武雄・熱海での災害支援活動を報告 コロナ持ち込まない支援心がけ 全キ災第4回会合

首都圏直下型地震、南海トラフ地震など、今後予想される地震や津波などの大災害に備え協力するための全国ネットワーク「キリスト全国災害ネット」(略称・全キ災)は、第4回会合を10月19日、オンラインで開催。28団体から40人が参加した。当日は、今年の災害支援活動の報告と祈り(佐賀県武雄市、静岡県熱海市)、近藤高史氏(ハンガーゼロ・一般財団法人国際飢餓対策機構総主事)による「国内の災害支援活動」をテーマにした講演、グループディスカッションなどがあった。【中田 朗】

最初に、川上直哉氏(東北ヘルプ事務局長)が奨励。「ローズンゲン2021 日々の聖句」のその日の御言葉「主はあなたがたに恵を与えようとして待つ」(イザヤ30・18より)を引用。東日本大震災のことを知り、「何とか仙台に行かないと」と、8年越しで東北にやってきたベトナム生まれのアメリカ人宣教師との関わり、母親の悲痛な訴えで生まれた気仙沼市にある二つの障害児のための施設への支援に触れ、「困っている所や苦しんでいるところに神様の業がある。私たちはそれぞれの現場で、神様の業に参加しようとここに集まっている。神様はこの会を通してきっと良いことを起こしてくださる」と語った。

諸藤氏

書記の石橋憲氏による全キ災経緯報告の後、NPО法人九州キリスト災害支援センター(九キ災)武雄ベースディレクターの諸藤栄一氏が「令和3年豪雨災害~佐賀武雄ベース支援活動~」と題して報告。「2年前の豪雨災害時に関わりを持った佐賀の教会の先生方と協力。情報収集する中、教会員とその親族、知人に被害があることを聞いた。2年前と今回と、2度被災したお宅がかなりの件数だった」
約1か月半の間に作業のべ件数63(家屋軒数16)、県内ボランティア143人参加したことを報告。「コロナを被災地に持ち込まないよう、前日にPCR検査を受けてから現地入りした。家財や濡れた畳を搬出し、床板をはがして消毒するなどの作業を行った。今回、石巻クリスチャンセンター、岡山キリスト災害支援室(岡キ災)にボランティア要請もさせていただいた。救世軍やキリスト者学生会(KGK)からも来てくださった。被災地で働く時、神様が道を備えてくださる。その働きを全キ災の皆様と一緒にする時、その道を主が広げてくださることを期待している」と語った。

武雄市内での活動の様子。2021年8月撮影

続いて、熱海土砂災害の支援に当たった国際NGОオペレーション・ブレッシング・ジャパン(ОBJ)の弓削恵則氏が報告。「7月4日に現地入りし、5日伊豆山仲道地区到着。主の導きで町の公民館にたどり着き、支援開始。当時、在宅避難者が200人ほどいると想定され、その方々を捜し出し、物資を届けるミッションが与えられた」

弓削氏

「この地域は高齢化率48%。坂道が急で支援物資を取りにいけないため、こちらから物資を届けに行った。身体を動かす機会がないとのことで、日本イエス・キリスト教団社会福祉法人十字の園 YMCA東山荘の方々の協力で健康体操を行った。ハンガーゼロの協力で、紹介してくれた方と一緒にコミュニティー支援も開始。子どもたちのための居場所支援、道路が寸断され公共交通が使えない方々のための移送支援、高齢者の方々を一台の車に乗せ近くの海に連れてお弁当を食べてもらう余暇支援などを施行。最後に町内の皆様から感謝状をいただいた」
一方、社会福祉協議会を含む地元の災害ボランティアセンターから「直接支援を要請していない団体には協力できない」との対応を受け、困難を覚えた経験にも触れた。
近藤氏は、ハンガーゼロの活動が今年で40年だとし、「声高に伝道、宣教とは言わないが、イエス・キリストの精神に基づいてすべての活動をしていると説明している」と話す。活動の三本柱は①コミュニティーの自立開発の協力、②チャイルドサポーター、③緊急災害支援で、「③をもう一度大切にし、行政の届かないところにクリスチャンとして活動していかなければと思っている」と話す。
また、台北地震(1999年)からネパール地震(2015年)までの海外での災害支援を踏まえ、阪神淡路大震災(95年)から熱海土砂災害(21年)までの国内での災害支援活動の歴史を振り返った。

近藤氏

「11年の東日本大震災までは、ハンガーゼロが主体となって事務局、ベースを作り、協力していくというスタンスが強かった。だが、14年の広島土砂災害以降は、なるべく地域の教会、ネットワークに動いていただき、ハンガーゼロがサポートするという形に立場を変えてきたと思っている」
20年以降はコロナ禍での支援として、「今年、オンライン上での災害支援ネットワークセミナーを3回させていただいた。年内に第4回目の開催を予定している。また、コロナ禍で教会は何もしてくれなかったと言われないため、ハンガーゼロ巡回牧師の田村治郎氏による『この町に教会があってよかった!セミナー』を、昨年から6回行っている」。最後に、「耐久性、しなやかさ」などの意味をもつレジリエンスという言葉を用い、組織内部と外部連携のレジリエンスを高めることの必要性を強調した。
グループディスカッションでは、「教会が災害支援にどう向き合うべきか」、「全キ災が災害時にどのように関わっていくことがふさわしいか」をテーマに、参加者は各グループに分れて活発に意見を交わした。

クリスチャン新聞web版掲載記事)