開拓は「憐れみの心」から 講演Ⅰ「開拓伝道」播氏(上) 第23回断食祈祷聖会2021

「断食祈祷聖会2021」(同実行委員会主催)が1月11、12日に開催。今年はコロナ禍ということもあり、Zoomにより開かれ、「開拓伝道」、「児童虐待と家庭形成」、「海外宣教」、「ラディカル・リベラリズム」の四つの講演が行われた。初日の講演①では、播義也氏(恵泉キリスト教会埼京のぞみチャペル牧師)が「開拓伝道」をテーマに講演した。
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「日本には教会がありすぎる」。ある時、播氏はある牧師からそう言われた。その言葉の真意を、こう推測したという。「開拓教会よりも既存の教会の活性化のほうが先ではないか。無牧教会が増え、働き人がいない。いろいろな教団教派では合併、閉鎖を余儀なくされ、どう活動を継続していけばいいのか日々頭を悩ませている。開拓どころではない。むしろ、これ以上教会が増えては困る」
日本のデータを見ると、①牧師の平均年齢67歳、数年で大量の牧師が退職、②信徒も高齢化、会員は減少、教会合併・閉鎖がコロナで加速、③日本全体では教会未設置市町村が全体の約3分の1、④人口増加傾向の大都市圏でも教会密度は低くなっている、とし、「日本の福音化どころか福音の灯がだんだん消えてしまう状況にあるのではないか」と指摘する。「教会はいのちの共同体。いのちあるものは死んでいく。誕生、成長、成熟、安定、減少、衰退、死というサイクルがある。これは自然なことだ」と播氏は言う。
「だが、大事なのは次の世代を生み出すこと」だとし、「イエス様は12の弟子を生み出し、弟子が次の弟子を生み出し、そしてエルサレム、ユダヤ、サマリヤ、全世界と、次々と教会を生み出していった。こうしてこの2千年間、イエスの福音がこの地上を満たしてきた。私たちも、今のこの日本に福音を生み出し続ける取り組みをやめてはいけない」と強調した。
播氏は、「まっすぐな道を作りなさい」(へブル12・13)の御言葉を軸に1年を始めたと明かす。それは、「弱った手と衰えた膝をまっすぐにし」(12節)、「足の不自由な人が踏み外すことなく、むしろ癒やされるため」(13節)だ。「この宣教の軸をしっかりと私たちのうちに形成し、教会もそれをしっかり捉えて前進することが必要だ」
マタイ9章35~38節から、イエスの宣教は失われた人への憐れみの心から行われていたことを指摘。「羊飼いのいない羊のように、弱り果てた失われた魂を見た時に、イエス様は腸(はらわた)がよじれるような深い憐れみを示された。私たちも、昔は栄えたが衰退し、合併・閉鎖する教会を、教会未設置地域が3分の1もあるのを見る時、心が痛む。この失われた魂に対する憐れみの心が与えられるように、イエスの弟子である私たちに憐れみの心が、成熟していくよう祈っていきたい」
では実際にどのくらいの教会が必要か。播氏は「2千400人に一つの教会が必要」と語る。「世界人口を単純に世界の教会数で割ると2千400分の1。日本では5万ぐらいの教会が必要で、それはちょうどコンビニエンスストアの数になる。歩いて行ける距離に教会があれば、福音化が一気に進む」
ではどうやって日本の現在の教会数(7、8千教会)から5万にするか。イエスが宣教をどうスタートしたかが鍵だと播氏は話す。「イエスは最初に弟子を選らばれた。ルカ10章を見ると、12弟子のほかに別の72人が遣わされたとある。仮に12の弟子が2人ずつ6か所に遣わされ、1か所で12人見つけたら72人、72人が36か所で12人見つけたら432人。イエスがこの地上の歩みの中で第一、第二、第三世代で弟子が誕生した。復活した後には、12弟子に現れ、その後500人以上の兄弟に現れてくださった(Ⅰコリント15・5、6参照)。この12人が72人に増殖し、72人が次の弟子を増殖していった。弟子の増殖、派遣という働きが、信徒が教会の礼拝に集うのと同じくらい、今日の教会で大切だ」
「私たちの教会は神様の導きで、コロナになる前から旅人になっていく運命が決まっていた」とも明かした。「地図に手を置きながら埼玉県戸田市のすべての町に教会が建つように祈っていたら、教会の大家が、老朽化したので出て行ってほしいと。会堂の移転先を求めてきたが、なかなかいい物件が見つからない。2019年12月の臨時総会では、行く場所は決まっていないがここを出ようと決定。00年1月に最後の礼拝を捧げ、2月から公民館で礼拝を持っていた。そうしているうちにコロナ感染が拡大し、3月末に公民館が閉館。3月から毎週Zoomで礼拝を持っている。この出来事と使徒8章の外的圧力によって散らされていった弟子たちの姿とが重なります」(次号に続く)
【中田 朗】