LGBT肯定を評価 聖書をどう読む 冷静に検討促し 福音主義神学会東部で藤本氏講演

写真=藤本氏

福音主義神学会全国研究会議へ向け「神学的人間論」

日本福音主義神学会が11月開催する全国研究会議のテーマ「キリスト者の成熟:教会・社会・文化」に向けて研究会が各部会で開かれ、西部部会に続き5月31日には東部部会で藤本満氏(インマヌエル高津キリスト教会牧師)が講演した。「神の像に造られ キリストのかたちに贖われ|imago Daiに関わる諸課題と諸事情|」を主題に神学的人間論の今日的諸課題に着目。教会で分裂の元となってきたLGBTと同性婚について反対派と肯定派の聖書解釈を検討し、聖書をどう読むかを冷静に検討するべきと促した。この問題に日本の福音派が神学から取り組むのは、日本福音同盟神学委員会の第6回日本伝道会議プロジェクトに次ぐもの。いずれも一般に福音派では同性愛を罪と見る傾向が強かった中で、聖書の人間観から肯定的に評価。オンライン開催もあって、参加250人に迫る異例の注目を集めた。

東部部会で藤本満氏「神の像」の諸課題

藤本氏は、講演の前半で「物語と神学的人間論」を論述。神のことばが今日の私たちに何を語ろうとしているのかを問い、環境問題、格差社会、災害、性的マイノリティ、女性論、信徒論など、今日の諸問題について聖書に耳を傾けて「語り直す」必要を提起した。

藤本氏によると、身体的・精神的・知的・政治的能力に劣ると見なした人々を「神の像に満たない人間」とする傾向は教会の歴史の中にいつもある。先住民や黒人奴隷を動物に等しいものと捉える言説が公民権運動後の1960年代まであったことを例示。女性差別についても、創世記2・22、Ⅰコリント11・7などから女性軽視・男性優位主義が教会に根づいてきた経緯を概説した。

その上で、第三世界の解放の神学、黒人解放の神学、ウーマンリブ運動、フェミニズム神学が差別を打ち破ってきた歴史に言及。それらへの批判に対し、「しかし剣のように先鋭な問題意識を持った運動を神は備えたのではないか。そうでもしなければ、教会は正統主義と伝統を掲げて腰を上げようとしない」と評価した。

後半は「LGBTと同性婚」について。藤本氏は、性の同一性を作り上げている因子が外性器のみならず染色体、性腺、ホルモン、生殖器官、人から判断された性別、それに従って生育されてきた自分、社会的に認知される性別など複雑であるとする今日の知見を前提に、「LGBTは社会にあって以上に、教会にあって苦しい」ことを指摘。教会でLGBTの人がカミングアウトすることにより存在的な苦悩と葛藤が強いられるとの問題意識から、LGBT反対派と肯定派の基本的な分岐点を考察した。

「配慮ある」反対派は、①教会はLGBTを「人」として認め、人間としての優劣、正常異常の対象としない。差別的な扱いはしない。受け入れるべきである。②しかし、聖書は同性による性行為を禁じている。LGBTによる性的行為は罪だから、カウンセリング、矯正プログラム、祈りを通して異性愛者へと導く。
それに対し「配慮ある」肯定派の見解は、①聖書に「LGBTそのもの」を論じている箇所があるのか? 神は男と女に人を創造された、が基本で、聖書は現代的性の理解を教えていない。②聖書が禁じる同性同士の性行為とは、性的欲望の奔放さが同性にも及んでいる状況ではないか。禁じられているのは男が男を愛して性的行為に及ぶことではない。男が性欲をひとりの女性に向けるだけでは満足できず、複数の女性へ、さらに男性へと向ける事態を、聖書は想定しているのではないか。③だとしたら聖書がLGBTの性愛を禁じているとは断言できない。

そして両者の聖書解釈の違いについて、ソドム(創世記19章、Ⅱペテロ2章、ユダ7節)、神殿男娼(申命記23章、Ⅰ列王記15章)、日常生活の中の聖・汚れ(レビ記18〜20章)、自然な関係を捨て(ローマ1章)、男娼・男色(Ⅰコリント6章)を検討。さらに、聖書の創造の記述は「生まれながらに性的アイデンティティが身体の性と一致しない人たちの存在を排除しているわけではない」とするティーリケの見解、堕罪以前のアダムとエバに見出されるimago Dai(神の像)以上に、imago Chrinti(キリストのかたち)に神学的人間論を求めるボンヘッファーの見解を紹介。

「神学的人間論に本質的な理念を、聖書の他の言葉でひっくり返すことには抵抗を感じる。まして『聖書の言葉は、啓示のすべてを含んでいる。神は人間を男と女として創造した時に、すでに今日言うような性的マイノリティを予測してそれをも否定していた』というような論法には違和感を覚える」と述べ、聖書をどう読んでいるかを冷静に検討するよう促した。

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