昨年11月25日、富坂キリスト教センター編、新教出版社刊の『日韓キリスト教関係史資料 Ⅲ』が刊行された。2007年から13年の歳月をかけ、又『資料Ⅰ』の発刊から数えると実に36年の月日を経て、ここに1876年から2010年にわたる134年間の日本と韓国のキリスト教関係が資料によって明らかとなった。
今回収録された資料で特筆されるのは、1970年代から80年代にかけて戦われた韓国民主化闘争に関わる日本と韓国の教会の交流の記録である。軍事独裁政権下で、自由と民主主義を求めて戦う韓国キリスト者の姿、そして、彼らが発する宣言や告白に突き動かされるようにして支援に立ち上がった日本のキリスト者の姿が余すところなく収録されている。
慰安婦問題や徴用工問題によって日韓関係が冷え切った今、本書は、敗戦以降の日韓の歴史に深く踏み入り、両国がお互いの歩みをどのように見つめ、どこに向かおうとして来たのかを今一度確かめると共に、これからの関係再構築を考える上でこの上ない導き手となる。
その作業は、同時に『資料Ⅱ』に収録されている1923年以降45年までに起きた歴史的出来事(関東大震災、神社参拝、皇民化政策)に今一度目を向けさせ、私たちの国及び民衆の立つべき地平を明らかにする。
ところで、本書第2部には、戒厳令下、極秘に韓国から持ち出された資料も少なくない。その一つひとつには、身の危険も省みず国外での発表を望む戦いの担い手や、その願いを受け止めた外国人宣教師らの労苦の汗と涙が滲(にじ)む。
構成は3部よりなる。日本にしか保存されていない8頁にわたる口絵写真に始まり、第1部アジア太平洋戦争敗戦から日韓基本条約締結までの交流の動き(1945~65)、第2部韓国民主化闘争と日韓連帯の動き(65~87)、第3部戦後補償問題を含む日韓の交わりと統一への模索(1987~2010)である。全体で千頁を超え、定価1万5千円であるが、個人での購入と共に、学校や教会等の諸団体、及び公立図書館などにぜひ備えたい。
(評・飯島信=日本基督教団立川教会牧師)

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