[レビュー2]「こころ熱く」聖書の言葉が日常に直結 『いまを生きるあなたへ 神に招かれて』評・沖崎学
玉川聖学院高校の礼拝で語られた、メッセージ集。「今を生きるあなたへ」と題されている、「あなた」とは、今青春のまっただ中を生きる「生徒」のこと。このメッセージが届いた生徒たちの笑顔が想像できる。
また、本書は、主イエスがエマオ途上の弟子に、聖書全体を物語られたことを思い出させる。あの日、現実の闇に押し潰されている弟子と、主イエスは、一緒の歩幅で歩まれ、主イエスが語る聖書の物語に、弟子たちはこころ熱くされた。主イエスは、弟子たちを愛し、語る言葉を選び、もっとも弟子たちに届くように語られた。
生徒たちも、本書にあるように、友だちと自分を比較して、安心感を得たり、逆に、劣等感にとらわれる。変わりたいと願いながら、どうしても変われない自分がいることに気づいている。どうして、自分の人生にこんなことが起きるのかという問いの前に立たされる。生徒たちは、家庭や学校で、悩みがあり、葛藤があり、すぐには解けない問題や、答えの出ない課題に、まっすぐ向き合っている。その中には、友だちや、家族の言葉や協力で、うまく乗り越えてゆける課題や問題もある。
一方、誰かに悩みを打ち明けても、解決のいとぐちさえ見つからなかったり、もう悩むことさえやめてしまい、目をつぶってしまっているものもたくさんある。そのような生徒たちを愛し、語る言葉を選び、もっとも生徒たちに届くように語られた、愛の言葉で本書はあふれている。それは、ただ課題や問題を乗り切るすべではなく、いかなる試練や困難も、すべてを生徒の成長につなげてゆくためのものである。
著者は、生徒にとって新しい視点である聖書の世界観が、生徒の日常に直結しており、どんな闇の中にあっても、そこに確かな光を与えるものであることを語る。そして、このメッセージを生徒と共に受け取り、一緒にこころ熱くされる教員がいる。彼らもまた、礼拝のたびに新しい視点を与えられて、玉川聖学院の教育は成長してゆく。
(評・沖崎学=金城学院高等学校宗教主事)
『いまを生きるあなたへ 神に招かれて』
安藤理恵子著、いのちのことば社
・フォレストブックス 1,430円税込、B6変
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