3月21日号紙面:シリーズ●教団・教派を知る 基督兄弟団 完成を目指して
シリーズ●教団・教派を知る 基督兄弟団 完成を目指して
基督兄弟団
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聖書信仰、ウェスレー主義、
四重の福音、祈祷と宣教に立ち
基督兄弟団は、「イエス・キリストをかしらとする公同教会である。わが教団は聖徒らによって伝えられたウエスレー・アルミニウス主義を基調とする福音的信仰の教理と実践的信仰生活を健全に保持する」(「基督兄弟団教憲」1993年制定)信仰的立場に立っています。以下、その特徴について略述します。
特徴の第一は、聖書信仰です。旧新約聖書六十六巻正典を原典において誤りなき神の言葉と信じ、聖書の真の著者である聖霊なる神がその意思を誤りなく十全に伝達するために聖書記者たちの個性をも生かしつつ必要な導きと力を与えたと信じる立場です。三位一体の神を知る手がかりとして与えられた文書啓示である聖書に対する“みことば信仰”です。
第二は、ウェスレー・アルミニウス主義です。メソジスト教会の創設者、J・ウェスレーの主張したアルミニウス的立場を指します。アルミニウス主義は、神の選びと予定の教理における神の恩寵と人間の意志的信仰との関わりについて、人間生来の自然的自由意志で神の恵みに応答できるとする考え方です。ウェスレーは、これに対し、聖霊の恵みの御業があってはじめて賜物としての信仰による意志的応答が可能となると主張しました。この立場は、救いに先立つ聖霊の働き(聖霊の先行的恩寵)、神と人とを愛して生きる全き愛(キリスト者の完全)、聖霊による神の恵みの自覚的体験(聖霊の確証)を主な特徴としています。
第三は、四重の福音です。この用語自体はA・B・シンプソンによるものですが、これを中田重治がアレンジした信仰的立場を意味します。中田は人がキリストと出会い救われることにより「どう変えられるのか」という視点に立ち、四重の福音を「四化」すなわち「新化、聖化、健化、栄化」として動的に理解しました。福音は一つですが、過去・現在・未来にわたるキリストにおける救いの恵みを一つの体系化された全き福音として整理した点が「四重の福音」理解の最大の特徴です。
第四は、祈祷と宣教です。特にイエス・キリストの再臨、イスラエルの救い、日本の救いのために祈ってきました。神の救いの計画全体におけるイスラエルの選びと教会の成立との関係を意識しつつ、終末におけるイスラエルの回復(ローマ11・25〜26)を祈り、宣教現場としての日本社会のために祈り、教会の使命としての世界宣教に取り組んでいます。
もう一つ挙げるなら自給伝道と言えます。自給伝道の伝統は日本ホーリネス教会からのものであり、生ける人格的な神にのみ信頼し祈って与えられて進むという信仰姿勢です。自給伝道は、臨在の主にひたすら信頼する信仰姿勢として教団発足当初から保持し続けて来た信仰の遺産と言えます。
旧きよめ教会の流れを汲み
ホーリネスの歴史共同検証
戦後間もない1945年秋、中田重治の指導を受けた旧きよめ教会の牧師たちが、戦禍を免れた神田きよめ教会に集まり、新教団設立の願いが起こされ、準備が進められました。
46年2月14日、宗教法人基督兄弟団としての法人登記がなされ、当初は信仰思想を問わなかったために、旧きよめ教会系以外の人たちも多く参加しました。47年5月に開催された第1回総会では、信仰信条として中田重治の唱えた「四重の福音」を受け入れるかどうかについて議論が交わされますが、教団規則には「本教団の教義は新旧約聖書を神の言とし使徒信条に準拠す」と記されることになりました。
46年4月、伝道者養成のため千葉県下志津の旧陸軍飛行学校跡地に聖書農学園を発足させます(後に米国ナザレン教団に譲渡され、聖書農学園は現在千葉英和高校に)。その後、現在の茨城県小美玉市羽鳥に広大な土地が与えられ、48年に基督兄弟団聖書学院を開校しました。
