はじめに
1954年5月1日、韓国ソウルで「世界基督教統一神霊協会」という看板を掲げて活動を開始した文鮮明氏が9月3日、92歳で死去した。これまで韓国の社会だけでなく、日本そして世界に多くの悪影響を及ぼした彼の死を、長い間多くの人々が待っていたかもしれない。
統一協会は創立初期から正統的なキリスト教会が到底受け入れられない教義を掲げ、善良な多くのクリスチャンたちを誘惑した。そして、文鮮明氏と妻の韓鶴子氏(文鮮明氏が40歳の時、当時17歳の少女)を人類の「真の父母様」として仕えるという荒唐無稽な教義を教え、彼らがいう「統一王国」(地上天国)の建設のために手段と方法を選ばず走ってきた。正統的な教会と一般社会からの厳しい批判にさらされながらも、まったく耳を傾けずゲリラのように生き残ってきた。
統一協会の日本での活動は1963年、崔奉春(日本名西川勝)が文鮮明の指示で日本に密入国し違法に開始された。それから約50年の間、彼らの特殊な教義にだまされて精神的にも経済的にも社会的に重大な被害を受けた日本人がどれほど多くいることか?
さらに残念なのは、その日本人信者たちが統一協会を世界中に広める忠僕になったという事実である。
紙面の関係上、統一協会がどのように韓国で発生し、日本で根付くようになったのかについて言及することはできない。「再臨のメシヤ」とされた文鮮明の死亡後、果たして統一協会はどのようになるかについての所見を述べるにとどめたい。

1、体質は絶対
に変わらない
①正体を隠した勧誘活動
すべての異端の特徴の一つが正体を隠しながら多くの人を誘惑することである。統一協会も例外ではない。偽りで彼らの組織を守るしかないのだ。今でも新宿駅周辺では、自分たちが統一協会の信者であることを隠し、相手を騙しながらの勧誘活動及び高額の物品販売などの工作活動を繰り広げている姿を見ることができる。筆者が出会った統一協会の信者たちは、この事実を否定したり、今後改善すると言うが、一向に改善の余地は見られない。

②お金に対する執拗な執着
文鮮明は生きている間〈万物復帰=簡単に言えばこの世界のお金を文鮮明の手に渡し、そのお金で文鮮明は人類の平和のために使うという教え〉という特殊な教義を作って、日本の信者たちからの高額の献金が韓国に送られた。日本の統一協会は長い間〈霊感商法 〉というインチ商法を開発して善良な市民を騙し、稼いだお金を毎月約20億円程度韓国の統一協会に送金し続けてきた。その体質は、文鮮明の死をもさらに金集めの機会とすることからも分かる。文の死亡直後に日本統一協会の信者たちに下された指示(1人当たり12万円の弔意金を持参し、3万人の信者を葬儀に出席させる…これだけでも、約36億円という莫大な資金が簡単に集められようとしている)を出した。 統一協会の信者は「メシヤ文鮮明」を信じるが、その文は、お金を信じて生きてきた不可解な〝メシヤ〟であった。今後も様々な多くの口実を作って日本の円で飢えを凌ごうとするだろう。そのため韓国の統一協会による日本の統一協会への締め付けはさらに厳しくなるだろう。

2 、〈統一協会〉から
〈分裂協会〉に転落
①文家の分裂
ある統一協会信者の財布の中には文鮮明氏の家族の写真が入っていた。メシヤとしての理想的な家族像を信者に刻印するためであろう。しかしいまだに彼らの写真を持っているだろうか気になる。なぜならば、その中には文鮮明から異端者であり爆破者であるとまで言われていた三男も一緒に写っているからである。すでに兄弟たちの間に分裂と告訴告発が開始され、〈王子の乱〉と言われている。
文鮮明がすでに指名した後継者(宗教部門は七男の文亨進、経済部門は四男の国進)と、三男の文顕進との間で、醜い戦いが繰り返されている。危篤状態の父の病室を訪れた三男を四男と七男の支持勢力が押しのけたといううわさも聞こえる。しかも三男の文顕進は、母である韓鶴子を相手に法廷闘争に至っている。家族の和合も果たせず、自分の息子に向かって異端とまで言わないといけないほどの〝メシヤ〟である文鮮明に、世界統一を論じる資格があるだろうか?

②日本の統一協会内部の分裂と韓国統一協会との決裂
さらに言えば、日本の統一協会がいつまでも韓国の統一協会の言いなりになるのか目を離せない。 今でも韓国の統一協会に対する反発心と不信感は募るばかりで限界にきている。しかし日本の統一協会を締め付ける政策は強化されるであろう。韓国の統一協会は日本の統一協会からの人的資源や経済的資金なしには存続することは困難である。そのためにも日本の統一協会を手放す訳にはいかない。もちろん文鮮明が生きている時のように盲目的に従う勢力、改革を叫ぶ勢力、完全に離れる別の路線を歩む勢力に分かれるであろう。
3、第2の文鮮明の登場
すでに統一協会から派生したグループが存在している。幸せの女神であり、待望の救世主であると称している千夕龍華という女性のグループもその一つである。日本では「摂理」として有名な鄭明析も文鮮明からの分派である。
ある人は、異端の教祖が死んだらその組織は簡単に崩れると勘違いしやすい。ところが一度異端に陥った人の一般的な特徴はそれだけではその異端から脱出できず、自分を納得させてでもその異端の中で居場所を作ろうという習性がある。そこで新たに作られた偽メシヤに付く場合が多い。
1950年代、統一協会の草創期と時を同じくして活動していた有名な天父教の教祖朴泰善という人がいた。彼の主張する教義では〝メシヤ〟である彼は絶対に死んではいけないはずだった。しかし当たり前のことだが、彼もまた死んでしまった。だが天父教は消えてなくならなかった。その中から新しい第2の朴泰善が登場した。例えば永生教の教祖曺熙星、新天地の李萬煕などがそうである。もちろん勢力もだいぶ弱体化が進むだろう。しかし安易に楽観するわけにはいかない。〈神様の教会=ハナニムエキョヘ〉という異端のように、教祖安商洪が死んだ後、彼の4番目の妾だった張吉子という女性が「女の神様」を名乗り勢力を拡大した事例もある。
終わりに
主の再臨の日まで私たちクリスチャンは異端と戦わなければならない。純粋な福音を変質させて魂を狩り、精神的な奴隷にしてしまう異端は消えないからである。しかし異端それ自体は軽蔑の対象であるが、異端に陥った者たちの回復と癒しのための努力は怠ってはいけない。