神の国は人から人へ伝わる 私の3.11~10年目の証し いわきでの一週間⑬

写真=震災から数日後支援計画を話し合う森さん(右)

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いわき市のグローバルミッションチャペル(単立・平キリスト福音教会)牧師の森章さんは東日本大震災から数か月後、教訓として10項目をまとめた。その趣旨は以下の通りだ。

①悔い改めの必要性:いつわりと詭(き)弁、性的な道徳の退廃が日本社会にある。教会も神様以外のことに依存していないか。教会が分裂分派することで国に悪影響を与えることを海外の例からも学んだ。

②召されていることの意味:神様が私をいわきに遣わされた。同時に自分が遣わされたのは一つの教会だけではなく、まちの人々に遣わされていることを確認した。

③何を信じているか:放射能の力が絶対だとして恐れるのか。それとも全能の神を信じるか。放射能もコロナも「気を付けるべきこと」だが、真に恐れるべきは神のみ。

④伝道:地震から一週間後、外から来た人が駅前でギターを持ち、「神様はあなたを愛していますよ」と語ったが、人々がギターをたたきつけた。「今は口で愛を伝える時ではない」と思った。神様、聖霊様に信頼し、祈りの心をもって愛の奉仕をするとき、神様が働いてくださる。その信仰にいきついた。

⑤クリスチャンの高ぶり:「物資をもってきてあげた」、「祈ってあげた」という姿勢は大きな勘違い。「援助したから福音を聞いてください」も違う。神様の愛によって動機がきよめられる必要がある。

⑥「神はわれらの力…」が現実になった:比喩的、霊的なことではない。支援に奔走し、2、3週間して、立ち上がる力が無くなった。そのとき「神はわれらの力…」の言葉が心に響き、力がみなぎり立つことができた。本当に神様は私の肉体の力でもあると発見させてもらった。

⑦一致が現実に起こる:国籍も教団教派も異なる人たちが一つになった。被災者支援という目的がはっきりしていた。それと同時に主を礼拝することが大事で、朝夕の礼拝を重視した。

⑧悪魔の攻撃がある:陰口で一致が崩れるという痛い経験があった。リーダーは能力ではなく秩序。御言葉に立った上で、人々の意見を聞きながら実行する必要がある。

主のみ声を聞くこと:はじめは物資をどこにもっていくか分からないまま出発した。しかし神様の導きですべてを運べた。人と接する時にも、むやみに話すのでなく、いつも神様に聞いて言葉を発したい。

「御国が来ますように」の祈りの再確認:津波の被害を受けた場所に新しい街をつくるビジョンを神様に示された。イエス様が生きて働き、その臨在が教会にあふれれば、地域が変えられていく。
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震災から10年を振り返り、「被災地の見えるところはきれいに片付いてはいるが、人の心はそうではない。政治経済、制度的なことはむしろ悪くなっているのではないか。あくまで統計での話だが、教勢は減少傾向。どこかで教会はわれにかえらないといけない」と現状を述べた。

一方、「支援活動によって数えきれない人々の心に触れた。時が来て、その人々が救いにあずかるだろうと信じている。福島では少ないが、多くのキリスト教団体が東北に対する重荷を持ち、熟練した宣教師や牧師が開拓を始めた」と感謝する。

支援活動の課題として、「教団、教会ごとの働きとなりがち。キリスト教会として一本化したらどんなにインパクトが強いだろうか。今後の災害支援では合同で協力してやっていくことが大事だと思う」と述べた。

「人間のつながりが重要」と強調した。「社会における人間関係はこの10年でさらに壊れている。教会は和解の福音をもっと社会の中で目に見えるかたちで表したい。イエス様は今共にいる。もっとイエス様と語り、その心を受け取れば、人間どうしのつながりが高いレベルで起こるはずです」

「神の国は人間と人間のつながりを通して広がる」とも述べた。「初代教会は方法論も大集会もなかった。しかし人から人に伝えることでヨーロッパ中に福音が広がった。専門家やツール任せでなく、イエス様を知る者たちが、イエス様の熱い心で人々にも触れていけば、それがやがてリバイバルになると思います」

聖書理解を深めることも勧めた。「聖書は『あなたは愛されている』と言っているだけではない。神様の偉大なる計画を述べている。異邦人もユダヤ人もイエス様にあって一つの民となり、神様のみこころが完璧に行われる新しい神の国が建てられる。そのために人間をつくられたが、人間は罪を犯した。イエス様は人間のために赦しを与えたが、その先にあるのは新しい神の国。それが聖書の中心メッセージのはずです」(つづく)【高橋良知】