47年11月、神田教会で開催された秋季リバイバル聖会で、再臨待望、イスラエルのための執り成し、日本民族使命達成のための祈りに力を入れるようになり、旧きよめ教会の流れにあることが明確になります。このため退団する人々があった一方で、旧きよめ教会系の教職者や信徒が多数加わりました。
76年の夏季聖会では、「完成を目指して」という標語が与えられ、これを教団のビジョンとし、その達成のために、聖書信仰の確立、聖化の徹底、祈祷の充実、倍加伝道の四つの目標を打ち出しました。
96年の総会で、「過去の罪責に対する悔い改めと将来への決意」が議決されます。この決議文では、きよめ教会が「国粋主義を教会の信仰的教理の中に組み入れ、侵略戦争の一翼を担う罪を犯してきたこと」について、また、日本民族使命を強調し、聖書信仰の立場から逸脱した「きよめ教会綱領」を宣言したことについて悔い改めました。
98年、日本聖教会の流れにある日本ホーリネス教団より基督兄弟団に対して、弾圧時に日本聖教会がきよめ教会を切り捨てたこと、教団設立に際し「ホーリネス」の名称を用いたことに対する謝罪と、和解の申し入れがなされました。その結果、互いの歴史観を理解し合うことを目指して共同歴史検証が行われ、翌年に「基督兄弟団と日本ホーリネス教団の共同歴史検証による旧日本ホーリネス教会『分離』に関する声明」が公表されました。
さらに2000年6月に沖縄で開かれた第4回日本伝道会議の期間中に、「ホーリネス信仰の証詞のための日本ホーリネス教団と基督兄弟団の協力同意書」が調印され、青年の交流、共同歴史研究会の発足、献身者教育における協力等に発展しています。
4年ごと青年全国大会開催
牧師子弟の悩みと恵み共有の場も
1990年代前半から約30年間にわたって継続している青年のミニストリーに「青年全国大会」があります。青年たちに特化した青年たちのための全国大会を、という志が祈りのうちに与えられ始められた大会で、これまで1992年、96年、2001年、06年、10年、14年、18年と基本4年ごとに開催されてきました。毎回200~300人程の青年、スタッフ、教職が集まり恵みを受け、そこから献身に導かれた者は少なくありません。今コロナ禍にありますが、祈りの内に青年全国大会2022に向けて委員会が発足し準備を進めています。
また、教団として3年ごとに牧師子弟のためにと「ベテルの集い」を開催しています。牧師の子どもとして生まれた者同士の交わりと霊的養い、そして共に楽しいひと時を過ごすことを目的として1982年から始められました。講師もスタッフも同じ牧師子弟で献身した先生方で構成されるなど、悩みを共有し、牧師子弟の癒やしの場としても機能しています。
毎年、春休みの時期に茨城県にある聖書学院(1万2千坪を有する)に集まり、春季全国大会(教団総会と聖会)が開かれています。大会期間中、子どもたちは広いグランドで遊びまわり、中学生以上を対象とした青年集会「ユースデイズ」も行われ、20~40人の青年たちが集ってみことばに聞き、交わりを楽しんでいます。兄弟団という名前にふさわしく、兄弟姉妹、老若男女が仲良く寝食を共にして恵みの時を過ごしています。
このような交わりと霊的な養いが与えられる聖書学院は、教団にとっての大きな財産と考え、老朽化した学院の施設を順次整えていく「マスタープラン」計画が進められています。東日本大震災によりメインの集会場である講堂が使用できなくなったため、新講堂建築に着手することになり、2014年にシオンホールが完成しました。昨年は宿舎や風呂の改装をし、現在は食堂の改装を検討しています。夏は教団外の教会や教団からキャンプのために聖書学院の施設が用いられています。
