ドイツの「宗教教育学」の伝統に学びつつ、英米型宣教で形成された日本の教会を踏まえ、さらに自身のルーツでもある韓国の状況も視野に入れた著者の「キリスト教教育学」の集大成。『現代キリスト教教育学研究 神学と教育の間で』(朴憲郁著、日本キリスト教団出版局、8千250円税込、A5判)新約聖書学研究に出発して、児童、洗礼志願者などの教会教育、神学諸分野との対話、神学校、キリスト教学校、人間形成・モラルの視点から一般教育、社会・民族・国家へとテーマと視野が広い。教会の現場では、教会「学校」が教会「共同体」となることを強調する。弁証法神学の影響とその後の展開などキリスト教教育史を振り返る。「象徴教授法」や「神の像」にも注目する。


皇帝崇拝があった古代ローマ世界において、キリスト教はどのように存在し、戦ってきたか。『キリストとローマ皇帝たち―その戦いの歴史』(E・シュタウファー著、川島貞雄訳、教文館、5千60円税込、A5判)の著者は新約聖書学者であり、古銭学者。貨幣の描写から皇帝崇拝の様子を浮かびかがらせる。古代の詩も織り交ぜながら、非専門家にも読みやすい読み物としてまとめている。「死すべき人間ではなく、永遠の神のみを信じる」という問題意識が貫かれ、全体として聖書の言葉に始まり、聖書の言葉に終わる。著者はナチスへの抵抗者でもあり、本書の大半が戦中に書かれた。


『谷陰を越えて歩む 聖書の世界に生きた人々旧約編』(堀肇著、いのちのことば社、千650円税込、B6判)は、「分かれ道で選択する」「挫折から立ち上がり」などテーマごとに旧約聖書に登場する様々な24人を紹介。新約以上に赤裸々な人間像が描かれる旧約の人々の光にも影にも目を向け、現代の私たちにも通じる人生の課題を浮かび上がらせる。


『ことばの花束』(森祐理著、いのちのことば社、千320円税込、B6判)は著者のラジオ番組(ラジオ関西)のコーナーを書籍化。マザー・テレサ、日野原重明などキリスト教著名人だけではなく、詩人、スポーツ選手、企業家、武田鉄矢やアイドルグループの嵐などの言葉から引用し、自身の生活や人間の生き方に思いをはせる。いくつかの言葉を、ユリ(純粋)、バラ(愛)など花言葉で章分けして、「ことばの花束の贈り物」としている。

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