。海外の宣教地にいる働き人ともつながることができました。今回のコロナ禍では、礼拝とは何かということを考えさせられています。やはりネットは代替手段でしかない。礼拝には、説教者と会衆の応答が必要です。家にいながらに画面を前にしてでは、神様の御前に出る意識が薄れ、傍観者的になるのではないでしょうか。神を畏れるという心が衰退するような気がします。

羽鳥 道具としてのネットには利便性があると思いながら、そこにあふれている情報には、非常に世俗的、反聖書的なものがあり、危機感を感じているものです。PBAの新しいサイトでは、様々なコンテンツが提供されていますが、それをどのようにご覧になりますか。

小泉 そこで見られるのは、プロが作ったもので、やはり魅力的です。そしてこれだけの協力で作られていることに、キリスト教会の働きの広さ、豊かさを感じます。宮城県ではPBAのテレビ放送がないので、このサイトを通して信仰の世界に触れてもらうきっかけになると期待しています。

木田 このサイトは教会員に安心して勧められる。それは教会員を守ることにもなる。いかに広めるか、伝えるか、認知してもらうか、でしょう。教会がそれをいかに福音宣教に利用するか、各教会の工夫が共有されるといいですね。

茂木 信徒に安心して見てもらえるのが一番。求道者のためにもありがたい。自分自身も調べる時に活用できる。どこまでの幅のものが載るのか。神学的な立場は広いので、そこの見極めは、これからでしょうか。安定的な運営も大事です。維持するためには予算が必要でしょうから、いっしょに考えて運営できればいいですね。

羽鳥 期待の声が多く挙げられました。コロナ禍で神様はネットを用いてみわざを進めようとされているのだということを思わされます。ネットも神様からいただいたもの。神様にお返しする、聖別することをしっかり心得ながら用いて、宣教に携わらせていただくことが大事だと思わされます。

 

〇聖書チャンネルBRIDGEに期待します

日本キリスト教協議会 議長 渡部 信

渡部信氏

「聖書チャンネルBRIDGE」の設立を心からお祝い申し上げます。「唯一の聖書」をキーワードにウェブのコンテンツを立ち上げる試みは、このコロナウイルス感染後の時代に必須な宣教のツールだと思います。教会間を超えて、多くの福音のコンテンツを繋(つな)ぎ、区分し、必要な人に必要な情報を提供することは、現在の教会の有り方に、連帯と協働を促すツールになるでしょう。またノンクリスチャン向けにも対応されていますね。これは教派間の壁を超えた新しいエキュメニカルな宣教の一致にも繋がることでしょう。これからの活躍が期待されます。主に用いられるようお祈りいたします。

日本福音同盟 理事長 石田敏則

石田敏則氏

今年、日本のインターネット広告費が2兆円を超え、テレビメディア広告費を上回ったことが報道されました。ネットの需要が今後ますます拡大していくことは間違いのないことでしょう。教会もコロナ禍の中で、ネットによる礼拝やネットワークの活用が拡大しました。スマホの普及は若者だけではなく、高齢者にも利用者が増加しました。この時、PBAが「聖書チャンネルBRIDGE」を開始されることを通して、今まで培ってきた多くのメディア伝道のノウハウが活かされ、日本における福音宣教の拡大へとつながることを期待いたします。パウロの「何とかして…何人かでも救いたい」との思いを持って、この時代の福音宣教の働きを共に担ってまいりましょう。

日本ペンテコステ・ネットワーク 代表 細井 眞

細井眞氏

この度、太平洋放送協会が中心となって、ネット上にプラットフォームを設けられることは大きな喜びです。なぜなら、このプラットフォームを通して、ランダムに広がっているキリスト教の情報が一つ所に集められ、整えられていくことを通して、検索に格段の差が出るようになると考えられるからです。一つの検索が、広く、深く、スムーズに、そして、バラエティに富んだ事柄を拾い出すことになることが期待されます。何よりも異端サイトに誤って入ることもなく、安心して閲覧できることは、何という喜びでしょう。これからは「『聖書チャンネル BRIDGE』から、検索を始めたら安心ですよ」と信徒に言えますし、ノンクリスチャンにも紹介できます。