昨年はオンラインで多くの教職者がT&M(弟子訓練と教会増殖)の学びと訓練を受けました。実際に教会で取り組み始めたところ、教会が変えられてきたという報告を受けています。
コロナ禍を機に新しい革袋用意へ
オンライン活用協力・連携強め
数より人材育成
2017年に70周年を迎えた私たちの教団は、80周年に向けて宣教の働きを進めています。
教団としての信仰の目標は「完成」であり、1980年以降常に変わらない標語として「完成を目指して」が掲げられてきました。それは、終末の時代にあって、再臨の主にふさわしく教会が整えられることと、宣教によって豊かな実を結ばせていただきたく願うからです。
特に本年度は、昨年来のコロナ禍の中で、教会のあり方、宣教の方策、教団としての存在意義を見直すよう、神から迫られているように思われます。これまでしてきたことが通用しなくなる時代であることを認識し、変化を恐れず、守るべきものはしっかりと守りながら、新しい皮袋を用意しなければならないと考えています。
また、これまで数ばかりを目標にしてきたことを見直し、人材育成を中心にこれからの時代を切り開いていきます。教団の存続は大事ですが、地域の教会を活かし、それとともに小さい群れではありますが、日本の教会に益する群れとなるようにと願っています。
そこで、今後取り組むべきこととして、
1.継続教育としてのセミナーを、オンラインを通して活用していきます。
コロナ禍の中で、IT化が一気に進んできました。この機会を逃さず、牧師の継続教育、そして教会間の協力体制を強化していきます。これまでは、聖会に集まることを通して交わりがなされ、一体化が図られてきましたが、オンラインを通して恵みを共有し、教会が活性化されることを進めていきます。
2.人材を有効活用するため教団機構を整備していきます。
高齢化の中で、これまでしてきたことができなくなりつつあります。しかし、教団機構を整備することによって、人材を活かすことができるはずです。できない部分は、他教団と協力することによって、情報を共有し、必要な対応ができるよう整えていきます。特に、自然災害や異端・カルト問題などから各教会が守られるよう、他団体との連携を強めていきます。
また、教憲や規則等も時代に適応させ、福音が福音として伝わるよう改正を検討していきます。
3.茨城県小美玉市羽鳥の地を、人材育成のために整備していきます。
これまで教団立の神学校として機能してきた兄弟団聖書学院を整備し、多方面で利用できるような施設にしていきたく願っています。
高齢化が進み、2025年問題だけでなく2050年までも見通す時に、日本の教会そのものが危機に立たされていることに気付かされます。しかし、悲観的に考えるのではなく、だからこそ教会が整えられ、世の光、地の塩としての使命を果たしていく意味があると信じます。
「コロナ禍だから何もできなかった」ではなく、「その中でできること」を、また「だからこそできる」ことを、チャレンジしていく群れとなるよう願っています。
略年表
1946年 基督兄弟団設立。初代主管者・中田羽後 千葉県下志津に聖書農学園を設立
1947年 茨城県羽鳥に聖書学院設立(開校は翌48年)
1954年 神田教会を本部教会に名称変更し、中央伝道館の看板を掲げる。
1958年 基督聖協団と分離。本部教会を売却
1977年 第32総会において、台湾基督長老教会と姉妹提携
1982年 第1回ベテルの集い(牧師子弟のための集会)を東山荘で開催
1989年 台湾基督長老教会との間に宣教協力同意書を批准
1992年 第1回青年全国大会を恵みシャレー軽井沢で開催
1996年 第51総会において「過去の罪責に対する悔い改めと将来への決意―基督兄弟団教役者決議-」を決議
2000年 日本ホーリネス教団との間に「ホーリネス信仰の証詞のための日本ホーリネス教団と基督兄弟団の協力同意書」に調印
2013年 東京聖書学院へ修養生の学びと訓練を委ねる委託制度を開始