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東京新聞2021年5月2日付の日曜朝刊で「子どもの食は大丈夫か」の特集が組まれていた。日本が、農薬使用量(単位面積あたり)トップクラスであり、ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)やグリホサート(除草剤)などの食品中残留農薬基準が引き揚げられたり緩和されている情況が食の安全性を蝕みつつあることを伝えている。本作は、2018年に国会で種子法が廃止され、昨年10月に国会での可決前に緊急公開された映画「タネは誰のもの」を生み出したドキュメンタリーでもある。前作とともに本作は、日本の農政と食の安全性に警鐘を打ち、未来を担う子どもたちを守るために農業と食の安全のあるべき姿を提示している。

報じないマスコミと
知りたがらない怖さ

東京・丸の内オアゾ前で「ラウンドアップは販売中止!」「遺伝子組み換え押付辞めて!」とシュピレヒコールが上がる。2019年5月18日に展開された「反モンサント・バイエル 世界同時アクション@東京」の一シーン。アメリカの大手バイオ化学製造会社モンサントは、除草剤ラウンドアップ(商品名)の成分グリホサートに発がんの危険性があることを認識しつつも公表せずに販売していた。2018年にドイツの大手製薬会社バイエルがモンサントを買収・吸収している。

2018年8月、学校用務員のドウェイン・ジョンソンさんがモンサントが製造販売していた除草剤ラウンドアップをグラウンド整備で散布し続けていたが悪性リンパ腫の末期がんになったとして同社を提訴していた裁判で、ジョンソンさんが勝訴し320億円に上る損害賠償金を支払うよう判決が下った。本作のプロデューサーで菅直人内閣で農林水産大臣を務めた山田正彦弁護士は、日本ではほとんど報道されなかったこの裁判の判決に驚き即座に渡米する。

子どもたちの食の安全と健康のため母親たちのネットワークを立ち上げたゼン・ハニーカットさんを取材する山田正彦さん (C)心土不二

渡米した原田氏の情報収集は、ジョンソンさんの法廷にも傍聴していた遺伝子組み換えに反対する母親の会(マムズ・アクロス・アメリカ)創設者ゼン・ハーニカットさんを訪問する。ハーニカットさんの二人の息子さんアレルギー症状や自閉症の原因に遺伝子組み換え作物に使われている除草剤の主成分(グリホサート)があるのではと考え、食物の見直しを実践してから症状が改善され、母親たちのネットワークも拡張している。もちろんガン末期に至っているジョンソンさんとも対面し、協力者のロバート・ケネディJr弁護士(暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の甥にあたる)などにも取材しモンサントに勝訴できた要因と急増している訴訟状況や、ジル=エリック・セラリーニ教授らからの化学的実証も紹介していく。

欧米では遺伝子組み換え作物や農薬基準が厳しい監視と制限が進展している。一方、日本での農薬散布による健康被害の情況や遺伝子組み換え作物の危険性は報道されることもなく、行政はさまざまな農薬基準を緩和している。その実態と危険性が精力的な取材で詳らかにされていく。それでも自然食品での献立に取り組もうとする学校給食の実例など一縷の希望の光も指し示していることに救われる思いと励ましを受ける…。 【遠山清一】

監督:原村政樹 2021年/日本/102分/ドキュメンタリー/ 配給:きろくびと 2021年7月2日[金]よりヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。
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