認定NPO法人 茨城YMCA総主事
日本基督教団水海道教会会員 宮田康男さん

日本は格差社会と言われて久しい。そんな中「ただ神の国の実現のため」と、徹底的に弱い立場の方々、特に子どもたちに寄り添おうとする人たちがいる。茨城YMCAでは、児童クラブ、放課後デイサービス、中高生の野外活動、包括的な子ども支援センター、また、大人の生涯学習の場、障害者就労支援の拠点となるべく「つくば市みどりのセンター」を計画中だ。神から頂いたビジョンに向かって奔走するチームのリーダー、宮田康男さんに話を聞いた。【宮田真実子】

 

愛されている存在として歩む

「最近は子どもへの虐待など、悲しい事件が増えてきました。それは一概に親が悪いと言えないのでははないでしょうか。子どもを育てることは、神様から社会や教会に与えられた使命。親と子を孤立させないように私たちができることは何かと考えています」

宮田さんは、1947年、茨城県水海道市(現常総市)に生まれた。姉が3人、兄1人いたが、宮田さんが生まれる前に姉の安子さんが6歳で亡くなった。

「当時は戦後間もなしで、薬もなくあっという間に死んでしまった。そんな時に私が生まれたので、『やすこ』の代わりに『やすお』。健康であるようにと『康』の字があてられました。このことは、児童クラブの子どもたちによく話します。命と平和の大切さ、そして、みんな一人一人が神様に愛されている大切な存在だよ、と」

高校卒業後、政党の機関紙制作の仕事に。当時、日米安全保障条約を巡り、国は真っ二つ。「私はそういう動きになじめなかった。正しさとか権利とか、大切なことだとは思いつつも、何かがずれているようにも感じて、冷めた目で見ていました。そんな時にYMCAのホテル従業員募集の広告を見て、これからは観光業だ、と」。

就職したものの、自分が職場で役に立っている実感がない。にもかかわらず、前職歴加算で、前の職場と同等の給料をもらえた。人間関係もぎくしゃくし始め、いたたまれなくなり、暗い気持ちで駅のホームに立っていた時に見えたのがビルの上に掲げられた十字架だった。

「私はその十字架の教会を訪ね、洗礼に導かれました。教会に行くことは自然の流れのようでした。YMCAは12人の若いクリスチャンが創設した団体で、厳しくも愛をもって接してくれた先輩の多くがクリスチャンでした。先輩がプレゼントしてくれた聖書のことば、『自分がすでに捕らえたなどと考えてはいません。ただ一つのこと…、キリスト・イエスにあって神が上に召してくださるという、その賞をいただくために、目標を目指して走っているのです』(ピリピ3章13、14節)。私の能力は足りないかもしれない。しかしそんな自分が神様に選ばれたのだから、一心に取り組んでみようと思ったのです」

写真=茨城YMCAの若きリーダーたちと夢を語り合う

自分も赦されてきたから

仕事をしつつ大学や専門学校に通い、宿泊施設、英語専門学校、本部事務などさまざまな業種・職種を経験してきた。

「YMCAは、1844年、産業革命が進んだイギリスのロンドンで社会改革の運動として生まれ、世界に広がり、業種も多岐にわたります。しかし、もともとのミッションは『神の国の実現』です。神様が喜ばれる社会を今、ここにつくることです。初心に返り、私たちが何をするべきか、皆で考えてたどり着いたのが、もっとも弱い立場におかれている、子どもたちのために、ということでした」

(宮田さんは、児童クラブに「お迎え」に行った時、時間がすぎていたため、自分の娘が外で待たされていた経験を語ります。2021年10月10日号掲載記事

*YMCA(Young Men’s Christian Association)…1844年、イギリスで誕生。産業革命が進み、子どもまで働かせるような劣悪な希望のもてない環境の中、ジョージ・ウィリアムズが仲間と共に聖書を読み、祈り、語り合う会を始め、YMCAと名付け、組織した。現在は世界に広がり、教育、保育、国際交流など、社会福祉的な事業を中心に進めている。